「ユーリ!!新しい仕事、見つけてきたよ!」

「やるじゃない、少年〜。今回はどんなの?」

「まさかネコ探し、とかじゃないよな?」

「その…まさかなんだけど…」

「「……」」







ケーブ・モックで森林浴



「ネコ探しぃ!?しょっぼいわねー」

「リタ!そんなこと言っちゃダメです!依頼人の方はきっとすごく心配されてますよ!」

「んで、どこ探すのよ?ダングレストなら全員でちゃちゃーっと探しましょー?」

『そうですね、皆で探せばきっと見つかりますよ』


リタは、あたしも!?と文句を言っていた。カロルは皆の顔を見ると苦笑いしながら場所を告げる。



「場所は…ケーブ・モック大森林なんだ…」


「「「えええ!?」」」



意外過ぎる捜索場所に数名が声を上げた。


「どこかのギルドの人が、その森で首輪をつけたネコを見たんだって」

「おいカロル…あんなデカイ森でネコ一匹探せってのか?」

「わ、わかってるよ!でも…依頼人の女の子、泣いてたんだ…だから…」


ユーリの言葉に、カロルは俯いてそう呟いた。


「義を持って事を成せ、ね?」

『カロル君、虫が苦手なのに…偉いです!』


ジュディスとななしが優しく笑ってそう言うと、カロルは顔を上げて表情を明るくした。


「しゃーないわねぇ〜。虫はリタっちが特製の殺虫剤でなんとかしてくれるわよ」

「ホント、ガキんちょに甘いわ…アンタ達」

「ゴメンね、皆…」

「何言ってんだよ。首領がその子の為に何とかしたいって思って受けてきた仕事だろ?もっと胸張れって」


ユーリが、な?とカロルに声をかけると、カロルはうん!と大きく返事をして気合を入れた。









「相変わらずスゲェ森だな、ここは」

「大森林、って言うぐらいですからね」


ケーブ・モック大森林に到着した一行は、入口の開けた場所で輪になって相談を始めた。


「で?まさかここを全員でゾロゾロ歩いて探すんじゃないわよね?」

「うん、それは効率が悪いから手分けして探そうよ」

「それならこれで組み合わせ決めましょ?」


そう言ってジュディスが差し出したのは折りたたまれた八枚の小さな紙だった。


「アンタどんだけ用意いいのよ…」

「必要かと思って」



そして全員が紙を引き終えると、一斉に開く。


「お、俺は一番だからエステルとか」

「はいっ、頑張りましょうね!」

「私はリタとペアね」

「魔物はアンタにまかせるわ」

「僕…ラピードと?」

「ワフン!」

「おぉ!おっさんはななしちゃんと〜!vv」

『よろしくお願いします!』


そんなわけで、ユーリ&エステル、リタ&ジュディス、カロル&ラピード、レイヴン&ななしの四組が決定。


「よし、じゃあ手分けして探そう!」


凛々の明星の首領カロルの号令により、それぞれが四方に散った。







『でも、この森でネコさんを探し出すのは大変そうですね…』

「そうねぇ…木の実とかはいっぱいあるから食料には困らないと思うんだけど…」



クジ引きでペアになったレイヴンとななしは、森の東側を捜索していた。


『魔物がたくさん居ますから、早く探し出してあげないと…!』



ななしは心配そうな表情で辺りをキョロキョロと見回しながら歩く。


「ななしちゃん、足元も見ないと転ぶわよ?」

『あ、そうですね…!気を付けないと…』

「ほら、おっさんと手ぇ繋ご?」

『は、はい///』


レイヴンがニコニコしながら手を差し出すと、ななしは照れながらその手をぎゅっと握った。するとレイヴンは一旦手を離し、指を絡めるように繋ぐ。


「この方がいいでしょ?」


甘く囁くように言うレイヴンに、ななしは更に顔を赤くした。その表情を見て満足そうに笑ったレイヴンは、行こ?と促す。


「しっかし…こう広いところを闇雲に探すってのもねぇ」

『マタタビとかあればいいんですけど…』

「マタタビ…。もしかしたらマタタビ生えてるところにいるんじゃない?」

『あ、そうかもしれませんね!』

「それならおっさんに任せなさい!こっちこっち♪」


そう言うと、レイヴンはななしの手を引っ張って歩き出した。



『レイヴンさん、どこに生えてるか知ってるんですか?』

「大体ね。ギルドには植物を専門とするところもあるのよ、そこの奴らが言ってたのを思い出したわけ」

『色々なギルドがあるんですねぇー…』



ななしは関心したように言うと辺りを見回した。どんどんと奥へ進んでいる気がする。しばらく歩いているとレイヴンはピタリと足を止めてキョロキョロとし始めた。


「んー、確かこの辺なのよね〜」

『レイヴンさん!アレ…!!』


ななしが指差す方に目をやると、そこには白い花がいくつか咲いていた。そして、そのすぐ横には白っぽい毛玉のようなものが丸まっている。


『この子ですよ、きっと!』


ななしが駆け寄ってみると、それは赤い首輪をつけた子猫だった。マタタビの木に体をすり寄せてウットリとしているようだ。


「人が必死に探してたってのに、のん気なもんねぇ」


レイヴンは子猫の体を撫でながらやれやれと溜息をつく。


『見つかってよかったですね!』


ななしに抱かれた子猫は、腕の中で大人しくしている。レイヴンは、ななしちゃんに抱っこされるなんて羨ましいぞ!と心の中で呟きながら、子猫の額をぐりぐりと撫でた。




『じゃあ、戻りましょうか!もしかしたら皆さんも戻って……レイヴンさん?』


頬をぽりぽりとかきながら辺りを見渡すレイヴンを見て、ななしが不思議そうに呼びかける。するとレイヴンは困ったような表情をしてななしの方を見た。


「…ななしちゃん。俺様達どっちから来たっけ?」

『え!?どっちってそこの獣道から…アレ?』


ななしがそう言って来た方向を指すが、そこに道はなく、とてつもなく大きな木が生えているだけだった。他に歩けそうな場所も見当たらない。



「うーん…もしかして、閉じ込められちゃった?」

『………』

「ニャー?」




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