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「ジーニアスが復習している間皆も勉強しなさい。丁度良い機会だわ。」
「…うえ…」
「はい、がんばります。」
「……」
「…なんで俺とクラトスもやるんだ…」
パルマコスタ学問所にバイトに来たら何故かジーニアスと学校の主席の子供が勉強対決をすることになった。ジーニアスは虚数とかいう訳の分からない単語を言いながら復習を始めた。
数十分後、ジーニアスは勝負に勝ち、入学許可証を貰った。
「…ほらよ」
あの後バイトで何とかパルマコスタワインを手に入れ、ロイドはそれを男に渡した。
「よーしよーし。いい子ちゃんじゃねーか。これに懲りて、二度と人様に迷惑かけるんじゃねーぞ。」
「はい。気を付けますね。」
「ほら行くよ!」
「それにしてもドア総督って大したことありませんのね〜。ほいほいと家宝をくれるなんてチョロいですわ〜」
「それで、アニキ!あれはどうするんだ」
「ばぁーか。俺達があんなもん持ってても役に立たたねぇだろ。がらくたを集めてるっていうハコネシア峠のジジイに売っぱらうんだよ」
「さっ、行くよ!」
一瞬。ほんの一瞬だけだが、殴りたい衝動に駆られてしまった。これだから人間ってやつは…
「へへ。怒られちゃったね」
「…ん?ちょっと待てよ。ドア総督がどうとか言ってたけど今のってもしかして…」
「…ああ。恐らくニセ神子だろう。」
まぁ、ニセ神子なんてマーテル様からバチが当たりそうだな。というのもパルマコスタ学問所から出ていった後に寄った総督府で神子を名乗る偽者が出た。しかもタチの悪いことに封印の場所が記してある再生の書を持って行ってしまったらしい。
「落ち着いて言うなよ!何で先に言ってくれないんだ!」
「泳がせて、後を付けると思っていたが、違ったのか?」
「…え?あ、いや…。そう。もちろんそのつもりさ。」
「…違うんだな」
「…そのようね」
「え?あの人達が私達の偽者なんですか?」
「あーもー!ばっかだな〜ロイド!」
「お前も気付かなかったくせに」
「あの人達、どこへ行ったのかな。」
「ハコネシア峠…と言っていたな。」
「畜生!追いかけよう!」
「ちょっと待て、ロイド。」
今にも走りだそうとしているロイドの肩を抑える。ちょっとは落ち着けよ…
「なんだよ!ルクラス」
「ここからハコネシア峠ってなると距離がある。しっかり準備してから行った方が良いぞ。」
「だけど、それじゃあ…」
「再生の書なら俺達が着く頃にはそのじいさんが持ってんだろうし、その時に貰えばいいだろ。」
「…分かったよ。」
「ありがとう、ロイド。」
さて、ロイドの許可も出たし少し休んでいくかな。
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