※ホントのキモチ続編






おっさん湯けむり事件簿



「おっさんと一緒に温泉!でも胸が足りない?事件」から数日後。


空を走る船の上で、ある会議が開かれていた。参加メンバーは、ユーリ、エステル、ジュディス、リタ。一つしかない船室に四人が集まっていた。というより、エステルから他の三人に呼び出しがかかった。

ちなみにラピードは船室の外で見張り係に任命されていた。


「率直に言いますと…もどかしいです!」

「率直過ぎてわかんねーぞ…」

「ななしとおじさまのこと、ね?」

「ジュディス、正解です!」

「おっさんとななしがなんだっていうのよ」

「もしかしてアレか?前の…」


ユーリの言葉に身を乗り出して訴えるエステル。


「そうです、ななしとレイヴンはアレ以来温泉にも行っていないですし、ましてや何の進展もないんですよ!?せっかく想い合っている二人なのにっ!!」

「お、落ち着けエステル!」


放っておけない病重症患者のエステルは、二人のもどかしい関係にウズウズしていたのだった。


「で?何であたしたちはココに集められたのよ」

「えーっと…、何かいい案はないかと思いまして…」

「大体ガキんちょは?」

「カロルは二人の足止め役です!」

「(カロル…何やらされてんだよ…)」


ユーリは心の中で突っ込んだ。


「普通に、二人を温泉に行かせてあげればいいんじゃないのかしら?」

「でもおっさんは無理って言ってたぞ」

「だから最初は全員で行くの。その後、さり気なく二人っきりにしてあげたらどう?」

「それいいです!決定です!」

「「(早っ!!)」」








その頃、足止め役のカロルは…。


「ねぇ、少年〜。そろそろ休憩しないかい?」

「う、うーんと、後もうちょっとだけっ!」

「まぁ、いいけどねぇ。青年の方がこういうの上手いと思うんだけど」


レイヴンとななしを船室に近づけるなというミッションを請け負ったカロルは、レイヴンに特訓を頼んでいた。ななしには苦し紛れに、とりあえず見ていて欲しい!とお願いした。


『カロル君凄いですね〜、そんな大きな武器振り回せるなんて…素敵です!』

「そ、そうかな…へへ///」

「ほれ、カロル少年!脇があいてるぞ!」

「え、あ、うん!(…これいつまでやってればいいのかな…)」


その時、向こうからエステルが手を振りながら走ってきた。


「カロルー!!」

「エステル嬢ちゃん、どったの?そんなに慌てて…」

「温泉!行きませんか!?」

『今からですか?』

「今からです!」

『私はいいと思いますよ〜』

「ボクも特訓して疲れちゃった!行こうよ!」

「レイヴンもいいです?」


エステルはレイヴンにも確認をとる。


「あー、うん。まぁ、いいんじゃないの?」


いつもなら大喜びするはずのレイヴンが、イマイチ乗り気でなさそうだった。それを見たカロルは不思議そうに首を傾げる。そしてななしも、レイヴンの様子を見て不安げな表情をしていた。








ユウマンジュに到着した一行は、とりあえずロビーで落ち着く。


「やっぱこの雰囲気いいわ〜、おっさんにぴったり」

『落ち着きますよね〜』


計画を知らない二人はのんびりとくつろいでいた。


「さぁ、では…お風呂に入りましょうか…!」

エステルはそう言いながら、ななしとレイヴン以外のメンバーに目配せをした。


「「「(作戦決行…!!)」」」


和やかな温泉地に似合わぬ雰囲気で、真剣な表情の五人と一匹が頷き合った。




突然バッと立ち上がったカロルが、座り込んでいるレイヴンをぐいぐい引っ張る。


「レイヴン、行こ行こ!」

「ちょっと少年〜、そんな引っ張んなくても温泉は逃げないわよ〜?」


レイヴンはやれやれといった様子で、立ち上がった。


「カロル先生は風呂で遊びたいんだろ?」


そんな会話をしながら男性三人は脱衣所へ消えてゆく。



『私達も行きましょうか〜』


何も知らないななしも、のほほんと自ら脱衣所を目指す。するとジュディスがななしには聞こえないように呟いた。


「いいコト思いついたのだけれど…」


そして女性三人はヒソヒソ話をしながらななしの後を追った。




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