交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

16

「…あれが牧場か」
「あぁ。イセリアにあるのと同じだ」

確かにハーフエルフに混じって人間もいるように感じる。人間牧場は初めて見たけどこんな感じなんだな…

「お待ちください、神子様!」
「ニール!ショコラがさらわれたんだって?」
「ええ。そのことでこちらに来てください」
「…あまりいい話じゃなさそうね」

森の影に隠れるようにして何かを決心したようにニールは俺たちに話し始めた。

「皆さんにはこのままパルマコスタ地方を去っていただきたいのです。」
「でもそうしたらショコラさんはどうなるんですか?」
「そうだよ。パルマコスタ軍と連携をとってショコラさんを助け出すんでしょ?」
「いえ、それが…」
「罠を張っている、とか?」

俺がそう言うとニールだけじゃなくロイドも驚いたような顔をした。

「やはりか。」
「嫌な方の想像が当たったわね…」
「ルクラスにクラトス!それに先生も!どういうことなんだよ?」
「考えてもみろ。不可侵条約だっけか?それを結んでるわけでもないのにわざわざ軍隊を持ってる街を放置するもんか。普通ならさっさと潰しにかかるだろうし」
「ルクラスの言う通りよ。反乱の芽を潰さないのはそれが有害ではない、というところかしら。」
「力がないからというわけでもなさそうだし、だとすると残してなにか益があるということだ。そうだろ?」
「…おっしゃる通りです。ドア様はディザイアンと通じ神子様を罠に嵌めようとしています。」

やっぱりか。しかしなんでドアはわざわざ神子を危険に晒すんだろうか…よっぽどの訳でもあるのか?

「…なんでそんなことを…」
「昔はこんな方ではなかった…本当にみんなのことを考えておられたのです。五年前、クララ様を失ったときもディザイアンと対決することを誓っておられたのに…」
「なんでそんなことになったのかお前も知らない、ということか。」
「はい…。とにかくこのまま牧場に突入しては神子様の身が危険です。ショコラのことは私に任せて皆様はどうか先にお進みください。」
「…確かに、世界再生のためにはここは捨て置くべきだろう。」
「駄目です!このまま見過ごすことなんてできない!」
「そうだよ!ほっとけばイセリアみたいになるかもしれないんだよ!そうでしょ、ロイド!」
「そうね。でも私は敢えてクラトスの意見に賛成だわ。街が滅ぶのが嫌なら今後不用意にディザイアンと関わらないことだわ。」
「目の前の人を助けることと世界再生はそんなに相反することなの?私はそうは思わない。」

リフィルの言葉にコレットは力強く言い放った。まるでそれが正しいと信じているように。

「コレットがそう言うなら私たちにそれを止める権利は無くてよ。この旅の決定権を持つのは神子であるコレットなのですから。ロイドもそれでよろしい?」
「俺ははなからそのつもりさ。言ったろ、牧場ごと潰してやるって。」
「しかし…」
「いいっていいって。コレットが嫌だって言ってるんだから。」

ジーニアスの言葉にどこかホッとしたような顔をしたニール。やっぱり神子とその護衛なら成功率は上がるのだろうと考えたのか…何にしろ、コレットのことは気を付けないとな。向かう先は敵地なのだから。

「とすると、私たちが取るべき行動は二つ。まず、このまま正直に牧場へ突入してショコラと牧場の人々を救い出すこと。こうなった以上牧場を放置しておくことは第二のイセリアの悲劇を生み出すでしょうから、もう一つはドアの真意を確かめること。彼が罠を仕掛けたのなら牧場の配置もよく分かっているでしょう。…少しだけお喋り好きにしてあげましょう」

リフィル最後のそれ拷問的な物ですか…?怖いなぁもうその薄笑いと合わさると、な。あんまり察したくない…

「ドア様に何をするのですか?」
「…聞かない方がいいよ。姉さんの折檻はすごいから」

あぁやっぱりかーなんて思ってたらリフィルの平手がジーニアスの後頭部に炸裂した。

「順当に考えればまずドアを押さえるのが正解だろう。…ルクラスはどう思う」
「んー…俺はクラトスに賛成。何も考えずに突っ張るのも良くないし。ロイドはどうする?」
「…パルマコスタに戻ろう。ドアの口から話を聞こうぜ」
「分かった。」
「でもなるべく早くショコラさんを助けてあげようね。きっと一人で心細いはずだから。」
「ロイドもたまには冷静な判断をしてくれるのね。」
「そのようだな…行くぞ。」
「…私は…」
「あんたはここにいた方がいい。これからあんたの上官を締め上げるんだ。…見ない方がいいと思う。」
「…だな。とりあえずここで様子を探っててくれないか?」
「…はい、ここで皆さんの帰りを待ちます。」




「…人なんて強い訳がないだろう。」

所詮はドアも世界を救うといわれる神子を差し出す程度のくせに。ディザイアンであるハーフエルフを虐げておきながらそのくせ自分たちは自分達が上だと錯覚している。ハーフエルフも同じだ。何も変わりはしないというのに。
ため息をつきながら俺たちはパルマコスタへ足を運んだ。




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -