死神 | ナノ


其れがたる所以  


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「もはやこれ置いておけばいいんじゃない?」


どん、と音を立ててサイドテーブルに水の張った洗面器を置くと、グリムジョーがあからさまに嫌そうに顔をしかめた。その顔には私特製のマスクが付けられている。


「やだ。寝てる間にぶん殴って床にぶちまける自信がある」
「んん! 否めないね!」


そう言うグリムジョーの声はガラガラに嗄れている。
風邪ではない。
とどのつまり、乾燥しているのだ。

虚圏は砂漠に覆われたとにかく広い場所。湿度なんて管理されていなくて、とにかく乾燥する。藍染がいたころは戦闘とか鍛練とかで水分補給をこまめにしていたし、さほど宮にいる時間も長くなかったために気にならなかったようだ。
けれど今ではほとんどの時間を宮で過ごしている。だから乾燥というどうにもならない敵が顕著に襲ってきたわけだ。私はまだ声は健在だけれど、それでも夜中は喉が張り付く感覚がある。


「うーん。じゃあ、やっぱりマスクして寝るしかないんじゃないかね。今は1枚しかないけど、もう5枚ぐらい作ってあげるよ。洗えば繰り返し使えるガーゼで作ればエコ! これでどうだ!」
「やだ。これ耳痛ぇし、朝起きると何でか外れてる」
「あんたが寝惚けて夜中に自分で外しとるんじゃ! 私が何回、付け直してやってると思ってんだ!」

へー。と、興味なさげにマスクを外している。気に入らないらしい。窮屈さを嫌うグリムジョーらしいといえば、らしいか。


「顔の半分に仮面が残っちまってるクソ面倒な奴がいると、手間が掛かって仕方ねえな」


と、割って入って来たのはノイトラだ。テスラも一緒で、どうやら遊びに来てくれたらしい。


「お、いらっしゃいー!」
「来たのかよスプーン。オメーだって顔に穴が残ってんじゃねえか」
「それがどうしたってんだよ。アラシが作った眼帯ぴったりだし、使いやすいけど? 黙って手作りのマスク付けてろよ」
「自慢かよ。別に羨ましくも何とも思ってねえのに、わざわざご苦労さん」
「ノイトラ様、あの顔をしているときは羨ましがっていますよ」


テスラに助言されて、ノイトラはふふんと鼻で不遜な笑いを浮かべた。
ノイトラには眼帯をいくつか作ってあげた。洋服に合わせて変えられるようにデザインよりも色を重視した。今は黒のワイシャツに合わせて同色の眼帯を付けてくれている。


「まあまあ。ノイトラ達、ご飯でも食べる? 牛乳を混ぜるだけで簡単にブリュレ完成っていう魔法の粉を買ってきたからすぐにデザートも作れるよ」
「食う。でもそれよりマスク分けてくれ。乾燥がやべえ」
「ノイトラ様の麗しいお声が危機に晒されている。早急にマスクを寄越せ」
「あ、やっぱりノイトラの宮もかー。現世で加湿器買ってきてもいいんだけどさー、何せひとつひとつの部屋が広すぎて使い物にならんのだよなー。藍染もそこんとこ考えて部屋を作って欲しかったわ」
「何だよ結局オメーらも乾燥でぴーぴー言ってんじゃねえか」
「うるせえ晴れ頭。ならアラシにマスクなんざ手間の掛かるもん作らせてねえで口にタオルでも巻いてろ。あ、タオルも仮面で破れちまうか? つくづく面倒な男だな」
「アラシ、昼飯の前にさくっとスプーン野郎ぶっ殺してくるから待ってろ」
「やめやめやめい!」


いつものごとく三人の喧嘩を止めていると、卓上時計のアラームが鳴った。お風呂に入っているザエルアポロを迎えに行く時間になったのだ。
ザエルアポロはひとりになるのが嫌で、本当は浴室内にも私に付いてきて欲しかったらしいのだけど三人に全力で阻止された。
なのでお迎えに行かなければならない。


「私はザエルアポロのお迎え行ってくるから、喧嘩しないで待っててね!」
「喧嘩なんざガキみてえなことしねえよ。やるなら殺す」
「やってみろ六番」
「はい、僕が審判やります」
「大人しく待っとれぃ!!」
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