天羽翼 | ナノ



鬼は外、福は内。
その声が聞こえたなら、考えられる行事はただ1つ。節分だ。
節分が来るとわかると、恵方巻きや豆まき用の落花生を用意する。落花生ではなく、大豆やお菓子などでもいいが。
しかし、月子にとってこの日は全く別のものを用意していた。

2月3日。

それは月子の彼氏である天羽翼の誕生日。
月子はケーキとプレゼントを持って歩いていた。昨晩雪が降ったためが、町は白いグラデーションに包まれている。
滑らないように月子は慎重に歩く。ただでさえいつめ転びやすいのだ。ゆっくりゆっくり歩いて、やっとの思いで家にたどり着く。
インターホンのボタンを押そうとしたその時、家のドアが急に開いて、

「ぬはは。月子、よく来たな!」

ギュウっといきなり翼が抱きついてきた。しかし、足元は雪で滑りやすい。案の定、月子はバランスを崩した。だが、翼は慌てて月子を抱き止め、尻餅をつくような結果にはならなかったが。

「ケーキ……崩れちゃったかも……」
「ぬわっ。そうなのか?いきなり抱きついたからか?」
「ううん。それが原因じゃないよ。私がケーキを持っている腕を大きく振っちゃったから」
「でも、それって俺が抱きついてバランスを取ろうとしたからだろう?やっぱり俺のせいだ……」

しょぼん、としている翼によしよしと月子は頭をなでる。

「大丈夫だから。とにかく家にお邪魔してもいいかな?外にいるとお互い風邪を引いちゃうよ」
「そうだな。ぬはは。改めて、俺の家にようこそ、月子」

誕生日はどうする、と尋ねた月子に翼は自分の家でお祝いして欲しいと言った。
さすが男の子の部屋というのだろうか散らかっている。

「これでも片付けた方なんだぞ」

と口を尖らせて翼は拗ねた。
いろいろながらくたを集めてはそれを実験材料にしている彼だ。

「それなら、私が翼くん専属のハウスキーパーになってあげようか?」
「………………ほんとか?」

月子は冗談のつもりで言ったのだが、翼は本気だと思っているらしい。
ぬはは、と笑えばぎゅっと抱き締めてきた。

「ちょっ、翼くん……!」
「ねぇ、もしかして俺の専属のハウスキーパーになるっていうのが今年の誕生日プレゼントなのか?」
「……そう、だね。でも他にもちゃんとプレゼントが……」
「専属っていうので君を締め付けたくない。ねぇ、これからもずっと俺の側にいてくれるか?」

真剣に翼は月子を見る。
彼の過去は孤独だ。一人で居たいのに居たくないという、心の傷を負っている。
だから、いつも無邪気を宿している瞳は。離れないでと訴えている。
月子はフッと優しく微笑み、

「大丈夫。私はどこにも行かないよ。翼くんとずっと一緒にいるよ」

ギュッと月子も抱き締め返して、あやすように翼の背中を撫でる。


そう、絶対に離れたくない。
だから、



「お誕生、おめでとう」



新たなものを作るものとなれ (水瓶座)




(君が孤独と戦っていた時間を埋めるために)
(私はずっと貴方のもとにいよう)










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