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私が頬を緩ませてしまうのは、人から言わせれば少し不思議な瞬間なのだという。
そんな私は今、ルフィを見つめながら微笑んでいた。
私の1番好きな瞬間のルフィがいたからだ。

ルフィのいいところは明るくて、子どもみたいで、純粋で、夢に向かってひたむきで、人柄で人を惹き付けるところにあると思う。溌剌とした笑顔は、太陽よりも温かい。

私の1番好きなルフィ。

それは、誰かのために戦っているときだ。

いつも優しくて爛々と輝かせた瞳で笑っているルフィが、ひとたび目を剥いて、ぎらつかせて、大きく大きく振りかぶった拳を相手に叩き付ける瞬間。


私はそのルフィが堪らなく好きなのだ。


相手を倒したルフィが砂埃舞うなかで佇んでいる。肩で息をしながら、険しい目付きのままで振り返ると、私と視線がかち合った。
ひとつ、瞬きをした。
ふたつ、瞬きをした。
するといっきに柔和な顔付きになる。

きょとんとした表情で、私に歩み寄ってくるとなにを思ったのか頭をぽんぽんと撫でてくれた。

「なに?」
「いや、珍しく笑ってるから、腹でも痛ぇのかと思って」
「痛くないよ」
「そっか」
「うん」

 そうすると、もう彼はいつもの彼に戻る。にししししっと歯を見せて笑う。

「俺、アラシが笑ってるの、なんか、いい!」
「そう?」
「そう!」

 言ってしまおうか。
 言ってしまおう。伝えたら、どんな顔をしてくれるのかも楽しみだ。

「私もね、ルフィが真剣に戦うところ、いいと思う」
「戦うところ?」
「そう。いつもと違うところ。格好いいから好きだよ」

 言うと、麦わら帽子を手に取って、皆に見えないように顔の横で立てた。手招きをされたので、私も帽子の影に顔を寄せる。
 二人の顔は触れてしまいそうなほど近かった。戦った直後の体温が伝わってくる。

「じゃあさ、」




もっと好きにさせていい?
(その直後のキス、たぶん皆に見えてたと思う)

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