死神 | ナノ


其れがたる所以  


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「と、いうことで、ノイトラの体の採寸をさせていただきます」


しゃきーん。と、メジャーを伸ばして構えると、目の前に立つノイトラが「はあ?」と、片眉を吊り上げて首を傾げる。
さらさらと揺れる黒髪を結びたい衝動に駆られるけれど、ここは我慢だ我慢。


「いやいや、だからね。ノイトラとグリムジョーって運動とか言って虚とかにガチ戦闘にかち込みに行くじゃん?」
「まあ」
「服とか破れたりするじゃん?」
「多少は」
「修復不可能なくらいに破れたりするじゃん?」
「時々な」
「ノイトラの服が減ってくるじゃん? 着るものないじゃん? 洗濯めっちゃ大変じゃん? でも現世にノイトラの身長に合う服なんて売ってないじゃん? 大変じゃん? よって作ります。この私が!」
「作れんのか?」
「石田という心強い味方にアポを取っております! 採寸して現世に行ったら、布地選びからご指導頂ける予定です!」
「まあ、何でもいいけど。ほれ、測れよ」
「うむ。よし、じゃあまず首回りから、と。…ん?」


ひょい、ひょい。と首に回したいメジャーは空振りで、宙を切る。
床に垂れたメジャーが悲しい。


「と、届かない…だと!?」
「だろうな。座ってやるよ」


胡座を掻いてくれるノイトラに感謝しつつ、自分の背丈に情けなさを覚えつつ、とりあえずメジャーを回す。


「ふむふむ。だいたい実寸のプラス二センチくらいあれば、ゆとりある襟が作れるらしいんだよ」
「へえ」


ノイトラが立ち上がる。
私は石田から貰った、測らなくてはならないリストを見つつ、次は腕の長さ、肩幅を測ろうとした。


「だから届かないって! あー、でも腕の長さは立ったままの状態で真っ直ぐ腕を下ろしたときに測るって書いてあるわー、どうしようかなー。グリムジョーにでも頼むかな」
「絶対やだ。触られたくねえ」
「じゃあテスラ?」
「あいつは触り方がねちねちしてるから無理」
「くっそ、早くも万事休すか…!?」
「俺が寝ればいいんじゃね?」
「天才か!!??」


よ。と、小さな掛け声と共に仰向けに寝てくれるノイトラ。
そそくさと肩幅を測り、腕の長さを測り。


「えーと、次はウエストか。よっこいせ。細っ!!! ウエスト細いよ!? お腹ぺったんこ!」
「抱き付かれたまま言われても」
「次はヒップね。ここも、ほっそいなあ。太腿、ふくらはぎ。ほっそいなあ。足の大きさ。でか!! 超モデル体型! 服作るの楽しみ! めっちゃ似合うの作ってくるから! サルエルじゃないのも作ってくるから!」
「アラシが着て欲しいと思うやつ作ってこいよ。何でも着てやるから」
「ちょ、何その発言。紳士か、おぬし。さて最後は脚の長さ。股下かー。よいしょと」


脚の根元から踵へとメジャーを引こうとして、ぐん、と力が加わった。
おそるおそる見てみると――?


「メジャーが足りない、だと…!?」
「てか、既に持ってる服を石田に渡せば、それ参考にして作ってくれるんじゃね?」
「て、ててててて、天才か…? も、もう少し早く思い付いてくれさえすれば、こんなことには…」
「初めから思ってたけど」
「何で教えてくれないんだセニョール!」
「うーん?」
「あ、眼帯も作るから頭も測らなきゃ。起きてくれい」
「ああ」


そうしてノイトラは体を起こして、また胡座をかいてくれた。
私はノイトラの正面に立って、ノイトラの頭を抱くようにぐるりとメジャーを回す。数値を見ようとして、ふとノイトラと目が合った。
思いがけない近さだ。
なのに、ノイトラは躊躇もなく真っ直ぐと私を見つめてくる。
さっきまでとは雰囲気が打って変わって、真剣な眼差しだった。うろたえてしまったのは私で、逃げ腰になってしまう。


「え、な、なに、どうしたの」
「あのさ」
「うん?」
「眼帯だろ? 斜めに測らなきゃ意味ないんじゃねえか?」
「だから何でもっと早く教えてくんねーんだ!」
「うーん?」





言えない願望
(ちょっと触られたかった、なんて)
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