交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

15

俺たちは特に苦戦はしなかった。ロイド達もだいぶ力をつけているみたいだな。
ディザイアン達は敵わないと理解したらしく、人間牧場に戻ったようだ。

「皆さん…ありがとうございました。」
「お母さんを助けてくれて本当にありがとう!お母さんまで殺されていたら私、どうしたらいいのか…」
「お母さんまでって…」
「主人はドア総督の義勇兵に参加してディザイアンと戦い、戦死しました。母も牧場へ連行されて…」
「うちの店は元々おばあちゃんが始めたの。だから帰ってきた時のためにもあの店を守らなきゃ…。あ、ごめんなさいそろそろ私、行かないと。」

ふと時計を見たショコラが言った。何かあるのかと聞くともうすぐアスカード旅業が出発する時刻らしい。

「アスカード旅業って?」
「私、協会付きの旅業代理店で働いてるの。でも、別にマーテル様を信じてる訳じゃないのよ。」
「ショコラ!なんてことを!」
「わかってる。神子様には感謝してるわ。でもマーテル様はお父さんもおばあちゃんも守ってくれなかった。今だってお母さんを守ってくれたのは神子様とそのお供の方だもの。私達が苦しいときに眠っている神様なんてあてにできないじゃない」
「そっか…そうだよね。でもね、やっぱり神様はいると思うよ。」
「そうかしら。」
「うん。いると思うよ。…あなたにも、私にも。」
「神子様がそう言うなら…私も一応信じてみる」

「神が、ほんとにいるもんか。」
「え、何か言った?」
「いや、なんでも?」

何か聞こえたらしいジーニアスになんでもないと返したらふぅんと答えてコレットの方に視線を戻した。神様なんていない。そんなのただの人が作り上げた虚像でしかないのに。人はそれに頼るしかないほど弱いのだろうな

「こんなことがあった後も旅行なんか行くのかよ」
「こんなことがあったから熱心な信者もそうでない者も救いを求めて旅にでるのだろう。」
「そういうこと。それじゃあ、本当にありがとう!」

「救いを求めて危険な旅をするよりやるべきことは他にあるだろうに…」
「あれ、どうかしたの?」
「何でもない。」

そう言ってコレットの頭を撫でてみると嬉しそうに笑った。犬か。

「…さて、じゃあ救いの小屋までスピリチュア像を取りにいくか。」



「神子様!皆様!」

救いの小屋に着くと、待機していたらしい兵士に声をかけられた。どうやら重要なことらしく、大分焦っている。

「どうしたんですか?」
「ドア様からの伝言です。再生の旅をしばしお待ちいただきたいと。」
「どういうことだ。」

兵士の言葉にクラトスは眉をひそめた。再生の旅を中断してまでやることなのかと顔が言っている。なかなか怖い顔になってて面白いことになってんなぁ

「実はマーテル協会付旅業案内人がディザイアンに拐われたのです。これを機にドア様はパルマコスタ総軍力をあげてマグニスのおさめる人間牧場を襲撃することになさいました。」
「それとこれとどういう関係があるのさ」
「我々が襲撃をかけるのに呼応して皆様に誘拐された旅業案内人を救出していただきたいのです」
「誘拐された案内人は?」
「ショコラという娘です。」
「ショコラが!?」
「…なんてこと」

ショコラ…か。確かにあの子なら戦闘力はほとんど無いから人質としてもってこいだな。なんて考えてたらどうやら俺達が助けることになってるんだけど。ロイドやコレットなら聞き捨てならない内容だもんなあ
「神子様、何卒よろしくお願いします。」
「ロイド、助けてあげよう」
「ああ、そうだな。」
「…やっぱり助けに行くのね。」
「当たり前だろ。ほっとけるかよ。」
「ありがとうございます!詳しいことは牧場でニールがお話しします。何卒よろしくお願いします。」

「っくく、やっぱりだな。みんなについてきて正解だったなほんと。飽きなくて楽しくてたまんないわ」

知り合いが人質になっているなかで思わず俺は笑みをもらした。呟いた内容が聞こえたのかリフィルが呆れたような視線を投げてくる。

「あなたは呑気ね。世界がかかってるのよ。」
「わーってるさ。でもそう緊張ばっかするもんじゃないと思うぜ?ずっとそれならいつか駄目になるぞ、リフィル。」

リフィルがロイドたちの保護者なのはこの短い期間旅してよくわかった。おそらく旅に出る前からずっとそうなんだろう。だからこそいつかその緊張の糸がが切れないかと心配になるわけなんだけど。
いつもより真面目な声音で言うとリフィルは少し驚いた様子を見せたがすぐに調子を戻して問い返してきた。

「じゃあ、どうしろと?あの子たちは自分にのしかかってる重さを分かってないのよ。特にロイドはね。」
「知ってるさ。話を聞いて分かったよ。ロイドはただコレットと居たい、守りたいんだろうさ。それでいいんだよ、理由は単純な方がいい。」
「考えが甘いのね。」

リフィルの言葉がため息と一緒に飛んできて地味に痛い。まぁ確かに旅の同行もロイドに任せたってのもあるから俺はもしかしなくてもこのメンバーの中で一番やる気が無いんだろうけど。



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