絶望を奇跡と呼びかえて


黒い太陽が出雲の国の空に現れ無差別に人を攻撃し、たくさんの民が死んでいった。千尋は飛鳥船へ避難するよう命令した。出雲の民も常世の軍も…生きとし活けるもの全てを船へ、と。
全員が乗り込み船が出発してから千尋は部屋に閉じこもっていて部屋から出てこなかった。
「はぁ」
顔をあげたと思ったら盛大な溜め息を一つ吐きまた体を小さく丸め考えるように座り込んだ。

「千尋、」
「風早…」
「絶望…しているんですか。」
顔に精気がない千尋に心を痛めた、しかしこれはこの問題の答えを彼女に聞かなくてはならない。だから慰め全てを教えたい気持ちをグッと堪え、風早は問う
「……そうね、絶望しているわ。」
「!」
「これ以上民を傷付けず、黒い太陽を滅ぼして、誰一人として犠牲にならず、みんなで幸福になる方法。」
「…」
今までにない解答に俺は正直に焦った。
いつもの千尋…否、今までの千尋だったら真っ先に自分を犠牲にし民を守ると言っていた、それを見た俺が自分を犠牲にし、いつも彼女を生きながらえさせていた。

「私は誰一人として死んでほしくないの、私も犠牲になるなんてこと……したくないの、例え龍を呼ぶためにこの体を捧げなければならなくても。欲張りかな…?」
「いいえ…それが千尋が出した願いなら誰も反対しません。」
「本当に?」
「ええ、俺が保証します。」
「クスクス、ありがとう!」

やっと笑った千尋に風早は安堵した。

「千尋、」
「ん?」
「俺は千尋が望むもの全てを守ってみせましょう」
そう俺が言うと待ってましたと言わんばかりの無邪気な顔で
「風早、一緒に生き残るために私と共に戦って!」
「御意」

絶望しか味わってこなかった俺にやっと求めてた答えを与えてくれた貴女、希望という奇跡を見せてくれた貴女の為に、俺の全てを賭して願いを叶えましょう。

















<了>


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