あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  人魚 01


人魚




人魚姫。
ほとんどの人が知っている御伽噺。
悲恋で終わることが多いそれ。
けれど、恋を叶えて人と結ばれた人魚だっている。
そう、だってそんなふたりの間に生まれたのが私なのだから・・。


ミッドナイトのパーティーに私はそこにいた。
真紅のドレスを着て、胸はどきどきと高鳴る。
だって今日私を誘ってくれたのは片思いしている彼だから。


「カガリ、よかった来てくれたんだね」


私は顔を真っ赤にして頷く。
手に持つカクテルをぎゅっと強く握る。
緊張して上手く言葉が出ない。


「そのドレス、よく似合ってる。
凄くかわいいよ・・」


私は嬉しくて顔を上げる。
そこには優しそうな顔で微笑む彼、アスランの姿。
そのアスランも正装でいつもの学校で見る姿じゃなくて、
カガリの胸は高鳴った。


「ア、アスランも・・・・にあっ「アスランいた!!」
「もう、アスラン。どこいってたのよ。私探してたんだからねぇ〜」
「アスランさん。今日お招きいただきありがとうございます」


そこに現れたのは同じクラスのルナマリア、ミーア、メイリンだった。
彼女達は露出が高く色目かしい衣装に身を包んでいた。
そして自らの胸を強調するミーアに、積極的にアスランの腕絡みつくルナマリアに、
かわいらしくアスランに抱きついて上目遣いで迫るメイリン。
なんだ、誘われたのは私だけじゃなかったんだ・・。
カガリはそのことを残念に思った。
皆、人目でアスランのことが好きなんだと分かる。
アスランも満更ではないようで顔を紅く染めている。
一緒にダンスを踊りましょうという彼女達に促されてアスランはそちらに向かう。


「あの、カガリ!」


カガリはにっこりと笑って、手を振った。
いってらっしゃいと。
そしてカガリは早足でその場を去った。


・・*・・


カガリはパーティー会場を抜けて、海に出た。
岩場に座って潮風を感じる。
夜の海は静かでとても気持ちがいい。


「ふぅー」
「カーガーリ、何やってるの?」
「わっ、フレイ。びっくりした」


肩をトンと叩かれて振り向くとそこには一人の女性の姿が。


「こんなところで何やってるの?
アスラン君にパーティーに誘われたって今日嬉しそうに出かけたじゃない」
「・・私だけじゃなかったんだ」
「・・・そんなの当たり前でしょ?」
「え?」
「パーティーなんだもん。カガリだけじゃない。
色んな女の子や男の子が集まる。それがパーティーなんだから。
アスラン君だって色んな人に声を掛ける」
「・・」
「だから、カガリはそれを落ち込むんじゃなくて。
私も誘えてもらった、だから頑張らなきゃって思わなきゃ。
それに脈ナシだったら誘うことすらないわよ。
だからこれからどうなるかはカガリの努力しだいでしょ?」


フレイは微笑んだ。
その笑みは幼い頃からカガリが大好きな笑顔。
ほっとするし何より勇気をくれる。


「フレイ、うん。
そうだな・・、私アスランをダンスに誘ってみる」
「うん、頑張って」
「フレイは?どうしてこんなところに?」
「うーん、なんか知らないけど。
ここに来ると落ち着くのよね。
あれかしら、私達の血に流れる人魚の血ってやつかしら?」
「なっ!」
「大丈夫よ。人なんていないから。
それに私達が人と人魚のハーフだなんてこと言って誰が信じるの?
それに今日は4月1日よ。
皆冗談だって思うわよ」
「そうだけど〜」


そうフレイは私のひとつ違いの妹。
そして私の母親は人間に恋した哀れな人魚。


「第一、私達別にどっからどうみても人間だもの。
別に海水に浸かったからって足が尾ひれになるわけでもないし」


そう、私達姉妹はどこからどう見ても普通の人間。
けれど、たったひとつ私達姉妹が人間と違うことは。


「呪いが掛けられていること」


私達姉妹にはもうひとり姉がいた。
けれど、彼女はある日突然声が出なくなり、そしてその数日後失踪した。
唯、海岸で姉の服が残っていただけで。
母は何も言わなかったが、私達は分かっていた。
姉のラクスは泡になって消えたのだ。
あの人魚姫の童話のように。
叶わぬ恋に胸焦がれて。
どうやら、一途すぎる私達に掛けられている呪い。
それはきっと愛する人に恋焦がれた瞬間声を失い、
そしてその恋が叶わぬとき泡になり消えてしまう。


「やっかいよね〜」
「うん」


私達姉妹はもうすぐ18歳になる。
それは姉のラクスが消えたのと同じ歳。


「カガリ、消えないでね」
「・・・うん」
「ラクスみたいに死なないで。
もしそのときが来たら教えて」
「うん・・」


フレイは私が消えることを脅えてる。

私はそっと微笑んだ。
私達に何も言うことなく消えてしまったラクス。
ラクスはどういう思いだったのだろう。



「じゃあ、フレイ。

アスランのところ行ってみるな」

「うん、いってらっしゃい」



カガリはにっこり微笑んで、駆け出した。



「あっ、カガリ。

相談したいことがあるから帰ってきたら私の部屋に来てねー」



フレイはふと思い出してカガリに向かって叫んだが、カガリは気づくことなくそのまま走り去った。



「あれ、カガリ聞こえなかったのかな?

今日風が強いからかな?」



フレイもカガリも気づいてなかった。

異なる仕様で呪いは確実に近づいているのだということを・・。




アメリカのホームドラマみたいなテンションでやりたい(笑)。
アスカガとラクキラフレメインです。


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