暖かいミルクティーを飲みながらブランケットにくるまる。
この暑い夏には室内であろうとふさわしくない光景だろう。
飲むべきなのはせめて氷の入ったアイスティーだろうし、ブランケットは押し入れの中に入れておけばいい。
だけど私の今いる部屋は恐ろしく寒い。
寒すぎて素肌をさらしておくことが難しいぐらいだ。
「ナナシ〜、あつーい...」
「私はさむーい...」
「つーか何飲んでんの?..うわー湯気出てるーしかもなんかブランケットにくるまってるし」
「条介は暑いかもしれないけど私に設定温度22℃はキツい、かも...」
「あ、わり」
寒そうに小さく踞る私の姿を見て、条介がエアコンに手をのばす。
「あ、いいよ。こうしてればあんまり寒くないからこのままで」
「そういうわけにもいかないだろ。暑くても大して身体こわさねーけど、冷えたら身体に悪い」
「ごめんね、ありがと。てか、条介は暑いの慣れてるんじゃないの?」
「ばっかお前本土の暑さと地元の暑さは全然違うんだぞ。なんつーか湿度とか」
「ああ...なるほど」
そう言ってピピピっとエアコンの設定温度を上げる。
26℃ぐらいにしたけど、と聞く条介に私はありがとう、と言って持っていたミルクティーのカップを机の上に置いた。
ブランケットの下で二の腕を擦る。
冷気が溜まってしまったようで、妙に冷えていた。
「まだ寒い?」
「んーん。ただ腕が冷たくなっちゃって」
ブランケットの下で腕を擦る姿を見て条介が身を乗り出してきた。
私が座っているソファーの上に上半身を乗り出して不思議そうに覗き込む。
...あんまり観察されるようなことじゃないんだけど...
突然、条介はごそごそとブランケットの裾から手を入れて、私の二の腕を直接掴んだ。
「冷たっ」
「条介あったかーい」
「身体冷やしちゃったなー」
「大丈夫、すぐにあったかくなるから」
「んー...」
二の腕だけではあきたらず、条介は私からブランケットを剥いで抱きしめてきた。
暖かい条介の身体が私の冷気を奪っているのか、私の冷たい身体が条介の熱を奪っているのかわからないぐらい。
体温が移動しては混ざり合う。身体と身体が混ざりあうような奇妙な感覚に陥る。
「ナナシの身体冷たくてきもちー」
「条介の身体あったかくてきもちー」
条介が口にした言葉を繰り返して笑い合う。
なんだそれ、と言う彼の額に自分の額を会わせると、お互いの呼吸すら身近に感じられた。
今日は家でゴロゴロしているだけだけど、たまにはこういう日も悪くないかもしれない。
..と、思った矢先
「...何してんの」
「他に冷たくなってるとこないかなーと思ってさ」
「や、それにしたって胸は....」
ほのぼのした気持ちから一転、胸をまさぐる条介の手つきに焦りを覚えた。
あわてて止めようとして目を合わせても、条介はニヤリと笑うだけ。
いつの間にかブランケットだけではなく私の服の下からもするりと手が侵入してきていた。
暖かい褐色の指が私の腹を這う。
「んん...ちょっと...」
「やっぱどこもかしこも冷えちゃったなあ」
「くすぐったい、」
「そーか?」
いつものようにニカッと笑って私の服をどんどん脱がして行く。
冷房の冷たい空気に晒された素肌が泡立つ。
...この、子供のような、明るくて可愛い笑顔を見てしまうとその気になってしまう。
私はいつも少しだけシャイで、してほしい事もしてほしくない事もあまりはっきりとは言えないけど。
私のわずかな気持ちを察知して気をまわしてくれる。
たまに子供みたいなところもあるけれど、頼りになる条介。
「二人であったかくなろーぜ?」
やっぱりその、可愛い笑顔を向けられると何も言えなくなってしまう。
私は苦笑いを浮かべながら条介のふわふわした髪を撫でる。
彼の髪が肌を撫でるたびにくすぐったくて身を捩った。
「んぅ...」
小さくついばむように始まって、徐々に深くなる口づけを繰り返す。
いつの間にかに外された下着から溢れた胸を丹念に揉む彼はまるで子供がソレを欲する姿によく似ている。
時間をかけて揉んだり、先端を捏ねたり、摘んだり。
「じょう、すけ...」
「足りない?」
自分の顔が赤らむのがわかる。
確かに、少しじらすようなやり方にじれったさを感じてはいたけれど、もっとなんて要求することは私にはできなかった。
いつも条介のやり方に飲まれているから、こういう場面で自分から求めることなんてないし、第一自分の性格上それが出来るとは思わない。
だけど、何を思ったのか今日はそれを強請れと、条介の目が訴えていた。
「ナナシってさ、あんまこうして欲しいーとか、これは止めてほしいーとか言わねぇじゃん。さっきの冷房のことだって、とめてって言えばよかったのに。俺のことを考えてくれんのはうれしいんだけど、それでナナシを我慢させるのはイヤだ」
「..!」
「ナナシが身体壊すのはもっとイヤだし。...だから今日はいっぱいナナシのお願いを聞きたいんだ」
私は条介と一緒にいて我慢することなんてほとんどないのに。
確かに、冷房の件はブランケットにくるまったりしたけれど、でも。
条介はいつも私に気を使ってくれる。だから、本当は私が色々我慢するべきなのに。
条介は優しいのに、私はその優しさをどう返していいのかがわからない。
な?と同意を求める条介は果てしなく優しい笑顔で、私は少し泣きそうになる。
ソファの上は狭いけど、彼が抱きしめてくれて、密着することで少し余裕ができた。
私の心にも、落ち着きがやってくる。
条介はもしかしたら私を安心させたりする魔法が使えるのかもしれない。
「!ぁ、もう...」
「お願い聞くまで、止めないからなー」
「...はぁ、あぅ」
再び胸元をまさぐる手を動かして、私の口から要求の言葉が溢れるのを待つ条介。
確信に迫る触り方はしなくて、気持ちいいけど、もどかしくてかなりじれったい。
「もっ...と...」
「どう、もっとする?」
「ゃっ...!」
それ以上、私の口から言わせる気だろうか...。
目を潤めて出来ないと顔を横に振れば、しょうがないか、と苦笑いされた。
「今日は『もっと』が言えただけで上出来かもな。俺としては『もっと』よりもっと凄いのを言ってほしいんだけど」
「はずかし...」
「だんだん言えるようになればいいさ。無理強いはしねえから」
「ぁ、は...!」
そう言い終わると、私の胸の先端を口にふくんでころころと転がしてきた。
ぴりぴりとした痺れにも似た快感が走る。
焦らされていた分だけ、余計に感じてしまうのかもしれない。
「きもちい?」
「う、うん...」
「そか」
うなづいて一言言うだけで精一杯だけれど、それでも条介は満足そうに口元を緩めた。
「あ、あのね条介...」
「どした?」
「ちょっと寒い、から...毛布、被らない?」
「お..そーかそーか。そうだよな。寒いよな」
気がついてやれなくてごめん、と私の泡立った肌を擦りながら謝罪の言葉を並べる。
先ほどよりも冷房の設定気温は上がっているが、やはり素肌にこの冷気は厳しい。
遠慮気味に言った私の言葉に、条介は賛同して自分たちに先ほどのブランケットをかぶせた。
人二人で被るには少し寸足らずだったけれど、条介の体温も相まってか何もないよりはずっと暖かかった。
「あ」
「何?」
「初めてナナシのお願い聞いたかも」
「そうかなー」
「そうだって!」
お願いというよりは提案に近いのだけれど、条介のうれしそうな笑顔を見ているとそんなこともどうでも良くなってくる。
「下はどうなってんのかなー」
「き、きゃっ!!」
突然、スカートの中に手を入れて足の間を撫でられた。
あまりに急だったために、素っ頓狂な声が口から漏れてしまった。
条介はそんな私を気に止めることもなく行為を続ける。
「ふ..ぁ...」
濡れてる濡れてる、とやっぱりうれしそうな顔で秘部を下着越しに指で撫でる。
まだ下着越しで、撫でられているだけだというのに私の身体は敏感に反応してしまう。
太ももがぴくぴくと震えた。
「お願い、ってのはまだハードル高そうだから選択肢を出しまーす」
「え...せ、選択肢って...?」
「一番、舐める。二番、指でする。三番、両方!」
「ちょ...」
いくら選択肢で提示されているとはいえ、自分ではとても選びにくい状況だ。
その状況ですら、彼は楽しんでいるように見えるからすこしばかり憎々しい。
じとーっと彼を見詰めていると、「番号だけ言えばいいからさ」、と明るく言い放った。
目の前にずい、と出された三本の指に目が行ったり来たりしてしまう。
「ちなみに選ばねえと罰ゲームでみんなのまえでキスして貰うことになりまーす」
「な..なんだって!?」
「もちろん口な」
いたずらっぽく笑う条介にはどうしても勝てる気がしない。
そして罰ゲーム。みんなのまえでキスだなんて、そんな恥ずかしすぎることはどうしても避けなければならない。
内心焦りを(多分外から見ても焦っているだろうが)見せている私のことを知って知らずか、条介は「深ーいのでもいいんだぜ?」と言った。
わたしは遠慮がちに、一番最初に立てられた指にそっと触れた。
「い、いちばんで...」
「おっし。よくできました」
目をそらせながらなんとか声を絞り出したが、私の顔はいまきっとリンゴと並べても損色ないぐらい真っ赤だろう。
満足げな笑顔を浮かべた彼が、私の秘部を覆っていた下着を脱がす。
そして両足を開かせて、そこにそっと顔を近づけ、とうとう舌をそこに這わせた。
なんとも言えない感覚が私を支配する。
茂みの中の突起をざらり、と舐められた時、
身体がふわ、と浮くような気がした。
「ぁ...ゃぁ...!!」
突起を舐めたりつついたり、穴の周りをねぶったりしながら私を責め立てる。
さっきは太ももだけで済んでいた震えは、足全体に行き渡りとうとうびくびくと大きく震えだすことになってしまった。
「んぁっ!ぁ、あ、はっ...!」
チュク、という音がして穴に指をねじ込まれる。
驚いて条介を見遣るが、舌を動かすことも止めていない。
「ひゃっ..!い、いちばんって...ぁ、言ったのに...!」
「わり、言わせたかっただけっつーか..可愛い反応見てたらもっとしたくなったっつーか...」
珍しく条介も照れるような笑みを見せる。
勇気をだして一番と言ったのに、結局のところ全部されるというか、両方される事に先ほどの選択肢の意味を問おうとしたが、気持ちよくて言葉が口を出るまえに喘ぐ声に変わってしまう。
「ゃ...ひゃぁ...ん...あ、ぁ、ぁう!」
「ナナシ...顔、見して」
「やだっ...!」
「良いじゃん。すげー可愛い」
毛布の中は薄暗いはずなのに、私の顔を見るなり条介は真っ赤だ、といって笑った。
色なんてわからないようなこの中で、私の顔が真っ赤だとわかってしまうのはそれほどまでに顔色が違いすぎるからか、それとも私の反応を逐一把握しているからか。
多分、両方だろう。
「あー我慢できね」
「ん...イイよ...」
「ナナシ...」
一瞬だけ見詰め合い、私は次ぎにくるであろう衝撃に耐える。
僅かな水音がして、秘部に何かが当たる感覚。
「うぁ...あ!ぁ....!!!」
「っ...」
下腹部にくる圧迫感と平行して、切なそうに顰められる条介の眉。
私は呼吸をするのも精一杯で、必死になって条介にしがみついた。
すべてモノが入り切ると、条介はひと呼吸置いた。
「じょう..すけぇ...!」
「ナナシ...大丈夫か?」
「ん...平気....だから、動いて...?」
「!..加減、してやれないかも」
「大丈夫...」
私の、ひっそりした願いはどうやら届いたらしい。
動いて、という言葉にはじかれるように動かされる条介の腰。
出し入れされるソレによって、ぐずぐずと水音が響く。
「ぁ!んあ、は、ぁ、あ、あ!!」
激しいピストンに何度か意識が飛びそうになったが、ギリギリの所で意識をつなぎとめる。
ぐり、と奥に当たるたびにぞくぞくするような快感が私の脳を突くように煌めく。
条介のそれはとても激しいけれど、いつもどこか優しい。
勢いまかせな所もあるけれど、決して乱暴にしない彼自身の性格が反映されているみたいだ。
「あ、あぁ、ゃっ!!!」
「!」
ビクン!と足が震えて私の中が収縮する。
小刻みに収縮するソコで、条介がいったん動きを止めるが再び出し入れを開始した。
「きゃぁっ!ぅぁ!条介っ...!あ、くぅ...!!」
一度達してしまった身体に激しいピストン。
身体が敏感になってしまったせいでまた容易に絶頂へと誘われる。
目の前がちかちかと白く光っているような気がした。
「じょうすけ、じょ、す..け...イっちゃうよ、イっ...!!!」
「...っ...!ぁ、ナナシ...!」
途端に、またぎゅうぎゅうと締まりだす私の内部。
ギリギリのあたりで引き抜かれたソレは、私の太ももに白い液体を吐き散らした。
そのときに聞こえた、珍しい条介の小さな色っぽい声に私はすこし感動した。
「はぁ...、はぁ...」
「ちっとキツかったか?」
「んーん...気持ちよかった。条介最後の声、可愛かったよ」
「ばっ、おま...!ナナシの方が可愛いし!」
「それ何怒り?」
照れながら少しだけ怒る条介があまりにも可愛くて、彼のおでこにキスをする。
すると条介も、少しむくれた後にあの優しい笑顔で私の唇に自分のそれをくっつけた。
「今日はうれしかったなー」
「えー?」
「だってよー、二回もナナシのお願い聞けちゃったんだぜ?レアすぎるだろ」
「そんなことないよ」
「いやそんなことあるって。しかも二回目の動いてってあれ反則...」
「もう!そんなこと蒸し返さない!」
先ほどキスした条介の額に軽くチョップを入れると、いてぇ、とおどけてみせながら事実だからしょうがない、と彼は言った。
すっかり暖かくなったブランケットの中で二人じゃれる。
こうしていると世界から遮断されて二人しかいないようで、なぜだかとても贅沢で幸せな気分になる。
「次はもっと具体的にお願いしてくれるとうれしいんだけどな」
「それ!ただ言わせたいだけでしょ!」
「ははっ、バレたか。でもさ、本当にもっとお願いとかしてくれたっていいんだぜ?俺はもっとナナシに頼ってほしいし、月並みだけどナナシが幸せだと俺も幸せだし」
「...私も、おんなじ気持ち、だよ」
「ん、そか」
「私はね...条介が好きなの」
久しぶりに聞いたであろう私の気持ちに、条介は目を丸くした。
私は、条介が好きだから、条介と同じ幸せの中にいたい。そう言うと、今度は条介の顔が真っ赤になった。
「条介真っ赤!」
「み、みんなよ!」
「やだ、見るー」
被っていたブランケットを取ってよく見ようとする私と、それを阻止するようにすっぽり被ろうとする条介。
ぱっと私はひらめき、その言葉を実践するべく条介の耳元に口をよせた。
「見せて?」
本日三度目の、彼曰く"レア"な私のお願いでささやくと、あれだけ頑なだった条介が被っていたブランケットをすごすごと下げて顔を現した。
「やっぱり、真っ赤じゃん」
「...ナナシもな」
それからお互いにクス、と笑い合い口づけをする。
私の気持ちにいつもよりそってくれる条介。優しくて、暖かい彼。
この毛布の中の、二人しかいない世界から隠された場所でなら、
お願いしてみるのもいいかもしれない。
椙竹様リクエスト
綱海くんは子供っぽいけど頼りになる兄貴なんだろうなあ