また、センパイを泣かしてしまった。

「…ぅ…ひっく…」

人に泣かれるのは昔から苦手だ。

「センパイ、ごめん…泣かすつもりじゃ…」

目の前で泣くセンパイを前にして、俺は戸惑ってしまう。

「泣かないでよ」

そういって優しく額にキスをし、目頭に溜まる涙を舐めるとセンパイの肩が震える。

「ごめ…」
「なんでセンパイが謝るんスか?」

大丈夫だから、と肩を優しく抱けば、うん、と頷いてくれる。
その目はなんとなく震えていた。

「…ダメだな、俺……ごめん、少し一人にさせて…?」

そんな涙ぐんだ声で言われたら断れなかった。

「わかりました…じゃあ俺、部活行きますね…?」
「うん…黄瀬、ありがと」

短くお礼を言われ、笑顔で返し、保健室をあとにする。

廊下の寒さが、身に染みた。






実際、部活に行くと言っても、バッシュを取りにいっては見たものの、思っていた以上にぼろぼろになっていた。肝心のバッシュがあーでは練習ができないから、少しさぼることにして、中庭にきた。

「黄瀬くん」

ぼけーっとしながら空を見上げていると、懐かしい声がした。

「く、黒子っち!!??」
「お久しぶりです。」

本来なら校内にいるはずのない彼が目の前にいて、俺は目を擦る。幻覚だろうか。

「別に、幻覚とかじゃないです。今日は海常高校の練習をキャプテンと監督と降旗くんと見にきたんです。」

すっかり心の中を見透かされ、あ、そう…と流す。

「でも、笠松さんと君がいなかったので、何かあったのかと思って、ふらふらしてたら君がいたんです。」

さも当然のように言うが、あくまでも他校だと言うことを忘れているのだろうか。
でも彼ならいくら出歩こうが気づかれないのだと思った。

「俺はー…まぁサボりっスよ」
「エースがそんなんでいいんですか?…黄瀬くん、それ…」

黒子っちが見つけたのは俺が持ってる、ぼろぼろになった俺のバッシュだ。

「あぁ…えっとー……」

話すのを一瞬躊躇ったが、彼になら何でも話せる気がした。自分のなかで彼を許しているところがあるからだろうか。

「俺の事を気に入らない奴がやったみたいっス、それに笠松センパイが巻き込まれてって感じっスね、まぁ色々あったんスけど、センパイが無事でよかったっスよ。」
「…本当に無事なんでしょうか?」
「え?」

突然の黒子っちの発言に思わず声をあげる。

「黄瀬くんは笠松さんのどこを見て大丈夫だと思ったんですか?何かあったのかは僕にはわからないですけど、僕はそうは思わないです。」
「く、黒子っち?」
「傷ついてないわけないじゃないですか。彼はきっと君を守りたかった、けど守れなかったって思ってるんじゃないですかね?」

黒子っちの言葉に、頷きたくなる。
確かにセンパイは、何か変だった。
急に一人になりたいといったのも、何か考えたかったのかもしれない。

「あ…俺、どうしよう、…センパイの事、分かってあげられなかった…」
「悔やんでいても仕方ないですよ。早く笠松さんのところに言ってあげてください。」

ほんの少し黒子っちが微笑んでくれたお陰で、少し元気がでた。

「ありがとうっス、黒子っち!!」
「"どういたしまして"でいいですか?」

俺はバッシュを中庭に設置されているゴミ箱に入れる。

「いいんですか、それは、青峰くんが…」
「いいんス。いつまでもしがみついてても仕方ないっスから…じゃあ俺、センパイの所に行ってきます!!」

黒子っちに手を振りながら走ると珍しく黒子っちが手を振り替えしてくれた。

今度こそ、本当にあなたを守りたい。
守らせてください。
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