※捏造もしグランがヴァンパイアだったら








「こんばんは、ナナシ」

「めずらしいわね、あなたがおはようと言わないなんて」



ロウソクの三本たった燭台を片手に、
彼女を閉じ込めている部屋の中に入る。
ロウソクの灯りで、部屋全体がぼんやりと浮かび上がった。
彼女が退屈して死んでしまわないように用意した世界の童話、物語、あらゆるジャンルを取り揃えた本達。
彼女にきっと似合うだろうと思って用意した下着、服、ドレス、その服を収納する真っ黒いクローゼット。
黒が基調のその部屋で、すらりした手足を持つ彼女がよく栄えていた。



彼女を誘拐してから幾日経つだろうか。



一目惚れだった。






俺たちヴァンパイアの食料は人間の女の―――処女の生き血だ。
たまたま食料を探しに人里に降りてきたときに見つけたのがナナシだった。
彼女は俺が今まで見てきた誰よりもかわいらしく、美しかった。
周囲にいた人間達を殺して、嫌がって泣くナナシを無理矢理連れてきた。
なんとしても彼女を自分のものにしたかった。



だがそもそもヴァンパイアと人間だ。
種族違いも甚だしい。



ヴァンパイアに見定められた処女は、契約を結んで処女でいる間は老いることがない。
つまり俺たちと半分ほど同じ種族になり、俺たちと同じ時間を生きる。
俺たちヴァンパイアは人間たちよりも寿命が長い。
だからナナシを犯して処女じゃなくしてしまったら、彼女をここに閉じ込めておいても彼女は老いて、死ぬ。

ナナシに死なれてしまったら、とてもじゃないが生きてゆける気がしない。
それほどまでに、情けない程に、彼女にはまりこんでいるのだ。









「今日はやりたい事があるからね。朝では似つかわしくないんだ」

「やりたい事?あなたの言う『お食事』じゃなくて?」

「まあそれに近いこと、かな」




俺は片手に持っていた燭台を化粧台の上に置いた。
コト、と音を立て、ロウソクが揺らめいた。




「ナナシ、処女の定義ってわかる?」

「えっ?」


彼女の座っているベッドに近づき、片手をついて彼女に迫る。
ナナシは俺ただならぬ雰囲気を察してか、これから起こる事を予知してか、顔に恐怖の色を見せて俺が近づいた分だけ後ずさった。


「基本的には、性交渉のした事のない未婚の女性の事を差す」

「...」

「そして性交渉は、互いの性器が混ざり合って初めて確定する」

「...ッや!」

「つまりね、ナナシ」


狭いベッドの上で彼女を捕まえて、手をまとめて固定する。
何時もの要領で首をつつ、と舐め上げれば顔を赤くして反応するナナシが愛おしくて仕方がない。


「貫通、しなきゃいいんだよ」



ナナシの胸元にある服のリボンをほどいて、両手を縛った。
同時にはだけ現れる白い胸元。
その細いからだにはあると思えないような柔らかなふくらみに手をかけた。


「、ンあっ...」

「ふふふ、感じるの?」



ナナシって俺のこと嫌いだよね?と、わざと嫌味ったらしく言えば
羞恥と怒りに満ちた顔つきで睨みつけてくる。
俺は、その表情が見たい。

閉じ込めておいても一つになれない心と体。
ならば思考だけは一瞬でも俺に染まりますように。
そんな歪んだ愛情が病的に俺をつき動かしている。
いくら変態じみた願望だとしてもしょうがない。


ナナシが愛しいからしょうがない。



半端に脱がされた服の感覚をもどかしそうにするナナシ。
俺の中の欲望も劣化して熱を帯びていくのがわかった。


「ナナシ」

「ぁっ...!」



もし俺が、ヴァンパイアではなく、一般人だったら?
彼女に愛を告げて、彼女も俺を受け入れてくれたとしたら?





...考えるだけ野暮だ。
仮に俺が一般人だとしても、きっと彼女を傷つけるような愛し方しかできない。
現に今こうして傷つけているし、ナナシをここに連れてくる過程で既に沢山傷つけた。
俺は嫌われて、嫌われることで彼女をここに縛り付けておくしかできない。








上体をあげて、上から彼女を見下ろす。
あがった息と潤んだ瞳がいやに扇情的だった。


「あはっ...いい眺めだ」

「...ム、カつく...」


胸の蕾みを舐め、柔らかいふくらみに顔を埋める。
横腹に手を這わせながら徐々に未開拓のそこへと近づけていく。


「やぁっ...、めっ...!」

「無理なお願いだね」


ニコニコとなるべく笑顔を見せながらスカートをたくし上げ、彼女のソコを隠して覆っている布をはぎ取った。
中心部はうっすらと湿り気を帯びているのがわかった。

少しならずと俺を感じているのかと思うと、自分の中の獣が一層慟哭をあげているような気がした。
足をぐっと胸元まで折り曲げさせて、燭台の光を浴びて鈍く光るソコを視姦する。


「綺麗だよ、ナナシ」

「バカっ...みちゃっ...だ、ァッ!!」



ナナシが否定の言葉を言い終わる前にソコに舌を這わせる。
喘ぎ声で言葉が遮られるのにも興奮する俺はそうとう壊れているのかもしれない。
てらてらと鈍くひかり、小豆色とも桜色ともとれるソコはとても美しい。
はじけるようにぷっくりと熟し始めた下の蕾みにそっと歯を立てながら、
はめていた手袋を外して素手で彼女の中に一本の指を入れた。




「ん...ン...」




痛そうにくぐもった声を出すのも処女の証。
なぜかそれで俺は嬉しくなって、自分がヴァンパイアだということを忘れて彼女を犯したくなる。
そうなりそうになるのを止めながら指を動かし始めた。
はじめは内壁を擦るようにゆっくりと、だんだんペースを早めていって快感を植え付けるように...。



徐々に溢れ出してきた透明の蜜を、血を飲む要領で啜りとった。




「あっ...くぅ...」

「ねぇ、ナナシ...」



唐突に思い立った疑問を、若干考えつつもそのまま口にしてみる。


「下から流れる血でも、ヴァンパイアは生きていけるのかな?」

「...なっ...!」



そう怖い顔しないでよ、と言いながら行為を続けた。


「今度、『月のもの』が来た時にでもためしてみよっか?」

「や、だァ..!そんなの...っ」



彼女がいくら拒否しても、俺を止めることはできない。
日の当たらない生活で、ビタミンを作る事のできない体で(それ以前に彼女の体は細すぎるが。)
俺を拒絶するだけの力は残っていない。
それにつけ込むように俺はナナシを陵辱し続ける。





ナナシの喘ぐ声と俺を拒絶する目がたまらない。
思うだけ野暮だってわかってるのに、なんで俺と君は同じ種族じゃないんだろうって、そればっかり呪ってしまう。


どうして君をぐちゃぐちゃに出来ないんだ。

どうして君を俺のものに出来ないんだ。


俺がこのまま君の処女を奪ってしまったら、君は俺の『食料』ではなくなってしまう。
そうしたら契約が切れて、君はゆるやかに老いて死んでゆく。
それに君はここに居てくれなくなるじゃないか。
きっと君は『もうあたしはあなたの食料じゃないわ』とか言って俺の目の前から姿を消してしまうだろう。
君は処女にしておかないかぎり、一緒には居られない。





君がヴァンパイアならよかったのに。





そんな叶いもしないことを願いながら指を動かす。
ナナシが俺を求めるようになって欲しくて、なるべく苦痛を伴わない快楽を植え付けようと、中をかき回している指を抜いて、蜜のたっぷり絡まったその指で今まで舌で愛撫していた箇所を捏ねた。



「ひゃっ!」

「気持ちいい?」




唇を噛みながら初めての快楽に酔う姿が暖かい光に包まれていた。
処女で在りながら神聖さを失った聖女が目の前に横たわっている、ように見える。
悔しさと恍惚が入り交じったナナシの顔を見ていたときに見えた、挑発的にちらつくそ赤い舌がある唇に、噛み付くように口づけた。


嫌がるナナシの舌を執拗に追いかけながら絡めて、上あごを舌で舐め、唾液が混ざり合う。
その間も俺は指を止めない。
びくびくと震える躯を片手で抱きしめながら、精一杯の愛情を模した。



「ん、はっ...」




唇を離し、互いに息を荒くした。
一瞬、目が合うと、彼女は恥じらうように目を反らした。


「ね...ナナシ」


耳元で息を吹きかけるように囁けば、ぴくぴくと小刻みに反応した。



「名前、呼んでくれない?」

「...ヴァン、パ、イア...」

「違うでしょ?」

「はァ...んっ...!」




強情にも俺の名前を言わないつもりである事を察して、唐突に彼女の中に指を二本入れた。
中を揺さぶるように刺激して、仕置きだ、と言わんばかりに痛みも関係無しに荒らした。



「痛いっ、痛いよぉっ...」

「教えたよね?俺の名前」



若干の怒気を孕ませてナナシの中をかき回す。
俺の要望に逆らうとどうなるか、彼女に解らせるように。




「君が苦しむことになるんだよ?」

「ンん...んっ...!」

「解ってるかい?」

「...あっ、ご、めんなさァ..!」

「じゃあ、呼んでよ」



ぐっ、と力を入れて彼女の中に一気に突き込んだ。
衝撃が伝わったように彼女の躯が跳ねた。



「グラ、ン...」

「はい、良く出来ました。」




まるでいたわるようにナナシの頭を撫でながら、流れる涙を舐めとり、指を引き抜いて物足りなさそうにしている蕾みを再度弄る。
先ほどよりもペースを早めてこすっていった。
電撃が走ったように泣いて悦ぶような声をあげ、それでも心は苦痛で仕方ないといった表情で俺の欲望を煽る。
彼女の仕草一つひとつが俺をかりたてる。


「ンあっ...ぁ...あぁぁっ!!」



両足を突っ張るように力んで、小さく彼女はイった。
虚ろに天上を眺める目から溢れる涙を、こんどは親指で拭って、ナナシを固定していたリボンを外した。
気がぬけたようにがっくりとしているナナシの服を整えて、ロウソクが短くなった燭台を手にする。


今日の『遊び』はここまで。
俺と君はヴァンパイアと処女。
君を閉じ込めておくには、これ以上のことは踏み込めない。
君をここに置いておきたいのに、触れれば壊れてしまう矛盾に
俺自身もギリギリと苦しく思いながら笑顔で。



「また遊ぼうね、ナナシ」


扉を閉める瞬間に、かすかに




「キライ...」


という声が聞こえた。



それでいいから。嫌いでいいから。
俺を憎み続けて。拒否し続けて。
俺と君がずっと一緒にいられるように。


だって








君は処女、俺はヴァンパイア







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