あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  本能/高校生


「アスラン」
「・・・キラか」


学校の屋上でアスランは煙草を吸っていた。


「ちょっと、また吸ってるの?体に悪いよ」
「・・俺の勝手だろう」


アスランのめんどくさそうな答えにキラはため息をついた。


「また、別れたの?」
「ああ」
「二週間だったね。今回はいつもより短く無い?」


アスランは必要以上にモテた。
そしてアスランはいろんな女の子と付き合った。
けれど、それは長続きしない。
続いても一ヶ月が限度だ。


「・・・・別に、いつもと一緒だろう」


アスランにとってはどんな個性をもった子でも、
ただの女なのだ。
諦めたように言うアスランを横目にキラはまたため息をついた。


「俺にとっては二年も続くお前らの方が不思議だよ」
「そう?当たり前でしょ。ラクスかわいいもん」
「・・・惚気るなよ」
「ええいいじゃん別に」


こういう話をしたときの嫌そうな顔はちょっとアスランには珍しかったりする。
いつもクールに決めているアスランが表情を豊かにするのは珍しい。
ただ僕もまだ彼の笑顔を見たことは無いのだけど・・・・。



本能



煙草を吸い終わり、アスランはキラと一緒に屋上を出た。
室内は風が無い。
アスランは風が好きだった。
何故だかは分からないが・・。
だからアスランは室内にいるのを拒む。



「キラーーー!!!」
階段を下りたところで大きな声が響いた。
遠くにあった影はこちらに近づきキラに抱きついた。


「・・カガリ!」


キラは目を大きく見開いた。


「キラ!会いたかった。元気だったか?」
「うん。元気だったよって・・・え?それうちの制服?」


カガリはキラから離れにこりと笑った。


「うん。今日転校してきたんだ。よろしくなキラ」


カガリは短めのプリーツのスカートをくるりと回した。
そして、バイバイと手を振って去っていった。


「嵐のようだったな」
「・・うん」


二人は唖然とした。


「キラ?あの子は?」
「――――――僕のい・・・」


キラは少し考え、にこりと笑った。
嗚呼、さっきの子と似てる。
アスランはふと、そう思った。


「僕の恋人だよ」
「は?」
「だから、僕の恋人。手、出さないでね」
「ちょっと待て、お前ラクスはどうした」
「だから二股中。ラクスには内緒ね」


キラは酷く真面目な顔でそう答えた。


「・・・・」


アスランは先ほどよりも唖然とした。
キラはアスランに嘘をついた。
・・カガリまでアスランに喰われたら嫌だもん。
正当防衛、正当防衛。
だから、許してねアスラン。
キラは心の中でアスランに謝った。




「なんだよ。キラの奴、人のことどうこういう前に自分は二股かよ」


なんだかんだで、アスランは律儀だった。
女癖は悪くても、被ったことは一度も無かった。
まぁ、俺には関係ないか・・。
ふと笑顔の似合う、さきほどの女の子を思い浮かべた。
カガリか・・。
アスランの胸は高鳴った。


関係ないよな。


次の日にアスランは偶然カガリに会った。


「カガリ・・」


アスランは至極当たり前のように彼女の名前を声に出していた。


「え?」


小さいながらもその声は本人にも届いていて、彼女は振り返った。
いきなり振り向かれたアスランは少し驚き目を背けた。


「・・・・えっと?」


カガリは不思議そうな顔をし、思い出したようににこりと微笑んだ。


「キラの友達だよな」


キラの友達という彼女の言葉になぜかショックを受けながらもアスランは頷いた。


「初めまして、カガリです」
「アスラン・ザラです」


アスランは胸の高鳴りを隠し平常に言葉を交わした。


「あのよかったらさ、食事一緒にどうだ?」


カガリがそう言って指したほうには学校の食堂があった。


「いいですけど」


カガリがなぜ自分を誘うか分からなかったアスランは困惑した。


「やった!キラのこといろいろ教えてくれよな」


・・・そうだよな。
「ええ、俺でよろしければ」

「・・敬語やめないか?年一緒なんだろ?」

「えっ、あっはい」


突然そう言われ驚いたアスランはどもった。


「・・・」


カガリは敬語を使うアスランにむっとした。


「うん」


アスランはそう言った。
カガリは嬉しそうに笑った。




「キラにはラクスって言う彼女がいるんだ」


席についてアスランがまず言ったのはそれだった。
ラクスには言うなと言われたけど、カガリに言うなとは言われてない。
アスランは自分がなぜそんなことを言うのかわからなかった。


「彼女?」
「ああ」
「・・・そっか彼女いるんだ」


寂しそうなカガリの表情に自分の胸もツキンと痛んだ。
・・・いや、悪いのは俺じゃなくてキラだろ。
俺が傷つく必要はないはずだ。
なのになんでこんな罪悪感でいっぱいになるんだ。
それからアスランはその話に触れないようにカガリと話した。
けれど、キラの話をしているのは変わらなくて。
カガリが過去のキラの行動一つ一つに表情が変わるのを見てアスランはとても複雑になった。
こんなにもカガリはキラのことを好きなのに。
・・・・・フタマタ。
アスランは昨日のキラの言葉を思い出した。
アスランはキラの軽率な行動が許せなかった。
ガタン
アスランの座っていた椅子が音を立てた。
カガリは目を丸くした。
アスランは席を立つとスタスタと食堂を出てしまった。


「え?
ちょっとアスラン?」


カガリはあわててアスランの後を追いかけて行った。



ガンッ


校内中に鈍い音が響いた。


「アスラン!!」


やっと追いついたカガリは目の前の現状に目を見開いた。
アスランがキラを殴ったのだ。
キラはラクスと一緒にベンチで食事をしていたのだろう。
ラクスも目を見開きキラとアスランの両方を見比べていた。


「ちょっと何?アスラン。僕君に殴られるようなことした?」


キラは殴られた右頬を庇い、のそりと起きた。
その声には怒気が含まれている。


「お前、男として最低だ」
「・・・君に言われたく無いよ」
「なんだと!!」


起き上がったキラはアスランを睨んだ。
アスランはキラの胸倉を掴んだ。


「アスラン、止めろ!!」


現状を認識したカガリは二人の間に割って入った。


「・・カガリ」
「カガリ?」


アスランはキラから手を離した。
キラは突然のカガリの登場に驚いた。
・・・・アスランって何でカガリアスランの名前知ってるんだ。
まさか!!


「何、いつのまに知り合ったの?アスランとカガリ」
「・・・・」
「なるほどそういうこと」


殴られた理由を勘付いたキラはズボンについた砂を払った。
仕方ないか。
まさか、アスランに殴られるとは思ってなかった。


「アスラン。改めて紹介するね。
僕の妹のカガリ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


アスランは目を点にした。


「えっ?アスラン知らなかったのか?
私の名前知ってたから、キラから聞いてるものと」


驚いたアスランにカガリは近寄ってそう言った。
真実を知って一気に力の抜けたアスランはそこに座り込んだ。


「なんだよ、それ。
俺、空回りじゃないか」


アスランは鬱陶しげに髪を掻き揚げた。


「あーもう!」
「・・・アスラン。凄く頬が痛いな」
「・・・けど、元は・・」
「ハイハイ。今回は僕も悪かったって認めるよ」
「お前。なんで・・」


アスランは攻めるようにキラを見た。


「えー?だってカガリをアスランに取られたくなかったんだもん」
「・・・・・もんってお前なぁ」


アスランはキラを怒る気が失せた。


「ところでアスラン。何でそんなに怒ったの?」
「!!」


確かにキラはともかく赤の他人のカガリを気にかけるなんて、
今までのアスランには考えられなかった。
ニヤニヤするキラの顔を見て思い浮かんだ言葉があった。
・・・・好き。


「/////」
「何?」


キラは相変わらずニヤニヤしてアスランを覗き込んだ。


「お前、カガリ取られたくなかったんじゃないのか?」


アスランは自分の気持ちを唐突に理解して、拗ねたように言った。


「まぁね。アスランって女の子を大事にしないし。
けど、今回は僕を殴るぐらいカガリのことを好きなのかなって思って、違う?」


キラはアスランの耳に口を寄せてそう言った。


「・・・違わない////」
「でしょ」


キラはにこりと笑った。


「・・・・////」


悔しいけれど、キラの言うとおりかも知れないな。


「キラ?」
「何?」
「協力しろよ」
「ええー。嫌だよ」
「いいから!」
「ハイハイ」


二人は顔を見合わせて笑った。


「ちょっとお前ら、男同士でこそこそと気持ち悪いぞ」
「そうですわ。私達も仲間に入れてくださいな」


ほったらかしだったカガリとラクスは拗ねながら言った。
キラとアスランは苦笑した。 アスランの好きな風が流れた。

大好きな大好きな。


これからアスランにとって有意義な学校生活が始まる。
アスランがキラとラクスの力を借りて、カガリに告白し。
「イエス」の返事をもらうのはもう、すぐ先のこと。


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