交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

27

ルインという街は賑やかでそこに住む人たちも明るくいつも楽しげだった。前に来た街とはまるで別物のような、しかし瓦礫や壊された噴水の名残はあまりにも残酷な現実を突き詰められているようだった。

「ひどい…」
「あぁ、しかも人の気配が…ん?」

ちりん、と静かな街に小さく鈴の音が響いた。この音には聞き覚えがある。コリンだ。

「あっちか」
「おい、待てよルクラス!」









やはり、というべきか。なぜここにいるのか。まあなんでもいい、あのコリンの鈴の音があったということは近くにしいながいる証拠だ。

「おい、大丈夫かしいな」
「ルクラス…あんた、なんでここに」
「たまたま寄ったらこの有様だよ。…誰にやられた」
「それは…「おまえ、こんなところまで!」」

俺の後を着いてきたのだろう、他のみんなもやって来た。が、しいなを見るとすぐに顔色を変えた。
コレットはしいなの状態を見てすぐにリフィルに治療を頼んだが却下されてしまった。まあ今までの行いを考えると仕方ないんだけど…

「ルクラス、この人の怪我治せない…?」
「ん、大丈夫。これくらいなら俺も対処できる」
「ルクラス!」
「この街全体の破壊をこいつ単体で行うのは簡単じゃないだろ。それに治したあと襲われるとしたらそれは一番近い俺だよ」
「……」

実際、ここから立ち上がってコレットに襲いかかるには正面にいる俺をなんとかしなければならない。病み上がりの暗殺者にやられるほど俺も馬鹿じゃない。

「お前、これだけ怪我してるってことはこの有様のことも何か知ってるんだろ。話してくれ。」
「別に、この怪我はドジっちまっただけだよ」

そう言いながらもしいなはこの街にあったことを話し始めた。どうやら人間牧場から逃げてきた人を匿ったおかげでこの街の住人達が連れて行かれた上に街もこの有様らしい。一食一泊の恩があるらしく、抵抗していたらこの怪我らしい。
説明の途中で峠を越えてきたらしいクララに襲われかけたが咄嗟のコレットの行動で助けられたしいなは怪訝な顔でどうして助けたのかと聞いたがそれはきっと彼女自身が知っているはずだ。

「…あ、ありがとう。この借りは必ず返すからさ。それじゃ…」
「まさか一人で人間牧場に行く気か?」
「当たり前だろ。神子の命を狙う暗殺者と神子とそのボディーガードが馴れ合ってどうすんのさ」
「でも一人でボロボロになってたんだろ?俺たちだって人間牧場は見逃していく訳にはいかないからな」
「ロイドの言う通りだよ!一緒に行こう?」
「だから馴れ合わないって言ってるじゃないか…」

しいなが頭を抱えて唸っている。気持ちはわからなくもないが…

「こういう時は頭数が多いにこしたことはないだろ。お前にとっても悪い話じゃないと思うけどな。」
「あんたねえ…」
「3人とも、正気なの?」

この旅は神子のためのものだ。その神子であるコレットはロイドの言うことは大体聞いてしまうので2人が行くと言えば行くしかないのだ。疑いの目を向けていたリフィルも最後には折れて賛同してくれた。あとは彼女だけだ。

「だそうだ。どうする?」
「…わかったよ。あんたたちとは一時休戦だ。よろしく頼むよ」
「うん、よろしくね、しいな!」

にこにことコレットの笑顔の花が咲く。人のいい彼女のことだ、もしかしたらこのまま絆されてくれたらこちらとしても嬉しいのだけれど。なんて、とても口に出しては言えないが。











「とはいったものの、この警備じゃ潜入したくても無理だな…」
「そうね。方法が無いわけではないけど…」

当たり前だが人間牧場はディザイアンたちの要ともいえる施設…当たり前だが警備も多い。ロイドとリフィルの作戦はディザイアンの格好をして入り込むというシンプルなものだった。満場一致で作戦のために見回りのディザイアンから身ぐるみを剥がせばあっという間に潜入のための準備が整った。
実際にリフィルがディザイアンの服装を着て門番と話をするだけで簡単に中に入ってしまった。敵ながら警備の緩さを疑ってしまうなあ……

「ここはエクスフィアの製造所なのね」
「…そのようだな」

手錠もなく、誰かと闘うことも無く。管理室のようなものに入り、大きく映し出された映像を見ているとどこからか声が聞こえてきた。極々小さなものでこちらの話し声でかき消されそうな大きさだ。

「…しっ、隣の部屋から声が聞こえる」
「なにも聞こえないけど…」
「いや、気をつけろ」

敵襲……いやそもそも敵地なのに敵襲という言い方もおかしい。槍に手をかけて警戒態勢を取っているとドアから現れたのはボータと呼ばれるハーフエルフだった。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -