ラズベリー/中学生
今でも思う。
あのとき素直になって自分の思いを伝えれたらって。
そしたらきっと・・。
ラズベリー
「ミーアはアスランのことが好きなのか?」
鈍い私が気づくくらいミーアは分かりやすくて、放課後の教室で聞いた。
ミーアは驚いた顔をして、顔を真っ赤にさせて「うん」と小さく頷いた。
親友のミーアの思い人が彼だと知った。
私は素直に恋するミーアを応援した。
「頑張れ」
と。
だってそのときは自分もアスランのことが好きなんて考えもしなかったから。
「カガリ。聞いてるか?」
「あっごめん」
声の主はため息をついた。
私にとってアスランはいわゆるという男友達という奴で、
勉強が苦手な私は頭がいいアスランに勉強を教えてもらうことも多々あった。
「ここはこの公式を当てはめたらいいんだよ。そしたら答えがでるから・・・」
「あっそうか。けどここが求まらないぞ」
数学の問題集を開けながら教えてくれるアスランを見ながらフッと思った。
アスランは優しいし、確かにかっこいいし頭もいいし言うこと無いよな。
「ここは次の公式を応用したらいいんだよ」
「・・・・・・あっ出来た」
「だろ」
と言いにっこりと笑った。
「・・・・・////」
アスランの笑った顔は反則だと思う、たぶん簡単に女の人を落とせると思う。
そう思うぐらいアスランには色気があった。
・・私だって照れちゃうし。
ミーアもこれに落ちたんだろうな。
・・・・・。
カガリはミーアのことを思い出してなんだか罪悪感でいっぱいになった。
ミーアはアスランのことが好きで。
私はそれを知ってて。
なのにアスランと二人でいる?
「・・・あのさ、カガリ今度の研修りょ・・っ!!」
「ごめん私帰る」
カガリはすぐさまきびすを返して教室を出て行った。
「・・・話ぐらい最後まで聞けよ」
自分以外誰もいなくなった放課後の教室でアスランはぽつりと呟いた。
それからカガリはアスランを避け始めるよになった。
・・*・・
季節が変わって2月になった。
そして今日は研修旅行・・とは名ばかりの俗に言う卒業遠足だ。
つまり遊園地!!
先週の班決めでアスラン達と一緒にいくことになってる。
なんだか少し憂鬱だ。
私が避け始めてからなんだかアスランとの関係が微妙だ。
まぁ仕方ないけど。
カガリ自分の心を占めていた暗い思いを消すためブンブンと頭を振った。
・・・楽しくない。
前から楽しみにしていた遠足なのに。
アスランとミーアを一緒にいさせてあげることばかり考えて全然楽しめてない。
「カガリ。あれ乗らねぇ」
沈んでいたカガリを見とめてか同じく班のシンが声を掛けて来てくれた。
「うん。いいぞ」
「じゃあ。アスランとミーアはちょっと荷物見といて。」
シンは自分の荷物とカガリの荷物をアスラン達が座っているベンチに置いた。
「ああ」
「わかったわ」
二人が頷くのをみてからカガリ達はアトラクションに向かった。
「で、何があったんだ?」
しばらく歩いたところでシンがカガリに言った。
「?」
「とぼけるなっつうの。アスランとに決まってんだろう」
「別に何も無いよ。・・・ただちょっと身を引いてるというか」
「?」
「ミーアのこと応援したいなって思って。
・・・・けどな、変なんだけどアスランがミーアと話してたら嫌だなって思って」
そうなのだ。
ミーアのことは応援したいと思ってるし、応援してる。
なのに楽しそうに話してる二人を見てると胸が痛くなる。
「・・・なんてベタな」
シンが呆れたように言った。
「え?」
「そんなの、カガリがアスランを好きだからに決まってるだろう?」
「・・好き?私がアスランを?」
「そう。今のカガリの思いの正体は嫉妬って奴」
「嫉妬?」
オウム返しをしてくるカガリにシンは嫌な顔をせず答えていった。
「俺だって普通にするし、嫉妬。
彼女が他の男と話してるのみてると嫌だしな」
「彼女いるのか?」
「えっ・・・////ああ///」
まさかそっちに話が行くと思っていなかったシンは慌てて答えた。
「そっか」
そっか、シンには彼女がいるんだ。
そっか、私はアスランが好きなんだ。
そっか。そっか。
「シン。早く行こう」
カガリはなんだか晴れやかに笑った。
「えっあうん」
シンはカガリの笑顔に少し驚きながらも
いつものカガリに戻ったような気がしてよかったってそう思った。
シンとアトラクションに乗ってアスラン達のところへ戻る途中、雪が降ってきた。
今日そこまで寒くないから手袋とかなくて平気かなと最低限の暖のみを取り、朝、家を出たカガリは思わぬ誤算だった。
「雪、降ってきたな」
「本当。寒い」
カガリ達は小走りでアスランのいる場所に戻った。
「お帰り」
「「ただいま」」
カガリとシンはアスランのお帰りににっこりと笑って返した。
「あれ?ミーアは?」
ミーアの姿が見当たらないのでカガリは心配になって聞いた。
「トイレだって」
「そっか」
カガリは少し前みたいにアスランと普通に喋れていることをシンに感謝した。
「エヘヘ・・///」
「?」
にっこりと笑うカガリを見てアスランは困惑した。
「くしゅん」
カガリは小さく、くしゃみをした。
寒い・・。
雪が降っていてさっきより寒くなっている気温がカガリを刺激する。
手袋してきたらよかった。手が冷たい。
カガリは強くコートを握った。
それをみかねて、
「ほら」
とアスランは自分の手袋をカガリの手に嵌めてやった。
「ありがとう・・///」
「どういたしまして」
じんわりと手が暖かくなってくる。
アスランの手袋は少し大きくて、なんだかアスランの匂いがする気がする。
・・・・。
「カガリ!」
するとトイレに行っていたミーアが戻ってきた。
あっ・・・。
カガリはミーアの姿を見て、嵌めていた手袋をす外した。
「ごめん。アスラン返す」
「え?」
アスランは突然帰ってきた自分の手袋に悲しくなって傷ついた顔をした。
カガリはそのアスランの顔を見て、悲しくなったが、見ていない降りをした。
それからせっかくシンの助言を受けたのに再び
カガリとアスランの間には微妙な空気が流れた。
好きだって気付いたって・・。
もう遅いよ。
カガリは再び冷たくなった手を見て思った。
・・*・・
それから少し経って私たちは中学を卒業した。
3月の桜が少しだけ咲いている。
綺麗。
今までずっとカガリはアスランと話せないでいた。
ミーアはアスランに告白をしたみたいだけど、断られたらしい。
こんな可愛い子振るなんてって思ったが、良かったって思う私もいた。
そんな汚い自分が凄く嫌だった。
そんなことを考えていたら後ろから声が聞こえた。
「カガリ!」
「・・・アスラン?」
「よかった帰ってなくて」
アスランは安心したように息を撫で下ろした。
「?」
「これ」
アスランはそう言ってカガリの手を取り自分の拳を置いた。
手を離すとコロンと何かがカガリの手のひらで転がった。
・・・ボタン?
「カガリに持ってて欲しいんだけど。ダメかな」
「・・・ううん」
カガリは首を大きく横に振った。
「ありがとう。凄く嬉しい」
「そっか。よかった」
アスランはカガリの表情を見て笑った。
・・・・・。
アスランの笑顔を見てカガリは思った。
今ならまだ間に合う?
今なら好きだって言える?
「・・・あのな」
大丈夫遅くないよ。
桜がそう言ってくれた気がした。
「私、アスランのことが――――――」
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