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町に来ると住人達は騒然としていた。
「どけ!マグニス様がお出ましだ!」
「東の牧場のマグニスだ…」
どうやらあのディザイアンがマグニスらしい。耳が良いのか、小声で呟いた男性の首を片手で絞めたまま持ち上げた。
「マグニス様、だ。豚が…」
マグニスはそう言うと首を絞めていた片手に力を込めた。
ゴキリ、と音がなり男は崩れ落ちた。あの音…もうあの人は生きてはいないだろうな。
「この女は偉大なるマグニス様に逆らい我々へ資材の提供を断った。」
「よって規定殺害数は超えるものの、この女の処刑が執り行われる事になった!」
「くそっ!この街の兵士達はどうしたんだ?」
「演習でほとんど出払ってるんだよ。」
怒るロイドに近くの男性が小声で教えてくれた。
「スキを狙ったんだな!ひどいや!」
「母さん!!」
叫んだ人物の方を見た。確か…ショコラだったかな。
「動くな!そこの女!」
処刑台の前に立つ母親の前に走りよるショコラにディザイアンの声が飛んだ。
「下手に逆らうと死んだ方がマシな思いをすることになるぞ。」
「ドア総督がそんなこと許すもんですか!」
「ドアか…ガハハハハ!無駄な望みは捨てるんだなぁっ!」
「やめてぇっ!!」
近くの子供が石をマグニスに向かって投げた。マグニスには当たらなかったが、注意をそらすには十分すぎるか…
「この…薄汚い豚がぁっ!」
石を投げた子供に向かったマグニスだが、
「やめろ!」
「ぐおっ!」
ロイドが放った魔神剣がマグニスに命中した。
「このガキが!マグニス様にたてつきやがって…」
別のディザイアンが子供に向けてファイアーボールを放った。俺は咄嗟に子供の前に走り出て槍で相殺した。全く、子供相手に大人気ないなコイツら…人間なら相手は誰でも良いのかよ…
「大丈夫か?…怪我は無いみたいだな。」
「うん…ありがとう。」
しかし、マグニスは完全にロイドの方へ意識を向けている。ディザイアンに対しては血の気が多いアイツの事だ。戦闘が始まるのも時間の問題だろうな。
「ダメよロイド!ここをイセリアの二の舞にしたいの?」
「何言ってんだ!ここはディザイアンと不可侵契約を結んでる訳じゃないだろ!目の前の人間も救えなくて世界再生なんてやれるかよ。」
「私もこんな処刑を見過ごすなんて出来ません!」
「…お前は手配ナンバー0074のロイド・アーヴィングだな!」
「お前が例のエクスフィアを持っているという小僧か!ガハハハハ!こいつは良い!ここでお前のエクスフィアを奪えば五聖刃の長になれる。お前ら、あの小僧どもを狙え!」
放たれたファイアーボールをジーニアスがロイドの前に出て防御した。
「まだまだ修行が足りないね。」
「くそっ!このヘタレどもが!もういい!まずはこの女の始末をつけてやる!」
「危ない!」
コレットがチャクラムを投げ、カカオの首を絞めていた縄を切った。
「何だと!」
そしてクラトスがマグニスに切りかかった。なんとまあ、良いチームプレイだな。
「ぐおっ!」
「…神子の意志を尊重しよう」
クラトスの声に住人がざわつく。
「神子様…?」
「あれが神子様なのか!」
「神子様がわしらに力を貸してくださるのか!」
「皆、わかってるの?ディザイアンに逆らうとこの街もイセリアのように襲われるかもしれないのよ」
「そうさ、わかってる!二度と同じ間違いは繰り返させない。牧場ごと、叩き潰してやるさ!」
「無茶だわ、そんな…」
「どのみち、俺もコレットも奴に狙われてるんだ。それに俺達には神子がついてる。世界を再生する救世主がさ!な、コレット!」
「…うん。私、戦うよ。皆のために」
「おお!コレット様!偉大なるマナの神子様!」
「もう、本当にバカな子達ね。…心配だから私も手伝うことにするわ。」
「先生、ありがとう!」
「おーい、俺のことも忘れんなよー」
そう言いながら手を振るとロイドは当たり前だろ!と叫んだ。
「くそっ、どいつもこいつも俺様を馬鹿にしやがってお前達!この連中の始末は任せたぞ」
そう言ってマグニスは消えた。どちらにしろ、傷を負っているのだからここでアイツが引くのは賢明な判断だろう。
「よくもマグニス様を!さっさとくたばるがいい!」
まぁ、雑魚相手にやられる程俺らも弱い訳じゃないんだがな。
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