あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  私の幸せ/王宮


私の幸せ

「婚約、おめでとう」
「・・ありがとう」


噴水に座っていた私に聞こえてきたのは馴染みのある声。
私はにっこりと微笑んだ。無理矢理に。


「隣、いい?」


私はコクリと頷いた。


「あんなに小さかったカガリが結婚か・・」


男は笑った。


「う、うん・・」
「あ〜、カガリにまで追い抜かされるとはなぁ」


目の前の男はアスラン・ザラ。
隣国の第二王子だ。
年は私より5つ上で、髪は透き通るような藍色。目は深く鮮やかな翡翠色。
隣国一と謳われる美貌と知性は正に才色兼備。


「しかも、相手が兄上だしな」

「・・・」


本当はあなたがよかったなんて冗談でも言えない。
カガリは口を摘むんだ。


「イザークはあれで結構優しい、いい奴だから幸せにしてくれるよ」
「うん・・」
「・・・」
「なぁ、カガリ」
「?」
「こんなこと婚約した今の君に聞くことじゃないけれど、・・君は今幸せ?」
「・・え?」


突然の思い人の言葉にカガリは慌てて顔を上げた。
そこには真剣なアスランの瞳があった。
・・目が逸らせない。そっと私の手に、大きいアスランの手が重なる。


「・・・っあ」


顔が火照る。


「君はパーティーのときもずっと浮かない顔してる」
「・・・」
「無理しなくても、いいと思う」


プチン


頭の中で何かが切れる音がした。


「・・っ何だよ、それ!!」
「カガリ・・?」
「無理するに決まってるだろっ!!
お前の前なんだから!」


ドレスの裾がカガリの動きにフワリと揺れる。
あまりにも柔らかく揺れる、今の自分の心情とは真逆のドレスの動きを見てカガリは息を吐いた。


「俺の前だからって何んだよ・・それ。
関係ないだろう、俺は・・?」
「・・関係あるんだよっ!!
・・・わっ、私は」


もう言ってしまおうと思った。
イザークと結婚したら私はこの人と家族になる。
その前に吹っ切ってしまおう。


「アスランが好き・・なんだから・・」
「!」
「だから、お前に見られてると思うと無理してでも笑うだろう?
迷惑かけたくないから・・」


カガリはそこまで言って息を吐いた。


「それと、関係ないって何がだよっ!
元々私の婚約者候補はお前だろっ」
「・・・あっあれは、!」
「あれは何だよ」
「父上に聞かされて、政略結婚だと思ったんだ。
だから、立場の強い俺が断って置かないとカガリがって思って・・」
「そして、それはイザークに回ってきた」
「っ!」
「どうせ、ザラの姓になるならアスランの妻になりたかった・・」


カガリは気を抜いたら溢れだしそうになる涙を必死に堪えた。
カガリは呆然とするアスランに儚げに微笑んだ。


「・・ごめん。
お前を困らせたくなかったのに。
迷惑かけちゃったな。」


カガリは返事をしないアスランを一瞥した後、アスランに背を向けた。


「じゃあ、イザークのところ行ってくる。・・ぇ!?」


心配してるかもしれないから・・と続くはずだった言葉は体を包む温かいものに阻まれた。


「・・あうか?」
「え?」


耳元で囁かれる声にカガリの鼓動は跳ねる。


「まだ、間に合うか?」


今度ははっきりと聞こえた言葉。
・・嬉しい。


「馬鹿じゃないのか?」
「そうか?」


アスランはしらっと言った。


「今日私はイザークと婚約したんだぞ」
「それでも、カガリがまだ俺を好きだと言ってくれるなら取り返すよ」


そう言って強く抱きしめられる。
その温かいぬくもりに涙を流す。


「・・っふ・・」
「カガリ?」
「・・イザークが別に、悪いわけじゃないのに何だよそれ取り返すって」
「うん、そうだな」
「・・すき・・、私、アスランが好きです////」
「うん、俺も君が好き。
今気付いた」
「・・///」


こういうとき何と言えばいいのだろう。
カガリは分からなくて唯、回されるアスランの腕をそっと握って涙を流した。


「兄上には俺が話をつけるから心配しないで」
「!!えっ、だって悪いのは「俺だろう?
元はと言えば俺があのとき断ってなければこんなことにはならなかったんだし。
それに、カガリがああ言ってくれなかったら自分の気持ちに気付かず、ずっとモヤモヤしてた。
だからありがとう」
「・・・///」
「本当はカガリがイザークと結婚するってこと自体嫌だったんだ」
「・・幸せにしてくれるって人に言ったくせに?」
「カガリの前ではいいお兄ちゃんでいたかったからな」
「・・大好きだよ、お兄ちゃん☆」
「・・・クリーンヒットだ///」
「変態」
「五月蝿い///」


アスランはカガリを自分の方に招いて強く抱きしめた。


「ア、アスラン///」
「こんな、遠回りになったけど、君が好きです。
俺と結婚して頂けませんか?」
「・・はい!」


カガリは涙を拭って答えた。
それはアスランが今まで見た中で最高の笑顔だった。


「ありがとう///」


抱きしめる力を弱めて、アスランはカガリを見つめた。


「目、瞑って」
「・・・ん」


きゅっとカガリは目を瞑った。


「(可愛い、やっぱりちゃんと取り返さないとな)」


アスランはそんなことを考えながらカガリの唇に深く口付けた。
それはまるで永遠の誓いの様に――・・。




携帯で打って、ブログにあげたやつを持ってきました。
イザークが当て馬ですが、お気になさらずに。
個人的にイザークには正妻がいるような気がします。シホとか。
だからカガリは側室になる予定でした。
うん、アスランの正妻になって幸せになるんだよカガリ・・と思ってみる。



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