お題 | ナノ


この痛みを何と呼ぶのか、俺は知らない

※終盤に流血表現・殺人表現がございます。苦手な方は観覧をお控え下さいますようお願い致します。

最近、付き合っていた女と別れた。
これも一応任務の一つ、敵軍の女中から情報を得るために一番気に入られていた女中と恋仲になって、ちょくちょく情報を盗んでたわけ、足軽に変装にして。
ま、俺様も忍だしそれぐらいは余裕ってことで、自慢じゃないけど顔もいいほうだしさ簡単に落とせたわけ。
今日はその敵軍との戦の日、攻め込む日、場所、方法は既に俺様が把握してあるし向こうに勝ち目はないんだけどね。

「佐助っ!なんっで……うそ、でしょ?」
「あらららら〜、名前ちゃん久しぶり……でもないか」

名前、俺様の元恋仲。結構可愛い方だし、健気だし……いいところばかりで手放すには惜しいぐらいだったね……俺様がそこらへんの足軽だったらの話。
本気で好きだったわけじゃないし、大体そんな感情を持ち合わせてないからね俺様は。

それにしても……

「あれ?そっちは女中を戦に出さなきゃいけないほど危ないわけ?」
「違うっ!私は……私は……足軽。この軍の足軽の一人だ!」
「あっそ、俺様には関係ないけどね。今じゃあんたは猿にしか見えないからさ」

いくら元恋仲でも、見逃すつもりはさらさらないけどね。こっちも命かけて仕事してるわけだからさ。
まさか名前ちゃんが足軽だったとはね……女に刀を持たせるなんて…t…
向こうはこっちに刀を向けているわけだしこれは真っ向勝負ってわけね……ま、負けないけど。

「佐助!覚悟ぉ!!」
「名前ちゃん俺様は嘘つきなんだよ……。俺様は足軽なんかじゃない」
「えっ……」

戦場での油断は命取りなんだよ?名前チャン?

「本当に騙されやすいね……でも油断は禁物だよ……」

背後に回り込んだ俺様は耳元でそう呟いた。
さよなら、名前。


持っていた手裏剣で背を裂く。
飛び散った赤い雫は俺の頬につき、忍装束につき地に落ちた。

俺の手に残るのは人を殺めた感触と訳のわからない虚無感といつこぼれ落ちたの分からない自分の涙。
そして……胸はずっと痛み続けている。
ずっと……ずっと……、あの子の笑顔が見れなくなってから、これが任務だと思い出してから……消えない。これからも消えることのない、この胸の痛み。

この胸の痛みが何なのか……

この痛みを何と呼ぶのか、俺は知らない。


ただ、自分の罪と後悔だけはずっと残ったままで……




あとがき
今回、初めて書いた短編、もといお題小説でした。
佐助は好きなキャラながらも口調がよくつかめなく書くのには一苦労しました……(汗)

そしてなぜこれを佐助にしたのか、それはこのお題を見た瞬間にこれは佐助しかいない!
そう思ったからなんです。
お題は、【確かに恋だった】様よりお借りさせていただきました。

読んで下さりありがとうございます。

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