交響曲の願い(TOS小説) | ナノ

09

「これでやっと次の封印へ行けるんだな。」
「そだね〜」

なんとか海を渡れるようになった。

「船旅か…久々だな。」
「ルクラス、船旅したことあるのか?」
「まぁな。これで何回めかな…」

ロイドの問いに少し疲れたように答える。ロイドからしてみれば見るからにあまり楽しそうではないだろうな。



その後は特に魔物と遭遇することなくパルマコスタの港にたどり着いた。

「着いたぞ。」
「ありがとう、マックス。あんたはこれからどうするんだ?」
「パルマコスタの軍用船にでも護衛を頼むよ。…じゃあ、元気で。」
「無理強いして悪かったな。気をつけて帰れよ。」
「そっちも、気をつけて。」


「さて、パルマコスタに着いたんだ。封印の手掛かりを探そう。」


町の通りへ出るとき、コレットが誰かとぶつかったらしい。ガラスの割れる甲高い音がした。

「…またやってる」
「いったーい!何するのよ!」
「あ、すみません。」
「あー!さっき貰ったパルマコスタワインが!」

さっきぶつかったときに落としたらしいビンの中から葡萄の香りがした。

「おいおいねーちゃん。こいつは大事なワインなんだぜ。それを割っちまうなんてどう落とし前をつけてくれるんだ。」
「じゃあ今すぐ代わりのワインを買ってきますね。」
「コレット、こういうのに構うと良くないぞ。」
「でも、割っちゃったんだから仕方ないよ。」
「あのなぁ…」

コレットに相手には聞こえない音量で話しかける。しかしコレットはそれでもワインを買いに行くらしい。思わずため息を吐いた。

「…代わりのワインだと?お前、なめた口聞くとただじゃおかないぜ。そんなもので俺の怒りが収まるとでも思ってるのか?」
「バカは因縁の付け方も品がねぇよなぁ。」
「何だと小僧!俺たちを誰だと思ってやがる!」
「誰だよ」

俺がそう言うと男はかなり頭に来たらしい。

「この…!」
「待ちな。早いトコこの街から離れたいんだ。余計な騒ぎを起こすんじゃないよ。」
「そうですわ。ワインだけ弁償してもらいましょうよ。」
「ちっ、運の良い奴め。さっさと代わりのワインを買ってきな。」
「言うことねーぞ、コレット!」
「ううん。私がぶつかったんだから弁償しないと…」
「…ちぇっ。分かったよ。」


「ふざけないで!そんな安い値段で売れるもんですか!」

店に入ると店員だろうか、少女の声がした。

「こんなちんけな店の品物に金を恵んでもらえるだけでも有難いと思わないのか。」
「薄汚いディザイアンが偉そうに!こっちはあんた達みたいなのにグミ一つだって売りたくないのよ!」
「ショコラ、止めて!」
「だってお母さん!こいつら、おばあちゃんを連れていった悪魔なんだよ!」
「良い度胸だな!娘!そんな態度でいるとこの街やお前自身がどうなっても知らないぞ。」
「やれるもんですか!ドア総督がいる限りあんた達になんて屈しないんだから。」
「こいつ!」
「よせ!今年の間引き量を越えてしまう。これ以上はマグニス様の許可が必要だ。」
「ちっ…。」
「マグニス様の御意向次第では命の保証はできないぞ。」

「じゃあお母さん。私、仕事に行ってくるね」
「気をつけてね。」

ショコラと呼ばれた少女がドアを閉じるのを見届けると小さくため息をついた。

「お客さん。ごめんなさい。驚かれたでしょう。さぁさぁ、気を取り直して見て行ってくださいね。」
「じゃあ、パルマコスタワインってあるか?」
「はい。1000ガルドになります。」

皆は顔を見合わせた。今は1000ガルドも持っていなかったからだ。

「ワインって高いんだな…」
「どうするの?ワインがないと、あの人達許してくれそうにないよ。」
「ご、ごめんね。私のせいで…」
「お客さん、お金が必要なんですか?」
「まぁその、色々と事情があって…」
「でしたら、パルマコスタ学問所の学生食堂へ行くといいですわ。食堂のコックさんがウエイトレスのアルバイトを探していましたから。」


「あ、あの人は…」

ロイドの見ている先には男性と子供が二人。片方は男性の子供だろう。もう片方の子供に男性が諭すように何かを言っているように見える。

「あの方がドア総督じゃよ。」

近くにいた老夫婦が話してくれた。どうやらあのドア総督という人がディザイアンに対抗し、街の人々を助け出すと約束しているらしい。そのおかげで住人たちもディザイアンと真っ向から対立している人が多いらしい。

「強い人達だね。」
「きっと、あのドア総督は立派な人なんだろうな。」
「立派な人…か。」
「どうしたんだ?ルクラス」
「ん、何でもない。あれじゃないか?パルマコスタ学問所ってのは。」

そう言って指したのはドア総督が入っていったのとは別の、大きな建物だった。
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