交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

19

「リフィル。」
「…なにかしら?」

人間牧場に向かうからかいつもより言葉に刺を感じる気がする。そんなに睨まれてもなぁ…

「お前は力不足じゃない、とは言えないな。そういう嘘はつきたくないし。」
「聞こえていたのね。実力がないのは分かっているわ…人一人救えないのだから。」
「救える奴にも限度ってのがある。リフィルは、その限度は分かっているだろう?ならその限度でいい。手の伸ばせる範囲だけ救えばいいんだよ。」
「随分と言いきるわね。でもそれでは自分は誰でも救うことができる、と言ってるようにも聞こえるわね。」
「そう聞こえたか?俺にだって助けられない命くらいあるさ。」

まだ聞きたいことがあったようだけど人間牧場が見えてきたからかそれっきりどちらとも口を開かなかった。俺としてはこれ以上詮索されずに良かったけど。








隠れていたニールは俺たちをみて力なく首を横にふった。顔をみれば彼がどういう結末に至ったのか察しがついたらしい。そしてショコラを助けるドアの遺志を伝えるとニールもついていきたいと言い出した。

「といっても、そんな簡単に出入りできるとは思えないよ…?」
「そうだな。しっかり対策を立ててから行動を起こす必要があるな。」
「…じゃあさ、俺が囮になるのはどうよ」
「えっ、囮?!」
「俺があちこち荒らして回るからそのどさくさに紛れてマグニスを叩くっていう作戦。」
「でもそれじゃルクラスが危険だよ!」
「心配すんなってコレット。伊達に場数は踏んでないんだぞ?」
「確かに、ルクラスなら実力的にも心配はいらんだろう。」
「そうね。そちらの方が動きやすくもなるでしょうし。」
「んじゃ決まりだな。人質の解放はそっちに任せるぞ?」
「分かった。一応怪我してるんだしルクラスも無理するなよ!」
「じゃ、後でなー!」

そう言ってロイドたちの元から離れて俺は単騎で正面突破することにした。

「なんだ貴様。ここがどこか分かっているのか?」
「人間牧場だろ?悪いけど通してもらうぜー。」

反論の隙は与えない。武器を使うまでもなく入り口の3人を気絶させる。やっぱ一人だと気兼ねなく力を出せていいなぁ。ま、血が減ってるから少しは自重していかないと。
ディザイアンの持ち物を漁っていると見覚えのある指輪とカードが3つ。指輪は恐らくソーサラーリングかな。こっちのカードも一応持っていくか。


















「ねぇ、なんだか地響きみたいなの聞こえなかった…?」
「そうか?何にも聞こえないけど…」
「思ったよりディザイアンの人数が少ないね。ルクラスがうまくやってるのかも。」
「そうかもしれないわ。人質も救出できたのだし、早くショコラを助けましょう。」
「あーあ、この仕掛けも飽きてきたな。」
「全くロイドは…って、あそこ!!ショコラじゃない?!」

ジーニアスが指差した先はディザイアンと一緒にいるディザイアンだった。大分疲れていたらしく倒すのは苦にならなかった。

「あなたたち!助けに来てくれたの?!」
「ショコラ!大丈夫だったか?」
「ええ。神子さま、みなさん、本当にありがとう。…そういえばもう一人お付きの人がいたわよね…?」
「あいつは囮で今頃この牧場内でディザイアンを倒してるさ。」
「そうなんですか!さっきディザイアンが侵入者がいるというのを耳にしたから誰かと思ってたんだけど…」
「それ、ルクラスじゃないの?派手にやってるね。」
「ディザイアンはルクラスに任せておけばいいだろう。問題はマグニスだ。」
「そうね。ニールがここに収容されている人たちを脱出させているわ。私たちは管制室を抑えて彼らを安全に脱出できるようにしましょう。」
「ドア様がいよいよ動き出したんですね!」
「あ、あぁ…」

ショコラの言葉にロイドが目を反らして頷くと先に怪しい場所があったらしい。ショコラの案内に着いていくと雰囲気の違う場所にたどり着いた。

「ようやく到着か。天から見放された神子と豚どもが。」

そこには人間を見下し嘲笑うディザイアン、マグニスがいた。


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