※高校生設定

















昼休みに久しぶりに開けた屋上の扉。
初秋のよく晴れた青空と、すこしだけ涼しくなった風が開けた扉の隙間から入ってくる。
鉄の扉を開け切ると、目線の先には一人の女が座っている。


久しぶりに見る女。けれどよく知っている女。
クラスメイトのそいつは中学時代から同じクラスで、
サッカー部の俺たちとよくつるんでいた。
...それなりに仲が良かった。




「...みょうじ」

「豪炎寺じゃん」

「何やってるんだ?」

「ご飯たべてたとこ」



昔は。
昔はお互いに名前で呼び合っていた。
だがいつしか、どうしてか名字で呼び合うようになってしまった。
本当は、名前で呼びたいし呼んでほしい。
だがどうすればいいのかわからなくなっていた。
そうしているうちにみょうじに彼氏が出来た。




かちゃかちゃと弁当の箱を仕舞うみょうじの傍に、
煙草を消したような焦げた痕があった。
煙草本体はなかったが、灰がわずかに散らばっていて、
僅かに臭いが残っていた。

恐らく俺がくる少し前まで先輩が...みょうじの彼氏が居たのだろう。


みょうじの隣に腰をおろす。
その距離は遠くはない。だが、決して近くもない。
片腕一本では、ギリギリ届かないような間合いが今の俺たちにはある。


「授業もうすぐ始まるよ」

「お前こそ戻らなくていいのか」

「あたしは豪炎寺と違って優等生じゃないもーん」

「全く...」



こうして軽口を叩き合うのはどれほどぶりだろうか。
みょうじに彼氏が出来てからというもの、ほとんど喋ることがなくなってしまった。
昔はあれほど仲が良かったのに、今では妙な距離感を感じる。


ちらりと彼女の横顔を盗み見ると、どこか憂いを帯びていた。

...その原因を俺は知っている。





みょうじの彼氏は二つ年上の先輩で、学校ではよくモテる
所謂プレイボーイというやつだ。
煙草も吸うし女遊びだって激しい。ほとんど不良である。



今だってきっとみょうじの事をほったらかして他の女のところに行ったのだ。
みょうじと付き合ったあとも他の一年とか他校の女と一緒に居るところをしょっちゅう見る。
その度にみょうじは今のような、憂いたような顔をするのだ。
哀しみを必死に隠そうとするが、隠しきれない。そんな顔を、する。
いや...、させられている。



なのに、なぜ。
みょうじはあんな先輩なんかを好きになった。








「...待ってたって先輩はこないぞ」

「わかってるよ、そんなこと」

「...」

「...」




何故こんな事を、彼女を傷つけるようなことを言ってしまったのかと、心の中で小さく後悔する。だが、本当はもしかしたら俺は彼女を傷つけたいのかもしれない。
それはみょうじの彼氏に対する嫉妬を彼女にぶつけているに過ぎない、幼い感情だ。




「ナナシ」

「...久しぶりだねぇ、名前で呼ぶの」



久しぶりに彼女の名前を呼ぶと、余裕ぶったような返事が返ってきた。
だが、本当は内心すこし動揺しているのが感じて取れる。

なぜ余裕ぶったことをするのだろうか。
なぜ悲しんでないふりをするのだろうか。
そうすることで、俺との境界を保とうとしている?



「ナナシ...」

「な、に...」

「ナナシ」

「やめて...」

「...」

「...っ!」



ゆっくりと彼女との距離を埋めるように近づくと、
ナナシは驚いたとように後方へと下がった。埋めても埋めても広がる距離。
なぜかそれがとても悔しくなって、一気に距離をつめて彼女の腕を取った。
ビクリと震える身体。

第二ボタンまで外されたブラウスから覗く首もとに目をやると、
ちらりと赤い痕が見えた。





「抱かれた、のか」

「...そんなこと...豪炎寺には関係ないじゃん...」





僅かに目を反らせながら俺の手を振りほどこうと抵抗するナナシ。
しかし俺はかえってナナシの手首を掴む力を強くする。



一緒に居た時間はあの先輩よりも長いのに。
なぜこんなにも。












近くて、遠い。










「ぃやっ...!」




突然襲いかかるようにナナシの身体を押し倒した。
自分でもどうしてそうなってしまったのかわからない。
気がついたら自分の真下にはナナシがいる。彼女の全体に多いかぶさる影は俺のものだ。



「どいて..豪炎寺」



彼女は諦めたように言葉を発する。
昔はそんなことはなかったはずだ。
もっと表情豊かだった。気持ちをこんなにも押し殺すことなんてなかった。
嫌ならばイヤだと強く、はっきりと言い切っていた。
押し倒されることが日常にでもなったのだろうか。
諦めることが常になったのだろうか...。



「豪炎、」

「本気で嫌なら」

「...」

「本気で嫌なら...俺を突き飛ばしてでも止めさせろ、ナナシ...」

「...」

「...」







「あ、あたし、さぁ...」



開かれた唇から言葉が紡がれる




「豪炎寺のこと、好きだったんだよ....」





情けなく垂らされた眉毛で困ったように笑う君。
押し倒された身体は僅かに震えているくせに、結局最後まで拒絶をしない。
いつだって俺を突き放すことはしない...なのに受け入れることすらしない。
今だって、中途半端な言葉で。
俺を喜ばせて。苦しめて。



「なぁ..ナナシ...」

「んっ...」

「どうしても『好きだった』なのか?」

「っ...」





緩められたネクタイを外す。
両手首を頭上に持っていき外したネクタイで縛り付けた。
それでもあくまで緩く、抵抗すれば外れる程度に。


「ナナシ...」

「ぅっ...ん、...」

「俺は、お前が好きなんだ...過去形でもなく、ずっと前から好きだった...」

「! ぁっ....!」



あれだけ好きだった彼女に口づけをする。
心臓が妙な拍動をたてていて、もしかしたらそれはナナシに伝わっているのかもしれない。
ナナシの赤らんだ顔と潤んだ瞳がとても綺麗だった。
そして彼女の顔に負けていないぐらい俺の顔も火照っているのがわかる。

もし過去に、俺たちが結ばれていたなら今はきっとこんなことにはならなかったはずだ。





綺麗なナナシ。

好きな女。

けれども、手に入らない女。




視界に入った首もとの赤が無償に気に入らなくてその上から噛み付くように口づけた。
すこしずらして誇張するように上書きする。


背中に手をまわして下着のホックをパチン、とハズすと
シャツ越しに胸元がすこし跳ねた。
はだけたシャツの間から手を忍ばせて彼女の胸に触れる。
暖かく、柔らかい。


「はっ....」

「声...我慢するなよ..」

「ん、ぅ...」





ついにワイシャツごと下着をたくし上げて彼女のツンと勃ったソコに、舌を這わせる。
小さく震える彼女が可愛くて、顔も見ていたいが今はソコに集中した。
可愛い反応を見せるナナシ。
こんな反応を...あの先輩にも見せたというのだろうか...。



手をスカートの隙間の中に入れて、内股をなで上げる。
少しばかりくすぐったかったのか、ナナシは俺の背に手を回してぐっとシャツを握りしめた。
少しでも、ナナシに求められているような気がして
なぜかそれが溜まらなく愛おしい――。







「ぁ...っ!!」

わざとらしく焦らすように下着の上から秘部をなぞる。
するとナナシがじれったそうにもじもじと身体を動かすものだから
それを見ているとかわいらしくて壊してしまいたくなる。

湿ったそこを撫でていた指が下着に入り込んで、秘部に触れる。
ぐちゃぐちゃになったソコは俺の指を容易に濡らした。



蜜を吐き続けている穴の上にある核をきゅっと摘むとナナシ身体が大きく跳ねた。
それと同時に一段高い、甘い声。
彼女の声はどうしてここまで俺の頭をしびれさせるのだろうか。


「やぁっ...、ご、えんじ...!!」

「ナナシ...」


ナナシは確かに俺たちと仲が良かった。
その筈だった。だけど、俺の知らないナナシがあまりにも多すぎる。
いつから彼女はこんなに遠い人になってしまったのだろうか。
俺は昔からナナシしか見ていなかった。ナナシしか、見えなかった。
けれど、ナナシは...。




膣の中に指を入れると、ぐちゃぐちゃと粘着質な音がした。
それはあまりにも耽美な音で、頭が可笑しくなりそうだった。





「ははっ...よく濡れてるな」


「んぅ...、は、」




昔のナナシのことを知っているという小さな汚らしい優越感と、
それに反して今のことは何も知らないという劣等感が葛藤している。



「ぁっ...んゃぁっ....!」



もしかしたら、
ナナシは俺に、『今会いたいのに会えない人』を重ねているのだろうか。
色々な想いが入り交じって吐き気がしてきた。
それでもナナシの事が愛おしくて愛撫する手を止めることはできない。


ナナシの心の中に居座るあの人を、
追い出せるなら―――...







「ぃあ、やぁああっ!!!!」


唐突にソコに舌を這わせると彼女は叫ぶようにして喘いだ。
与えられた快楽から逃れようとするが、腰を掴んでそれをさせない。
じっくりと追いつめるように、浸食するように舐め上げる。

ナナシの腰がびくびくと跳ねる。





「ナナシ」

「ひぅっ!!!」



また核をつまむ。




「集中しろ...。俺に、集中してくれ...。何も考えるな...」




カチャカチャとベルトのバックルを外す音が誰もいない屋上に響く。
チャイムの音は聞こえなかったのに、こういう音だけは妙に耳に入ってきた。
気づけば授業ももう半分ほど終わっている時間だった。
さぼり確定だな、なんて頭の中で苦笑いを浮かべる。

ナナシは目を閉じてこれからくるものを待っているようだった。



「ナナシ...力、抜いとけよ」


射れる前に浅く唇にキスをした。
それと同時にくちゅ、と挿入部が音を立てる。


「感じたか?」





満足げに笑うと、ナナシは少し不服そうに顔を背けた。
実際に感じてしまったのはきっと俺の方だ。
わずかにソコに触れただけで背筋がゾクっとした。

ずぶずぶと中に入り込むソレ。
さっきよりもずっと呼吸があらくなる。汗が俺の背中を伝う。



「あ、ァあっ...!!!豪炎寺、やっ、あっ」







息が荒れてきて、ナナシの気道がひゅうひゅうと音を立てた。
俺たちが繋がっているところからはぐずぐずとだらしのない音が聞こえる。
ピストンを早めたり緩めたりしながら動く。

何度も名前を呼ばれた気がする。
でももう頭の中がかすんできて廻りの音なんか聞こえちゃない。
でもナナシは俺の顔をしっかり見ている。
俺の名前を呼んでいる。

ただ、それだけ で。




「くぁっ...やぁっあっ、あ、あ、あっ―――――!!!」

「ナナシ...ナナシっ...!!!!」



俺はまた彼女をギュっと抱きしめた。
それと同時にナナシも俺をぎゅっと締め付ける。
一瞬、世界が真っ白になった。
ナナシの足がガタガタと震える。
ナカで自分のそれが脈をうっているのがよく感じられた。




今 ナナシの中に俺がいる。
だけれどナナシの心の中に俺はいるのだろうか。
こんな形でずっと好きだった、今でも大好きな女を襲ってしまった自分に、今更ながら嫌気がさす。



ずるりとそれを引き抜くと、
白い液体が溢れて、ナナシの内股をよごし、
ぱたぱたと床に垂れ落ちた。







「...悪かった」

「...終わったあとに言うことじゃないわ」

「...すまない」

「....」

「....」




彼女はまた平然とする、フリをした態度に戻ってしまった。
何事もなかったかのように制服の乱れを直し、スカートについた埃を払いながら立ち上がった。


「豪炎寺」

「...」

「...」

「...なんだ」

「....あたしはさ、多分まだ先輩が、好きだと思う。しばらくは好きだと思う。好きって気持ちは、しょうがないんだよ。自分じゃ止められないんだ。もし豪炎寺があたしのこと好きでこうしたなら、豪炎寺だって止められなかったんでしょ?」

「...そう、だな...」

「....あたしは明日もここにいるよ。多分先輩はこないと思うけど...。でも、豪炎寺はもう来ない方がいいよ」

「っ...ナナシ!」

「またね」





そう言って屋上の扉を開けて、ナナシはここから出て行った。
最後に一瞬だけ見えた彼女の悲しそうな笑顔が脳裏を離れない。
また彼女は曖昧で中途半端な言葉を残して俺の元を去ってしまう。

突き放して、近づけて、つながって、そうかと思えば消えてしまう。



「ナナシ...!」




追いかけても追いかけても、この距離は埋まらない。


















彼方様リクエスト
なんか切なッ...そして豪炎寺さん妙に弱気
リクエストありがとうございました