あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  意地/貴族





「はぁ・・はぁ」

見慣れた廊下を通り抜け、階段を駆け上る。
この家の構造は頭の中に入っていた。
昔はよく遊びに来ていたから。
いつの頃からか、・・いやいつからなんて分かりきっているのだ。
自分のせいなのだから。
俺達の友情が崩れた時からだ。

「カガリ!!」

一番奥の扉を勢い良く開けると、そこには見慣れた姿があった。
カガリ・ヒビキ。
俺の幼馴染でヒビキ家の長女だ。

「・・・アスラン、様?」

様と呼ばれるのに胸が痛む。
もう様付けで呼ばれ始めてから随分経つのに。

「・・・カガリ、・・が・・婚約したって聞いた」

荒い息を押さえながら言葉を紡ぎ出した。
目の前のカガリは変わった様子はなく、
首を縦に押し倒し肯定を表した。

「・・・本当なのか・・?」
「・・うん」
「・・・誰と?」
「ユウナと」

その名を聞いたとき頭を殴られたような感覚を覚えた。

「何で!?」
「・・プロポーズされたから」
「じゃなくて」
「・・嫌いじゃないから」
「だから!」

嫌いじゃなくてプロポーズされたら誰にでも嫁ぐとでも、
いいそうなカガリに頭を押さえたくなった。

「・・・誰に聞いたんだ?」
「・・・・・・・・・、
ラクスとミーアが噂してた」

カガリは納得言ったように小さく頷いた。

「カガリ、俺は真剣に話を・・」
「私も真剣だぞ。
好きな人と恋愛結婚なんて甘っちょろいこと考えてなんかなかったし、
まぁユウナとならいいんじゃないかって、
・・キラも許してくれたし」

ヒビキ家は少し前に両親が事故で亡くなられて、
それ以降長男のキラが当主となっていた。
だから、キラが許すイコールヒビキ家の意志となる。

「・・・・」
「どうせ、可愛くもない私を貰ってくれるなんて言ってくれるの
後にも先にもユウナだけだろうしな・・」
「そんなことない!!」
「・・お前が言うなよな・・。
人のこと散々貶しておいて・・」
「あれは!!」
「・・・・・はぁ、やけに突っかかるなお前?」
「・・・・・・・・・・、俺にしておけ!!」

自分にしては大きな声を出した方だと思う。
カガリをあんな優男にやるくらいなら俺が貰った方がマシだ。
寧ろ貰いたい。

「・・断わる」

カガリは目をぱちくりとした後きっぱりと言い放った。

「・・・・・」

ダメージを受けて、固まった俺にカガリは尚も続ける。

「さっき、言っただろう?
ユウナは嫌いじゃないから受けたんだ。
私はお前が嫌いだから結婚なんかしたくない。
だいたいお前キラの恋敵だろう?」
「・・そんな昔の事を」

傷ついた俺はふてくされたように言った。

「あのな、お前のせいでキラ傷心旅行にまでいったんだぞ、
それを昔のことで片付けるな!!」
「・・・・・」
「あれは、・・気の迷いで・・、
つい優しいラクスにふらふらと・・」
「・・今のでもっと嫌いになった」
「・・・」
「まぁ、ザラの名はちょっと欲しいけどな」
「だろ、だろ!!」
「・・お前プライドってものはないのか」

呆れたようにカガリは言った。

「今は形振りかまってられないから」
「・・・アスラン様。
今まで私にしてきたことを胸に手を当てて考えろ」
「・・・っ」

そう言われると痛い。
割と酷いことをしたむちゃくちゃ酷いことをした。
泣かせもしたし怒らせもした。
カガリは可愛いからいろんな男が寄って来る、
カガリに自覚して欲しいと思って言った事が裏返って裏返って悪口になった。
・・昔の自分を本当に殴りたい。

「お陰で図太くなったけど」
「・・・今までしてきたことは本当に悪かった。
心から反省している。
心を入れ替えますから俺と結婚してください」
「!」
「・・・・」
「・・美形って得だよな・・・///」
「・・カガリ?」

カガリは小さく深呼吸をした。

「私はお前が嫌いなんだよ。
めちゃくちゃ嫌いなんだ。
キラを傷つけてラクスを傷つけて、しかも女たらしだし。
いつも私の悪口ばっか言うし。
で、いきなり結婚しようとか言うし。
訳分かんないし」
「・・うん」
「何でそこで『うん』なんだよ」
「・・うん」
「・・・・、聞いてないだろう」
「聞いてるよ」
「・・・・聞いてない。
アスランの気持ち聞いてない」
「・・・アスランって・・」
「何だよ」
「いや、・・」
「・・帰る」

そう言ってカガリは部屋を出ようとした。
帰るも何もここがカガリの家なのに。
アスランはそう思いながらもカガリを追いかけた。

「好きだ、カガリが好きだ/////!!!」
「!」

廊下に出たカガリは後ろを振り返った。
自分から嗾けたくせに言われるとは思ってなかったらしい。

「返事が欲しいんだけど」

アスランは一歩一歩カガリとの距離を縮めていった。

「・・なんでそんなに余裕なんだよ」
「返事」
「・・ユウナのとこに謝りに一緒に来いよ」
「うん!」

それはYESの意。
アスランは嬉しくてカガリを抱きしめた。

「アスラン///!」
「アハハ」
「ちょっと、///!」

もがくカガリをより一層強く抱きしめて腕の中に入れた。
カガリは暫くして諦めたのかもがくのを止めた。

「優しくしろよ・・」
「・・・それはどういう意味で?」

深読みをしたアスランはカガリにそう尋ねた。

「私に悪口とか言うなって意味だけど・・」

カガリは首を傾けてそう言った。
このときアスランはちょっと男避けをし続けていた自分を褒めた。

「・・約束する」
「うん」

絶対もう傷つけないから。

ずっと傍にいて・・。



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