静かな生活(2/4)




終ったら一緒に…


その小娘の言葉を糧に、わしは自分でも驚くほどの速さで、仕事を終わらせた。



「終わったぜよー!」

書き物で縮こまった身体を解すように、両腕を大きく伸ばす。
ふと、外に目を向けると、青く澄んだ空を静かに流れて行く雲が目に入った。
まだ陽の光は眩しい程で、部屋に入ってくる暖かい風が心地よく、ほんのりと若葉の薫りがする。

「あー……、こがぁにえい天気だとゆうがやき、部屋に籠もりきりで…黴が生えそうじゃ」

腕を伸ばしたまま仰向けに寝転がるが、はっとしてすぐに起き上がる。

「こがな事をしちゅう場合じゃーないが!はよぅ小娘のところに行かにゃぁいかん!」

わしは、表の静かな風景とは正反対に、ばたばたと大きな足音を立てて部屋を飛び出した。






部屋を出たわしは、ぐるぐると小娘の姿を捜し歩く。

「やる事があるとゆうちょったが、どこに居るがかぇ…」

きょろきょろと辺りを見回しながら、小娘が居そうなところを一通り捜して回るが、まだ見つからない。

「残るは、庭じゃな…」

縁側に回ると、やはり小娘はそこにいた。

こちらに背を向けているのでわしには気付いておらず、時折空を仰いで頭上を行く鳥を目で追いながら、楽しそうに乾いた洗濯物を取り込んでいる。

その姿を見て、わしも自然と笑顔になり、小娘の可愛さはやはり天下一だと想い直し、うんうんと一人頷いた。

「おぉ、そうじゃ。茶でも淹れてくるかぇ…」

一人、笑みを浮かべたまま足取り軽く台所へ向かった。









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