背中に縋って引き留められたなら | ナノ
アナザー・企画



  終わった恋


終わった恋




彼と出会ったのはまだ子供の頃。
無知で何も知らなかった。
世界を知りたくてけどその思いも全部空まわりしていたそんなとき。
出会ったのは偶然で私らしくなんかないかもしれないけど、
まるで運命のような、運命だと思ってしまうような出会いだった。
お互い敵同士で出会うことなんて決してない関係だったのに私たちは出会ってしまった。
一度きりだと思っていたのにそれは再び訪れた。
そして、あなたは私の大切な人をあなたの親友を撃ったと言って泣いていたね。
共闘してから、ううんきっとその前から私の心はあなたでいっぱいになった。

 
あなたは何でも一人で悩んでしまう癖があって、

放って置くと取咎めもなく永遠に負のループを漂ってどこか違う世界に行ってしまいそうな気さえして私は心配で放って置けなかった。
それがたぶんきっかけで、
そして私はあなたを知っていくたびにあなたに恋をした。
抱きしめられたときのあなたのぬくもりにうるさいくらい胸が鳴って。
キスしたときの互いの唇の熱と火照った頬に、
目を逸らしたくなるくらい恥ずかしくなった。
けどそれと同時に笑うあなたの笑顔にどうしようもないくらい惹きつけられた。
そんな思いもドキドキも全てアスラン、あなたに教えてもらった。
けど、私は国が大切で守りたくてあなたと共に歩くことを諦めた日から私は思う。
思ってしまう。
全て忘れられたらいいのに・・と。
出会ったことも抱きしめられたこともキスしたことも全て。
そしたら悲しむことも、涙を流すこともないのだと。
ただの戦友として接することができるかもしれない。
オーブのために戦ってくれてありがとうと。
一、代表として言える。
そしてあなたの恋の噂も簡単に聞けて、胸を痛めることもない。
私は自分が思ったよりも弱くて、自分が思っているよりずっとあなたのことを愛していたのだとあなたと別れてから気付きました。
あなたを好きで好きで、大好きで。
――愛していると・・。
01  いっそ全てを忘れられたなら
(運命後)



・・*・・




聞いてしまった。
聞きたくなんかなかった。

偶然聞いてしまった兵士の噂話。
考えていなかったわけではないのにそれを聞いた途端私の体は固まって動かなくなってしまった。
考えていなかったわけではないのに私の胸は痛いと酷く悲鳴をあげている。

嫌だと。寂しいと。
人は誰もが皆愛した人を忘れてまた他の人を愛せる生き物なのかな・・。
鮮やかな赤の髪をしたツインテールの女の子は彼を見ていた。
鈍い私でも気付くぐらい熱い視線。
だから、願いを託した。勝手な一方的な頼み。
なのに、なぜ。
こんなにも悲しいのだろう。
別れるというのは、別れるということは相手の人生から自分がいなくなるということ。
それはとても悲しくて辛いことだけど私はそれを分かって覚悟していた。
覚悟をして私は指輪を外した。
それなのにとめどなく溢れる涙。
もう彼の中に私はいない。
その真実に打ちのめされた私に残ったのはおおきな空虚感だった。
02  あなたの隣に居るのは私ではない誰か
(運命後)


・・*・・



どうしてこうなってしまったのか未だ俺は理解できず、掻き苦しんでいた。
そしてベットに入っても寝付けない日々。
夢に見るのはあの残像。
彼女の―カガリの左手に嵌った指輪。
照れたように涙を頬を濡らしながら笑ったあの日。
今となってはまるで悪夢。
どうして?どうして?
あれは嘘?
・・・あの日をいままでのことを過去に出来ないのはまだ俺は君を思っているから。
そう未練がましい。
俺は君にずっと傍にいて守ると誓った。
君はオーブの獅子として娘として必死に戦っているのに、俺は君に何もしてあげられなかった。そんな歯痒い日々が2年も続いた。
何かしたいのに何も出来ない自分の弱さ、だから俺は力を求めて今剣をを手に持った。
けれどその剣は
君を守りたくて、ずっと傍にいたくて、いて欲しくて・・・。
決してそれは、
君の手を離したかった訳じゃない。
ずっと、ずっと傍にいたい。
ただ、それだけなのに。
なぜ?どうして?
アスランの頬に一筋の涙が伝った。
03  その手を離さないと約束したのに
(運命中)


・・*・・



今思えば人魚姫のような恋だったのかも知れない。
けど、2人寄り添った日々に偽りはなかった。
始まりはどうであれ2人共に歩み進んだ日々は真実だと信じていたい。
私はあなたを愛してしまった。
身分が違ったのかも知れない。
身分で別れるなんておかしな話だけどたぶん原因のひとつはたぶんそれ。
オーブでは彼は戦犯者。
元ザフトの逃走兵。それだけで罪状は十分。
けれどそれでもザフトでは彼は先の大戦の英雄。
私はたとえ血が繋がっていなくてもお父様のアスハの娘で、オーブの国家元首で・・。
私は国から離れられない。
昔マーナに読んでもらった童話の人魚姫。
王子様を思って泡になってしまった人魚姫。
私はそれが悲しくて泣いた。
柄でもないけどもしも私が彼女の立場だったらどうするのだろう?
私は王子をアスランを殺せるのだろうか?
・・・きっと殺せない。
自分の命よりも彼の幸せと――お姫様と幸せにと願って。
海に身を投げ、泡になって。
・・消える。
それはきっと純愛なんかじゃない。
醜いほど狂おしいほどの愛執。
ただ、人魚姫と違ったのは私は彼に思いを告げられたこと。
思いを告げられることが出来た。
だから、きっと大丈夫。
あなの心の隅、奥深くに静かに私はいるから。
―愛しているよ。アスラン。
そう告げたのは遠いいつか。
04  叶わぬ人魚の恋だった
(運命後)


・・*・・


彼と最後に話したのはプラント行きのシャトルで。
私から唇を近づけて、


「別れよう。そしてありがとう」


と静かに告げたのが最後。
そして私は彼の体をシャトルの中に押した。
閉まったドアをドンドンと叩き何かを告げたアスラン。
けど、私は聞こえない振りをして耳を塞いだ。
お父様も私を送り出すときこんな気持ちだったのかな?
まるで第三者にでもなったように客観的に自分の行動を見ていた。
そう、彼と私の関係はこの時点で終わったのだ。
なのに、何を期待しているのだろう?
もしかしたら、もしかしたら帰ってくるんじゃないかっていう淡い思い。
自分でも笑っちゃう。
未だ大切に指輪をもっているんだから。
あなたがこのオーブの土をもう二度と踏むことはないのだろうかという不安とともにあるのはそれを否定する心。
もしかしたらと・・。
自分が招いた結末なのにどこかで期待している自分がいた。
いつか帰ってきてくれるんじゃないかと?
さっきまで降っていた雨が止んだ。
雲は消え、いつのまにか青空には虹がかかった。
窓にかかったカーテンのの隙間から眩しい日差しが部屋に入ってくる。
そっとドレッサーから白い箱を取り出す。
白い箱を開けると紅いルビーの宝石がついた指輪が現れた。
指で指輪を掴んで高く上げるとキラリと宝石が光った。
まるであの日の約束は生きているとでも言うように。
それがあまりに綺麗でカガリは泣きそうになった。
アスランと過ごした2年間が、あんなにつらかったのにそれでも酷く充実した日々のように思えた。
これは宝物。
私の大切な約束の証。
05  また戻ってくると、少しでも期待させて
(運命後)




2人の願いはいつからか俺だけのものになった。
ずっと傍にいようと言ったのは嘘だった?嗚呼カガリ。答えて。
いつから君は俺と違うものを見始めたの?
俺は君がいればそれでよかった。
けど、君には俺なんかよりもずっと大切なものがあったんだね。

プライド?国?それとも自分?
それは今の俺には分からないけど。
オーブは今も暑い?プランとには昨日初めて雪が降ったよ。
地球みたいに自然の雪じゃないけどそれでも美しかった。
いつだったかカガリも雪を見てはしゃいでいたね。
それを少し思い出したんだ。
遠く感じるのは距離だけじゃなくて心なのかもしれない。
会いたいよ。
君に。
君の笑っている顔が見たい。
君の怒っている顔が見たい。
君の悲しんでいる顔が見たい。
君の・・・君の全てが見たい。
どうして、いつ俺たちはすれ違ったんだろう。
もう互いの道が交わることはないのかな・・。
一度離れてしまった線二度と交わることはない。
そう。
永遠の平行線。
ありがとうカガリ。さようならカガリ。
06  すれ違い始めたのはいつから?
(運命後)


・・*・・


夢を見た。
アスランと私とキラとラクスと皆が笑いあっている日常を。
こんな些細な日常がもう2度と起こりえない。
帰りたい場所。
あの頃の私は迷いもなくアスランとキラ、ラクスと言えそうなぐらい純粋だった。
帰る場所は私にとって皆だった。
だから、私にとってそれは永遠で決して無くならない場所だった。
けれどそれはいとも簡単に零れ落ちていった。
もう私に帰る場所は無かった。
強くなった私は代わりに私は仲間を失った。
一緒に笑い合える仲間が、泣き会える友が、一緒に悩みを相談し合える皆が、
――倒れそうになるたび支えてくれたあなたがもういない。
帰る場所が永遠にあると思っていた昔の純粋だった私が今の私を見たらどう思うのだろう?
悲しい?辛い?寂しい?
それは今の私には分からないけれど。
今の私の確かなことは、私が得たことは永遠の人間関係なんて存在しない。
人はいつか死ぬし、離れていく。そして今の私には帰る場所がない。
ただ、前を向くしかない。
後ろは振り返れないという現実だった。
私は前を向く。
私が守りたい世界のために、皆の幸せのために。
私の帰る場所がなくなっても皆の帰る場所は守りたいから・・。
07  永遠だと思っていたあの頃
(運命後)


・・*・・


オーブに降りて目の当たりにしたのはカガリの婚約者の存在。
一々喋るごとに俺は嫌悪感を抱くいけ好かない奴だった。
いやらしくカガリの肩を抱く手を払いのけ「カガリは俺の女だ!!」と叫びたかった。
しかし、それはカガリの迷惑になるって分かっていたから。
俺は掌を強く握って我慢することしか出来なかった。
そして知った。
自分があまりにも無力だということを。
2年間の一緒にいた時期もカガリに触れる奴に何もできなくて、
何度も屈辱と歯痒い思いをした。
それでも、カガリの傍にいたかったのは彼女の力になりたかったから。
カガリが背中に背負う重い荷物を少しでも俺が軽くしてあげれたらいいと思ったから。
俺は3度、死に掛けた。
初めはキラを殺そうとイージスを自爆させたとき。
2度目は父に銃を向けられたとき。
もう諦めそうになったとき胸元に光るハウメアの守り石を見て諦めたくないと思った。
3度目はジェネシスを止めるためジャスティスを駆り立てたとき。
父の責任を負うのが怖くて嫌で逃げ出したとき。
どれもカガリ、君に救われた。
だから、この命は君に、君のために使おうと決めていたから。
君がそれを知ったら怒りそうだけどね。
そしてもうひとつは心のどこかでいつか一緒になれる日が来るかもしれないと思っていたから。
淡い恋物語。
けど、君は奴との結婚を承諾したのだ。
国のためにと・・。
叶わない恋だったのかもしれない・・それでもやっぱり俺は君を愛している。
アスランはハウメアの守り石を強く握った。
カガリと話がしたい。
そして左手の薬指に嵌った俺が送った指輪を見させて、安心させてくれ。
俺たちの恋物語を悲恋になんてさせやしない。
ミネルバの一室でアスランはそう決意した。
08  何故叶うかも、なんて思っていたのだろう
(運命中15話)


・・*・・



朝起きると分かってしまう。
隣に彼がいないことを。
朝起きるとにっこりと笑って『おはよう。カガリ』と言ってくれる存在がいないことに。
鮮明に思い出せる彼の笑顔に胸を焦がしてしまう自分が情けなくて馬鹿らしくてカガリは自嘲気味に笑った。


「ハハ・・」


声は空気に溶けた。
カガリの頬に一筋の涙が伝った。
恥ずかしがって顔を埋めた私に悪びれた風もなく『昨日あんなに乱れてくれたのに』と飄々と言う彼に枕をぶつけたのがまるで昨日のように思い出せる。


「・・・歳でも取ったみたいだ」


カガリは小さく呟くとゆっくりとした動作でベットから抜け出してバスルームに入っていく。
彼がいない。
そんな現実を洗い流すような強いシャワーをカガリは浴びた。
私はもうあなたに会わせる顔がないんだ。
ごめん。
窓から覗く朝陽は嘘のように清清しかった。
09  きっとまたいつものように目覚めたら、あなたが
(運命中11話)

・・*・・



またどこかで合ったら一緒に笑い合おうね。
いつかきっと。
だって素敵じゃない。
そんな日が訪れたらきっと素敵じゃない。
あなたの隣で真っ白のドレスを着て愛を誓うことを夢に見なかった訳がない。
だって女の子の夢なんだよ?
一人の女性として愛する人と深紅のヴァージンロードを歩きたくない訳がない。
それが世界共通の幸せだと私は思う。
結婚して子供を産んで幸せな家庭を築いて、それが最高級の女の幸せ。
けれど、私にそれは無理そうだから。
いつか世界が落ち着いて、もしあなたの隣に他の誰かがいたとしても。
今と変わらず笑い合えたらいいね。
それが今の私が描く未来のかたち。
辛くないと言うと嘘になるけど、・・・私は願っている。
あなたの幸せをただ、ただ。一身に。
あなたは私の大切な人だから。
あなたは私に大切な気持ちを与えてくれた。
人を愛するという気持ち。
だから、あなたは自由になって・・。
永遠にあなたを愛します。
カガリ・ユラ・アスハ
10  夢に描いたいつまでも続く幸せ
(運命後)


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