あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  人魚 05


人魚




「キラは人魚姫って知ってるか?」
「もちろん。
御伽噺でしょ?」
「うん」


キラとカガリは放課後。喫茶店でお茶をしていた。
カガリはキラに全てを話そうと思った。
もしかしたらアスランの命を奪う以外に私が生きる方法があるかもしれない。


「海面から船の上にいる王子様に一目惚れし、
溺れた王子を助けた人魚姫。
王子に一目会いたいと人間になり、その代わり声を失った。
いざ、その王子に会うと助けてもらったお姫様と結ばれていて。
恋叶わぬ人魚姫は泡となって消える。
大まかだけどこんなんだよね」
「本当にいるんだ。人魚って」
「え?」
「私の母親は人魚だった」


目を見開くキラにカガリは笑った。
信じてもらえるだなんて思ってない。
だけど、これを言わなきゃ先に進めないだろうから。
カガリは淡々と先を話した。


「ただ私の母の場合は恋を叶えたってこと。
けど、その娘である私達には呪いが掛かった」
「呪い?」
「今まで私はその呪いを恋を成就させないと泡になって消えるものだと思ってた。
けど、ラクスは現にキラ。お前との恋を成就させてる。
何の問題もないだろ?
けどラクスは泡になった・・」
「っ・・ちょ、ちょっと待って!!
僕、ついていけないんだけど!
ラクスが人魚!?泡になったって!そんなの」
「信じられない?」
「・・うん」
「じゃあ、止める?」
「・・・止めない。ごめん。最後まで話して」
「うん・・」


カガリは頷いて、コーヒーを口に含んだ。
深呼吸をして話を再開する。


「正確には私達は人魚じゃなくて人と人魚の間に生まれたハーフ。
てか、人魚って魚と人の間の存在なのにそれすらも半分って。
クオーターってことなのかな・・」
「4分の1が魚の血か。なんか面白いね」
「うん。
とはいっても母親は人魚を止めて人になったんだから、
私達は人とほとんど変わらない、ただ違うのは」
「違うのはその呪いだけ?」
「うん。
そして私は思い違いをしていた。
呪いは私達、人であらざるものがこの地にいることを拒む呪い。
人魚に魂はなく。からっぽの存在。
そんな存在が地にとどまるには魂が必要。
それは人魚が愛した人の魂。
つまりそれは愛した人の命を奪うこと・・。
私達はこの地にいることがまず罪なんだ・・」
「うわー。グロッ」
「だから、たぶんラクスもキラの傍にいられなくなった」
「うん。そうなんだろうね。
だから自分のことを化け物だなんて。
ようやく納得がいった。
そしてラクスは御伽噺のように泡になって消えたんだね。
王子である僕を殺せばその命は助かったのに・・」
「・・・・キラ、自分のことを王子とか言ってて恥ずかしくないか?」
「あっ・・・/////////
いっ、いいでしょ、そうだったんだろうから。
・・なら、カガリの王子はやっぱりアスランだよね〜」
「・・うん・・//」


照れていいのか、落ち込めばいいのかカガリは対応に困ったが。
赤くなってしまう頬をカガリは止められなかった。


「これはちょっと厄介だよね。
アスランを殺す・・・か。
アスランの魂を奪う・・・か。
・・・・・。
・・・・・。
ねぇ、カガリ?」
「何?」
「アスランの魂を奪うって何も殺すことじゃないんじゃないかな?」
「・・・・え?」
「例えば、その人に恋をすることでも心を奪われたっていうよね?
魂を貰うって実は殺すことじゃなのかも・・」
「・・・けど、両思いになることじゃないって魔女が・・」
「魔女って、そんなのまでいるの!?」
「・・うん」


まじーとキラが頭を抱える。


「(なんと非日常的なファンタジーなんだ)
その魔女はアスランを殺せってちゃんと言った?」
「・・・ううん。
たぶん言ってない。魂を奪うってことだけで。
けど、両思いになれば呪いが解けるなんて人間が勝手に考えたことだって・・」
「けど、あながち間違いじゃないかもしれない。
魂を奪うか・・・。
そういえばさ、カガリ」
「ん?」
「消えちゃう瞬間っていつなの?」
「・・・・・私は後半年って言われた」
「けど、それって結構アバウトだよね」
「声」
「え?」
「ラクスの場合それが声だったんだ。
そして私の場合は聴力。
きっとそれが目印になってるんだ」
「そうか・・、カガリ今は?」
「うん、音がときどき聞こえなくなる、
たまに会話でも全く聞こえないときもある・・」
「そっか、急がないとね。
今から半年、10月までに決着着けないといけないってことだね」
「・・うん」


数字にされるとそれが本当に真実味を帯びてやってくる。
私はそれまでにしか生きられない。


「大丈夫、カガリ。
きっと助かる方法、絶対あるよ!」
「・・うん!」


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