交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

25


先程石舞台を爆破させようとしていた二人を見つけた。自分たちの家で再度作戦を練り直しでもしていたのだろうか。
人間のライナー、ハーフエルフのハーレイはライナーの妹であるアイーシャが生贄にされるのを阻止するために石舞台を爆破させようとしていたが理由がもちろんあるそうで。
どうやらライナーが石舞台を調査していたら封印が解かれて風の精霊と名乗るものが現れて生贄を要求してきたようだ。封印、という言葉にいち早く反応したのはリフィルだった。

「バラグラフピラーの象形文字は神話ではなかったのか!」
「ええ、舞台の裏手に小さなくぼみがありまして...」
「いい加減にしろ!」

尚も話続けようとするライナーを制してハーレイは声を荒げた。アイーシャが生贄にされるのは今夜。よっぽど切羽詰っているのだろう。そのまま彼らがいた家を追い出されてしまった。

「...で、どうするよ」
「もう一度石舞台に行きましょう。もしかしたら誰もいなくなってるかもしれないわ」
「そううまくいくかな...」

もちろん上手くいくわけがない。先程石舞台にいた村長はじめ何人かの村人が入口を見張っていた。あちらは俺達が石舞台に上がっていたのを分かっていたらしい。ライナーが調べたことで封印が解かれてしまったことに思うところがあるらしくリフィルが自分は学者だと言っても聞き入れてもらえなかった。
だが、それに従うほどリフィルの遺跡マニアは伊達ではなかった。

「ならば私が代わりに生贄として舞台に上がりましょう。それならいいですよね」
「なっ、先生!」
「それにここは再生の書にもある封印の場所のはず。再生の書の通りならもしかしたら風の精霊が欲している生贄はマナの神子なのかもしれないわ」
「あっ、なるほど!さすが先生!」
「単に自分が遺跡を調べたいだけなんじゃ...」

いつものロイドの失言である。右からのビンタが綺麗に炸裂した。ジーニアスと口は災いの元...と呟いたのがダブった。



















それから少しして。巫女服に着替えたリフィルが石舞台で儀式をこなしていくのをメンバー全員が眺めている。杖で石舞台をつく毎に小さく光が舞っている。そしてマナもざわざわと儀式が始まる前より変化していく。

「コレット、なんか変化とか分かるか?」
「え?先生いつもより綺麗だよね〜!」
「あ、うん。そうだな...」

コレットは特に何も感じないらしい。
嫌に肌につくようなマナは更に大きくなっていく。自然と武器に手が伸びるなか、それは現れた。

「…ちがう。あれは邪悪なもの。守護者じゃない」
「やっぱりか!」

ツァトグというらしいそれは鋭い爪を振り回す。咄嗟に前に出て受け止めて詠唱破棄のファイアーボールを叩きつける。

「無事か?」
「っ、ええ。おかげで助かったわ」
『グッ...小癪な!半端者に負けるわけがないだろう!娘をもらい受けるぞ』
「ははは、そう易々と渡すわけがないだろう?」

不意打ちの魔術は効いたらしく魔物がぐらりと体を傾けた隙にロイドやクラトスが祭壇に登り、剣で切りつける。
全員で攻撃を仕掛ける中、ロイドと目があった。次に何をするか察してファイアーボールをもう一度放つ。次はツァトグとは違い、ロイドに向けてだ。ロイドの双剣が炎のマナで赤く染まった。

「頼むぞロイド!」
「任せろ!」
「「爆炎剣!!」」

ユニゾンアタックにより発生した術技、爆炎剣をぶつけると流石に堪えたのかマナに分散して消滅した。誰も大した怪我もなく戦闘が終わったが問題は出てきたのが守護者ではなかったことだ。
さっきロイドが拾ったらしい石版に手がかりがあるらしくリフィルとライナーはそのまま調べに行った。忙しいやつというかなんというか。

「あいつ、風の精霊じゃなかったんだな」
「きっと姉さんとライナーさんが調べてくれると思うよ」
「あー、あのリフィルとかいう先生、ハーフエルフだもんな。知識は確かだろう。」
「っ!姉さんも僕もエルフです!そんなこと...」

この世界でもハーフエルフは差別される種族だ。ディザイアンでもない限り、ハーレイのように自身をハーフエルフとして名乗っている者はほんの一握りに等しい。
俯いたジーニアスの顔は俺からは見えなかった。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -