「こんにちは〜」
学校が終わり、部活に行くといつもなら「おせぇ」だのセンパイからの蹴り、もしくは肩パンが入るのに、今日はその気配がない。
「…あれ?」
慣れたもので、少し身構えをしていたのに攻撃がこないものだから、腑抜けした。
体育館の中を見渡すともう既に練習を始めている人がたくさんいるのに、主将であるセンパイの姿が見えない。
「よー、黄瀬、相変わらずおせーなー」
「森山センパイ!」
丁度そこにレギュラーであり、笠松センパイと同じクラスの森山センパイが寄ってきた。
「あの、笠松センパイは?」
主将であり、誰よりも練習に励むセンパイがいないというのは至極珍しいから、俺は検討がつかない。
「…あー、笠松?…えっとねー…」
なんだか気まずそうに森山センパイが俺から目を反らし、頬を人差し指でかく。
「連れてかれた、"生徒指導室"に。」
「…え!?」
海常高校でのそこは問題を起こした生徒が連れていかれる部屋で、厳しく指導されると聞く。センパイなんかが連れていかれる場所な筈がないのだ。
「なん、で!?」
「俺も詳しく知らない、ただ昼休みになんかあったんだって、」
「なんかってなんスか!!??」
「だから知らないってば!!」
森山センパイに少し怒鳴られ、我に返る。
「スイマセン…俺、センパイ迎えに行きます!!」
荷物をおいて、体育館をでる。
森山センパイが「やめとけ!」って言っていた気がするけど、気にしない。
俺は無我夢中に走った。