いざ幽霊船へ




「いらっしゃいませー!ようこそ恐怖のホラーシップ、アーセルム号へ!」


もやもやと濃霧が広がる海の上で、雰囲気に似つかわしくない楽しげな声が響く。


「あら、前よりイイ感じになってるわね」

「どどどどどこがよっ!!!大体なんでこんなとこに来てるのよ!!?」

「しゃーねーわよ、あのお嬢ちゃんが言い出しちゃったんだから…」





とある娯楽ギルドがあの幽霊船アーセルム号を改造してイベントを開催しているらしい―そんな情報をどこからか仕入れてきたのは他でもないエステルだった。


「スゴイですよ、カロル!中が迷路みたいに改造されているんだそうです!」

「へ、へぇ…」


ウキウキと喋るエステルの横で、真っ青な顔をしてカタカタ震えるカロル。彼はユーリに助けを求めて視線を送るが、ユーリは諦めろ、といったように首を横に振った。



そして、顔を青くして硬直する者がもう一人…。


『………』

「ななし…、大丈夫か?」

「怖かったらおっさんの手、握ってていいのよ?」

『ダ、ダイジョウブデス…!』

「大丈夫そうには見えないが…」


嫌がるリタ、カロルを他所に、エステルとジュディスは入場の手続きを行なっている。


「コチラは基本二人一組のペアで進んでもらいま〜す!皆さんで決めるもよし、コチラで用意したクジを引いていただいても結構ですよ〜♪」


案内人はニコニコとそう説明する。


「クジ引きにします?」

「そうね、その方が面白そうだわ」


楽しそうにドンドンと話を進める二人。その間、ななしはぎゅっと手を握りながらブツブツと小声で何かを呟いていた。


『大丈夫です、オバケなんて怖くないです怖くない怖くない…』

「ななし」

『ひゃあああっ!!?』


半分涙目になりながらそう唱え続けるななしにシュヴァーンが声をかけると、彼女は驚いて叫び声を上げた。


「す、すまない!」

『あぅぅ…シュヴァーンさんでしたかっ…!だ、大丈夫ですよ…!』

「…ななしは前に一度来たことがあるんじゃないのか?」

「そういや、あん時もこんな感じだったわねぇ。しかもななしちゃんたら青年にくっ付いちゃって俺様悔しかったの覚えてるわ…!」

「ユーリにだと…!?…あ、いや、それは置いておいてだな。ななしはここで待っていた方がいいと思うんだが…」

『へへへ平気ですよっ!?こ、怖くなんてないですっ!』


明らかに怯えているななしに双子は心配そうな表情をする。


「ななし〜!クジ引いてください!」

『は、はいっ!』


そして、双子が止める間もなくななしはクジの入った箱に手を入れた。レイヴンとシュヴァーンも仕方なくクジを引いて、三人同時にその紙を開いた。


55P→レイヴン

57P→シュヴァーン






[#next]>>

index;