交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

07

レミエルの言葉通り、一晩を過ぎるとコレットは嘘のように元気になっていた。


「そういえば、なんでここに来たんだ?海へ向かうんじゃないのか?」
「そのことについては昨日、クラトスとルクラスと私で話し合ったのよ。」
「東で海へ出るっていうとまずはこのオサ山道を進む必要があるんだ。ここを越えたすぐのところにイズールドっていう港町がある。まずはそこを目指そう。」
「そうか。ならこんな山、さっさと越えて行こうぜ!」

そう言ってロイドが先に進もうとすると、待て!という制止の声。全員がその声の方を向くとそこにいたのは10代後半位の少女がいた。

「ロイドのお友達?」
「さぁ…」
「ロイド、友達の顔くらいは把握した方が良いと思うけど」
「そうか?」

あれは確実に友達じゃないだろ。こっち睨んでるし。

「…この中にマナの神子はいるか?」

絶対に答えない方がいい質問。しかしコレットにはそんな常識は今のところ備わっていなかったらしい。

「あ、それ私です。」
「…覚悟!」

予想通りの展開になったか。ただ相手の方が素早く、こちらは追い付けない。コレットも逃げようとしたが、転んでしまい、もうだめかと思ったが

ガチャン

という音の後、コレットの正面の地面に穴があき、

「「「「「「…あ」」」」」」
「…」

コレットの正面にいた暗殺者らしき人はもちろんその穴の中へ落ちていった。

「ああ〜、ど、どうしよう。やっちゃった…。」
「どうすることもないわ。ここで相手が落ちなければあなたが殺されていたかもしれないのだから。」
「だけど…」
「まぁ…ちょっとかわいそうではあったけど。」
「そうだよな…まあコレットのドジのおかげでなんとかはなったけどこれはな…」
「死んじゃったりしてないかな。」

ロイドと俺は暗殺者に同情した。自分がもし相手の立場だったらこれはいくらなんでも、と思ってしまう。まぁ、当人に悪気は無いわけなのだが。

「仮にあの人の体重が45kgとしてこの穴が10mだとすると重力加速度を9.8として計算しても死ぬような衝撃じゃないよ。」
「???じゅーりょくかそくどぉ?よくわかんねぇけど生きてるんだな?」
「多分ね。」

ジーニアスの答えにコレットは安心したらしい。生きてればまた狙われるのか…。あの素早さは対処が難しいがなんとかするしかない。

「しかしまー、運の悪い奴だな、落とし穴の真上にいるなんてさ。」
「落とし穴ではなくてよ。山道管理用の隠し通路ね。」

ロイドの言葉にリフィルが説明を加える。だが相手からしてみれば落とし穴でしかないだろう。


「…そろそろ行くぞ。」
「おい。あの女の正体を突き止めなくて良いのかよ。」
「コレットを狙ってるんだ。その内向こうから来るんじゃないか?」
「それにここは狭いし、足場も良くない。戦うことになるのなら場所を映した方が賢明だ。」

クラトスと俺の言葉に納得したのか、ロイドは大人しく従った。



予想は当たり、暗殺者とは出口に差し掛かる所で鉢合わせした。

「…ま、待て!」
「…すげー、追い付いてきた。」
「あぁ、良か「う、動くな!」
「…賢明な判断ね。」

リフィルの言葉に俺は思わず苦笑した。必死にここまで追い付いてきたのにまた落とし穴なんかに落ちたらたまったものではない。

「…さっきは油断したが、今度はそうはいかない。…覚悟!」

そう言うとこっちに走り出す。

「狙いはコレットだ!下がってろ」

ロイドがそう言うとうん、とコレットは大人しく後ろに下がり、詠唱を始める。ロイドは暗殺者と対峙し、素早い動きで牽制し、クラトスが攻撃していく。

「さて、俺はこいつが相手か。」

そう言って一体の生き物か何かを見る。さっき暗殺者が出した札をみるとどうやら式神らしい。


「アイシクル!」

目の前の式神がジーニアスの魔術による氷の柱に貫かれ、消えた。
「おっ、サンキュー。ジーニアス」

俺は足元に落ちた札を拾った。

「これがさっきの奴の元か。なら、復活しないように燃やしとくか。」

そう言って目を閉じ、札を持つ手に力を込めると紙切れである札は端から炎を上げた。


「くっ…」

暗殺者が膝を折った。流石に6対2では分が悪すぎたようだ。

「覚えていろ!次は必ず殺す。」
「待て!」

ボンッという音が相応しく、暗殺者は煙を上げ、消えた。

「どうして俺たちが狙われるんだ…?」
「…いつの世にも救いを拒否する者がいる。」

ロイドの問いにクラトスがどこか遠い目で答える。昔何かあったんだろうな…

「ディザイアンの一員なのかも。」
「さあな。いずれにせよ我々は常に狙われている。…それだけのことだ。」

「…あの服は確か…」
「ルクラス、どうしたんだ?」
「なんでもない。先を急ごう。」
「そうだな。とりあえずそのイズールドってところに行って船を出してくれそうなところを探そうぜ。」

実際、あの独特な服には見覚えがあった。が思い出せない。またアイツが現れたときに聞き出すなりすればいいかと思い、考えるのを止めてイズールドに足を進めた。
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