「あっ...吹雪...!」

「、はッ...ナナシちゃん...」





塵もつもれば山となると言うけれど。
あたしの目の前につもった山は広大でそれがもともと塵だったのかどうかさえわからないレベルになってしまっている。


吹雪はモテる。
それはもうこのルックスにすごいサッカー選手ときたら女の子が放っておかないのは当然のこと。(ちなみにあたしはサッカーについての知識がほとんどない。だから吹雪がどんな風にすごいのかは全くわからない)
あたしみたいなのと吹雪が仲が良いなんて、本当に奇跡のようなものだ。
小学校の頃からずっと同じクラス。多分腐れ縁みたいなものだと思う。

あたしと吹雪は仲が良いけど、仲が良いだけだ。
別に彼氏彼女とかそういうものじゃない。
...たとえ、こんなことになってしまっていても。



「吹雪...吹雪ぃ...」

「あは...ナナシちゃん可愛い...ひくひくさせちゃって、そんなに気持ちいい?」

「ん..きもちぃよ...」



なぜこうなってしまったんだろう。
事の発端を考えることなんて野暮に等しい。
根底が見えないほどに塵はつもってしまった。



「あっ...や...!イク...イっちゃうッ....!!!」

「いいよ...!一緒に、イこうか...」

「ぅぁっ...あ、あ、あああ!!!」



吹雪が律動を強めてあたしを絶頂に誘う。
切なそうに眉根を潜めてモノをあたしから引き出し、お腹に精液を吐いた。
吹雪はそれを指で救い取ると、あたしの口元に持って行って強引にそれを口の中につっこんできた。

...吹雪はたまに非常識だ。
非常識、というか嗜虐癖があるというか。
あたしが嫌がるのを知っていてわざとこうして精液をなめさせたりする。
正直言ってザーメンは好きじゃないのに。



「ふぁ、...んぐ、」

「ほら、綺麗に舐めて?」


あたしのお腹の上に吐いた精液が綺麗さっぱりなくなるまでその行為は続けられた。
というか、そんな事するなら最初からゴムに出せばいいのに。いや、そうしてほしいんだけど。
でも、吹雪はあたしが嫌がっている姿を見て楽しんでいる。楽しみたいが為に、いつもわざと顔にかけたり、こうやってお腹にかけてなめさせたりするのだ。
ちょっと性格悪いと思う。





「あーあ、綺麗になっちゃった」

「もう..やめてよね。それに綺麗になんなきゃ困るんだけど」

「やだなあ、ナナシちゃんのこと汚してたいからこうしてるんだけど」

「それじゃ汚してもいいから舐めさせんのやめて」

「それじゃ意味ないんだって!ナナシちゃんの嫌そうな顔みるのが好きなのに」

「あんたね...」



やっぱりちょっとどころじゃない、この性格の悪さ。
性格悪いのに、嫌いになれないのは、
事後のあとにちょっと困ったような、悲しそうな顔をしていつも告白してくるから。
もしかしたら、なんて、思ってしまうから。



「嫌がってる顔、可愛いんだよね。どうして僕のものにならないのか悔しいぐらい」

「...あたしは、吹雪のものにはなれないよ」

「どうして?ナナシちゃん今別に彼氏居ないじゃん」

「いないけど...」

「僕、ナナシちゃんの彼氏になれたらって、いつも思ってるんだよ。それぐらいナナシちゃんのことが好きでしょうがないのに。セックスもしてるのに...なんで?」

「...吹雪は、」



あたしなんかとこんな事してちゃだめだよ、と言おうとして口を噤む。
本当は、あたしだって吹雪のことが好き。
でも、吹雪にはもっともっとふさわしい人がいる。吹雪のことを大好きな女の子達だって沢山いる。
...やめたいのに止められない。本当は吹雪と一緒にいたいのに、ソレを拒否する自己矛盾。




吹雪はわかってない。
どれだけ自分がモテるか多分わかってない。
吹雪と仲が良いだけで、あたしがどんな思いをしてるかを吹雪は知らない。

直接的な嫌がらせとかいじめはないから、知らないのも無理ないけど。
...でも、吹雪のことが大好きな女の子達にとってはあたしには邪魔な存在だ。
こないだは妙な噂だって流れた。あたしが吹雪をたぶらかしてるって。

女の子は集団になると恐ろしい。
ついでに今じゃインターネットとか携帯とかそういったものが武器になる時代だ。
そういうのは女子の陰湿さにはぴったり。吹雪のファンクラブがあるくらい。
名前を出したり、露骨なことはしないけど、でも彼女達の日記やホームページには、あたしをどうにかして吹雪から遠ざけたい彼女達の悪意があふれている。



「吹雪は、もっと可愛い子を見つけられるよ...」

「...なんで、そういう事いうの...?」

「..え?」

「僕がなんでナナシちゃんとセックスしてると思うの?僕はナナシちゃんじゃないと嫌なんだよ?ずっと...ずっとそう思ってるのに...!」

「吹雪には...わかんないよ...」

「わからないって何!?何がわからないのかがわかんないよ!」

「あたしだって吹雪のことが好きだよ!?でも、好きなだけじゃどうにもなんないんだよ!吹雪と一緒にいるってだけで..吹雪が好きってだけで...邪魔もの扱いされるんだから...吹雪のこと好きな女の子なんて...いっぱいいるんだから...!」

「ナナシちゃん...」



急にぎゅーっと吹雪が抱きしめてくるものだからびっくりして硬直した。
事後の裸体で、肌と肌で。直接熱が伝わってくる。
吹雪の身体は少し冷たいけど、でも、人間の体温が...。



「僕がそんなこと知らないと思ってたの?」

「な、に...」

「ナナシちゃんがどんな思いをしてるか僕がわからないとでも思ったの?僕はね、僕は、ナナシちゃんを守りたいんだ。一緒にいられたら、そんな女の子達の嫉妬とか焼きもちから、君を守れる自身があるんだ。だから...お願い...」

「吹雪...」

「僕の傍にいて」



ほら、また。
吹雪のことが好きだという気持ちは、塵のように絶えずぱらぱらと降り注ぎ、今でも山を作り続けている。

生々しい人の体温と肌が擦れ合う。

吹雪はあたしの額にキスをおとし、それから、頬へ、唇へ。
舌を絡めてまたセックスが始まる合図。
このまま吹雪に身を任せてしまえば楽だけど。


「ふぶ、き...やめっ」

「やだ、やめない」

「ちょっと...子供みたいなこと、言わないで...あっ」

「僕がどれだけ本気かわかってもらうまで、やめない」

「!、んぅ...」


胸をまさぐる手とは裏腹に吹雪の切なそうな表情を見て、あたしの心が苦しくなる。
どうして素直に喜べないのだろう、何を迷う必要があるのだろう。
あたしも吹雪のことが好きで、吹雪もあたしのことを好きと言ってくれるのに。

あたしの心に蓄積された塵は重すぎて、あたし自身にもどうにもならない。



多分今日もこうしてセックスをして、ばいばい。
あたしはあたしの気持ちを受け入れられないまま、また吹雪と会って、またセックスして、別れる。
その繰り返し。




「ッあ、...ナナシちゃんが...、僕の元から離れられないように、手錠でもはめちゃおうかな...」

「...!、ひゃっ...ぅ」

「そしたら..嫌でも一緒にいられるのにね...?」




積もった塵は崩れない。












何が言いたいんだーって感じorz




- ナノ -