死神 | ナノ


其れがたる所以  


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「ね、ねえ! 普通は逆なんじゃないかな!?」
「動くな、嵌めらんねえ」
「いたたた! 痛いよ!」


現在、電球の交換中。
以前ならば階級が下の方だった誰かが人知れずメンテナンスをしてくれていたのだけれど、宮に私とグリムジョーだけになってしまうとそうもいかない。
明滅を繰り返していた電球は、つい先ほどバチンという音ともに切れてしまって、慌てて地下倉庫から埃の被った電球を掘り当て、今に至る。

ソファを電球の下にうんせと寄せて来て、その上で私が馬になり、さらにそこへグリムジョーが乗る。

細いけど筋肉がっつりのグリムジョーが乗るとなかなか重い。


「嵌まんねえ」
「ちょっと!? 本当は終わってて虐めてるだけじゃなくて!?」
「あー嵌まんねえなあ」
「わざとか…!」


そうこうしていると重みに耐え兼ねた私は潰れてしまって、悪戯に笑うグリムジョーが顔を覗いてきた。


「面白かったか?」
「どこがじゃ! 電球は!」
「あ? んなもんとっくに嵌めたに決まってんだろ」
「これを亭主関白というのか…!」
「献身的なオクサンだなあ」


グリムジョーは悪どい笑顔のまま、ひょいと私を抱き上げてソファの上に座らせる。


彼は怖い。


それは誰しもが抱いたことのある感情の筈だ。

なのに、時々、想像もつかないほど優しく笑う。

今もソファに私を座らせたと思いきや自分は床に膝をついて、少し骨ばった男の人らしい指で私の前髪をさらりさらりと整えている。髪を耳に掛けてくれ、顔を出したかと思えば大きな掌で私の頬を包む。

目を細めて、柔らかく口許に笑みを深めるグリムジョーを見ると無性に切ない気持ちになるのだから感情とは難しい。


「グリムジョーはどうしてそんな顔するん」
「顔?」
「うん、何か凄く幸せそうで楽しそうで、充実してそうなのにどこか不安そうな顔してる。どうしてそんな顔するの?」


珍しく視線を下げてグリムジョーの顔を見詰める。
水色の、予想よりも遥かに滑る髪を鋤いて睫毛に触れて、唇に触れて頬を包むとまたグリムジョーの笑みが深くなった。

そしてどちらともなくキスをした。


「馬鹿だな、オメーは」
「なんと」
「オメーが今、どんな顔をしてるか気付いてねえ」


そしてまたキス。


「私、いまどんな顔?」
「俺と同じ」
「何でかな。こんなに幸せなのに」
「本当に鈍感にも程がある。感情もわかんねえのかよ」


今度はグリムジョーは私を抱き寄せて、愛しむように頬を擦り寄せてきた。
私も同じように返せば、低く囁かれた一言にまだ意味もわかっていないのに涙が溢れた。


「傍にいる。ずっと」





隠れた不安
(幸せに過ぎると今度は幸福が壊れるその日を恐怖するようになる)
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