「よし、じゃあカロル先生の意見を聞こうか」

「ボクはね、やっぱりお菓子とか皆で作って渡すのがいいと思う!」

「ま、定番だな…。シュヴァーンはどう思う?」

「そうだな…、彼女達の行きたい所へ連れて行ってやるのがいいんじゃないか?」

「なるほど、それ楽そうでいいな」

「ユーリ、お返しする気ないでしょ…」

「何言ってんだ、それなら野郎同士でこんな会議しねーって。で、一応おっさんの意見も聞いとくか」

「何その扱い!おっさん折角イイ事思い付いたのに教えてあげないわよ!?」

「イイ事ってなになに?」

「ふっふっふっ…それはねぇ…」






愛しのお嬢様へ







「おかえりなさいませー」

「ちょっと青年!棒読みすぎ!」

「いいだろ別に」


ダングレストにある”天を射る重星”は普段の騒がしいものではなく、女性客ばかりの喫茶店へと姿を変えていた。


「お兄さーん!オーダーお願〜い」

「ほれ、青年呼ばれてるわよ!」

「はいはーい、今行きますよーっと…」


大きくため息をつきながらめんどくさそうに歩いていくユーリを見送ってから、レイヴンは女性客で埋まるテーブルを見渡した。


「やっぱ、俺様って天才♪」










事の始まりは、冒頭の野郎会議だった。


「しつじ…きっさ?って何だよ」

「青年知らねーのぉ?要は男共が執事に変身して、レディ達をもてなす喫茶店よ」

「でもレイヴン。それをどこでやるの?」

「ダングレストの”天を射る重星”で」

「…つまりそこを貸し切って彼女達をもてなす、と?」


レイヴン考案のホワイトデー企画「執事喫茶」。他の三人はよくわかっていなさそうな顔をしていたが、普段やる気の無いレイヴンが何故か張り切ってそう提案してきたのだった。


「あの酒場貸し切って女の子四人だけってのも寂しいじゃない?だから普通にお店としてオープンさせるってのはどうよ?」


もちろん一日だけだけどね、と付け加えてレイヴンは三人の反応を待った。


「ボク、何でレイヴンがそんなに張り切ってるのかわかった…」

「つまりたくさんの女に囲まれて金も儲けられて一石二鳥、ってワケか」

「ち、違うって!おっさんは別に…」

「下心が丸見えだな」


シュヴァーンは軽蔑の眼差しでレイヴンを睨む。


「違うって言ってんでしょ!で、どうすんのよ」

「ボクはレイヴンの意見に賛成かな。面白そうじゃない!?」

「どうするよ、シュヴァーン」

「…正直、自分の意見を推したいところだが…そうするとお前がサボリそうな気がするな」


その言葉にユーリは一瞬目を泳がせた後、笑って誤魔化した。


「おっ?じゃあ、おっさんの案で決定?」

「いいんじゃねーか?カロル先生もやる気みたいだし」

「うん!早速準備しようよ!」

「よしよし、じゃあ頼んだわよ!若人達!」

「「お前も手伝え!」」



というわけで、ユーリ・カロル・レイヴン・シュヴァーンが執事となって一日限定執事喫茶を開店したのであった。




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