夢は夢でしかないのに
「−−−−−っ!!」
ガバッ
勢いよく布団から起き上がった千尋は近くにいると思われる彼の姿を探した。
「いない…?かざは…や?」
やだやだやだやだやだ、どこにいるの、ひとりはいやなの、ひとりにしないで…
千尋は慌てて部屋を出て彼の姿を探す。
「風早、どこ?」
返事はない。
あるのは風が奏でる木々のざわめきだけ。
"淋しい"という感情が暗い暗い色となって千尋の心を満たしていく−それは絶望のように
「どこにいるの、風は『どうしたんですか、千尋』風早!!」
千尋は彼の姿を見た途端勢いよく抱き着いた。彼の胸の中で"かざはや"と何度も何度も言い続けている。最初こそはびっくりしたもののまた怖い夢を見ただろうと予測した風早は彼女を優しく抱きしめた。
「俺はここにいます、貴女の傍にずっと。」
「うん………」
それを聞いて安心したのか千尋からはすぐに寝息が聞こえてきた。
風早は千尋の額にキスを一つ落とし彼女を部屋に運んでいった
<了>
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