無性にイライラする。








明王は本当はすごく繊細な人なんだと思う。
力はあるし、泣かないしサッカーは出来るし性格はいやらしいし目つきは鋭いけれど、
精神面では、私よりもきっと、脆い。





今日は帰ってきて早々こうなった。
ソファに横たわりながらおかえりなさいと言っただけだったのに。
強い力で押さえつけられて手首が痛かった。
もうこの瞬間に何が起こるのかは解っている。

私の気持ちはどうでもいいのだろうか。
いや、どうでもいいと言うよりは考える余裕がないのかもしれない。
自分のことでいっぱいいっぱいだから、せめてそれを吐き出すために私にぶつけているのだろう。


たとえ私が生理の時でも容赦なく明王はするし、
抵抗して暴れてみてもそれが効いたためしがない。
しかもその時は仕置きだと言わんばかりに激しくなるか、
もっと酷い時は首を締められた。




「んっ」

「は、ぁ」



明王はソファに私の身体を縫い付けるようにしながら押さえ込み、噛み付くようなキスをしてきた。
それはもう、本当に、獣が獲物を貪り喰うような勢いで。
角度をかえてはなんどもなんども。

キスをしながら私の服を引き裂く。
この行為で着れなくなった服はたくさんある。
私はコレをされることだって本当はよく思っていない。気に入っていた服だって彼にかかればこの通り、ただの無惨な布切れだ。

明王の事を繊細で脆い人だとさっきは言ったけれど、自分だって人のことは言ってられない。
こういう時こそ、たとえ抵抗が無意味なものであっても何度も『やめて』と言うべきなんだろうけど結局何も言えない。
意気地無い。
インテリジェンスじゃない。
さっさと諦めてされるがままにしてしまった方が楽だから。
結局のところ、泣いてわめいてぐちゃぐちゃな人間関係を築ける人は勇気がある人だと思う。



ほとんど会話のないままで進む行為。
今の私たちの間には甘さとか雰囲気とかそういったものの片鱗すらもない。
ただコトに及んで、私に至ってはそれが終わるのをただ待つだけだ。

無言のままに明王の大きい手が私の胸を掴む。
愛撫と言うよりもただ、強く力任せにぎゅうぎゅうと掴んでいるようだった。

「痛い....」


明王の服が擦れる音とキスの音以外はしないこの部屋で、漸く私の声が響く。
それでも明王は、私の言葉など聞こえなかったかのように鎖骨に噛みついてきた。



「く、ぅ....」


鎖骨から首もとにかけてベロリと舐め上げた後、
明王の舌は私の身体沿いにつぅと下って、足の付け根までたどり着いた。
内股を丹念に舐めて、痕をつけては下着を降ろして秘部をあらわにした。
両足を強引に開いて、足を割り込ませる。



「....っ!」




下の突起に舌を這わせながらいきなり指二本を入れられる。
快感と、まだならされていない痛みとがまざりあって、
私は堪えきれずに涙を次から次へと流した。



「あ、ぐっ....」



当然この行為に慣れてしまっている私の身体は、いくら痛みを感じようが数分後にはこうして体液があふれてくる。
正直いやだな、と思いつつも身体は明王を受け入れる準備を着々と整えていくのだ。






「...くぁっ、ぁ、あっ....!」




明王はいつも強引だけど、ちゃんと私の弱いところを知っているから、ただ痛くするだけではなく気持ちよくもしてくれる。
私にとってそれが複雑でもあるのだけれど、快感のあるセックスとないセックスだったら、当然あった方が良い。
つまりそれが、明王のこの仕打ちに対して全力で抵抗しようとする妨げにもなっている。



ぐでんぐでんと膣内で動く指が良いところを刺激するたびに足が震えた。
気持ちが良いことも、絶頂を迎えることも嫌いじゃない。
むしろ好きな方だけど、どうしてもこのままではいけないという気持ちにさせる。



このまま私が明王を受け入れたとしても根源的な部分は決して解決できないし、
一時的に明王の気が収まったとしても再びこうなるだけだ。
ただ、その繰り返し。




「ひっ...!」

「...」



私がほぼイきかけていることに気付いた明王は激しく指を抜き差しし始めると同時に、
それが行われている穴の少し上の突起をベロリと舐める。


「…んああァァ!!」



絶頂を迎えてしばらくは倦怠感が身体を襲うのだけれど、やはり明王はそんなことおかまいなしだ。
イッて敏感になりすぎた身体を更に攻める彼の顔は酷く無表情で少し怖い。
私はただひゅっ、ひゅっ、と呼吸が気管を細く抜ける音を発しながら喘ぐしかなくて、息が苦しくて仕方がない。



「ぁきお...、あ、きお...」



呼んだら少しは優しくしてくれるんじゃないかと思って、
腕を明王の方に突き出して『抱きしめてくれ』と懇願してみる。
切れ切れの呼吸の間で、うわごとのように彼の名を呼んだ。
すると明王の片腕が私の方に寄ってきて、もしかしたら抱きしめてくれるのか?と思ったけれど全然違った。

予想外だった。
明王の掌は私の顔面にぱん、と降ってきたのだ。
叩かれた訳ではないけれど、その大きな掌で口と鼻を塞がれた。
首を締められたときよりは苦しくないけれど、もともと酸素が不足していた私にとっては拷問のような行為だった。



「んーーーっ!」

「どうした...?」




声だけは少し優しかったが、その暴力的とも言える行為をやめることはなかった。
彼にはどうやら、人の(特に私の)苦しみが理解できないのかもしれない。
もしかしたらその逆で、人の苦しみという苦しみを知り尽くしているから、こういう行為に走るのだろうか。




「!?」

「大丈夫だって...」




そのままの状態で明王が私のイリグチにちゅくり、と陽物を宛てがう。
ぐずぐずのドロドロに溶けきったソコにくっつけられたソレの感覚に、驚愕のまなざしで彼を見詰めると、大丈夫だから泣くなと言いたげな顔で腰を進められる。
ちっとも大丈夫じゃないよ、馬鹿。
せめて少しでも心配したり安心させたりしたいなら、呼吸をする場所を塞いでいる掌をどかしてほしかった。




せめて、キスをしたかった。





酸素が不足しているなかでの激しいピストンは私の頭の中を白く濁らさせる。
それなのに接合部で響く水音のぐちゅぐちゅした音は、耳元で聞こえているようだった。
五感がどんどん敏感になっていくのに思考がかすむ。





「ぅぐ、む、んんん...!!!!」

「っはァっ、...!」






もうそろそろ限界かもしれない。
苦しくて意識を保っていられないところまできてしまった。
快感と酸欠で死んでしまうなんて洒落にならないからイヤだ。もし私が今ここでこの行為で死んだら明王は私の死体をどうするつもりなんだろう。
でもきっと明王は止まらない。私が死んでも彼は止まらない。
失神したらしたで私を貫き続けるだろうし、死んだら死んだで明王は私の身体に苦しみを吐き続ける。







「ナナシ....あい、してる」




明王の言葉がフェードアウトする寸前の私の脳に叩き込まれる。
ほとんど会話のない行為の中でぽつんと放たれた言葉は、
愛をささやくものというよりも救済を求める声のようにも聞こえた。



愛しているから。
愛しているから愛してくれと。





いつでも、言いたいことこそ、聞かれたくないこと。
一番聞いてほしい人にこそ、絶対言えないこと。






私はすぐに泣くけれど、行為の時はいつも明王に泣かされているけれど本当に悲しいときは一人で隠れて泣くのよ。
愛してほしかったら愛されるだけの努力は必要なんだよ。
愛されるには傷つけてはいけないんだよ。
明王が苦しんでいることは分かるけど、ぶつけられるだけじゃ私はあんたの苦しみは受け入れられないよ。だってもう明王がわからない。
いまだってほら、愛をあげたいのにそれをさせないのは明王じゃない。










自分から傷つけておいて自分で苦しむのやめてよ












ルララ&ヴィルヴァ様リクエスト
うちの短編の明王はメンタル弱い
あんまり激裏みたいになりませんでした..すみません