「ななしも一緒に行きませんか?」

『どこへですか?』

「チョコレートの買い出しよ」

『チョコレート?…あ!』

「明日はバレンタインですよ、ななし!」







一番の贈り物





多くの人が行き交う広い通りを、四人の女性達が楽しそうに歩く。


「ななしって意外とこういう事に疎いのかしら?」

『いえ、そういうわけではないんですが…うっかりしてました』

「アンタのうっかりは今に始まった事じゃないからね」

『リタちゃんもチョコ作るんですか?』

「んなわけないじゃない。あたしは自分用に買うのよ」

「それとエステルのお手伝い、よね」


ジュディスの言葉に、リタは顔を赤くして「うるさい!」と叫ぶ。


「私はジュディスに教えてもらいながら、トリュフを作ろうと思うんです!ななしは何を作るんです?」

『そうですね〜、私は………』


ななしは色々なレシピとプレゼントする人物を思い浮かべながら考えていたが、突然ハッとした表情で何かを思い出す。


『そ、そういえばレイヴンさんとシュヴァーンさんは…!』

「甘いものが大の苦手よね、確か」

「私はあまり甘くない紅茶クッキーにしようかと考えてます」

「私はさば味噌ね」

「バレンタインにさば味噌ってどうなのよ…」


どうやらエステルとジュディスは既に考えているようだ。バレンタイン自体をうっかり忘れていたななしは、どうしたものかと頭をひねる。


『うーん…お二人には何がいいんでしょう…』

「気持ちがこもっていれば何でもいいんじゃないかしら?」


ジュディスはそう言うが、普段から何かと気にかけてくれる二人には喜んでくれるような物を渡したいと考えるななしだった。


「あの二人ならななしに石ころ貰うだけでも泣いて喜ぶんじゃないの」

「リタ、石ころはさすがに…」

「とにかく店に行きましょう?でないとチョコが売り切れてしまうわ」


うんうんと唸るななしは、ジュディスにそう急かされて足早に店へと向かった。





「たくさん買えましたね〜!」

「結局リタが一番時間かかっていたわね」

「し、しょうがないでしょ!どれも美味しそうなんだから…!」


自分用のチョコをどっさり買い込んだリタは、頬を少し赤くしながら反論する。


「で?ななしはあのバカ双子に何作るか決めたわけ?」

『バカってリタちゃん…。まだ決めてないんです、一応ユーリさん達にプレゼントする分は買ったんですが…』

「さっきも言ったと思うけれど、大切なのは気持ちだと思うわ」

『気持ち…』


ななしは抱えた買い物袋を見つめながらしばらく考えた後、パッと顔を上げた。


『そうですね!一ついい案が思い浮かびました!』

「そう、よかったわね」

「何をプレゼントするんです?」

『それはですね…』




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