「ななしちゃん、休憩する?時間もまだあるし」 『はい、そうですね!』 「あの辺なんてどう?気持ちよさそうよ〜」 レイヴンが指差すのは大きな木の下にあるベンチだった。ななしがこくんと頷くのを確認してレイヴンは先にベンチへと向かうと、荷物を下ろしておいでおいでと手を振る。 『レイヴンさん…』 すると小走りでやって来たななしが、ベンチに腰を下ろしながら言った。 「なぁに?」 『今日、すみませんでした。無理を言ってしまって…』 「へ?」 『やっぱり、嫌…でしたよね?』 先程まで笑っていた彼女が何故か悲しそうな表情をして言った言葉に、レイヴンは慌てて否定する。 「嫌じゃないわよ?どうしたの、急に…」 『お店に行くまでのレイヴンさん、何だか考え込んでいらっしゃったというか…ぼーっとされていたので…』 「あ、あれは…その…」 ななしちゃんの事を考えながら妙な期待してドキドキしてました、なんて言えるわけもなく。 「えーっと…何で、俺が選ばれたのかなって考えてたのよ」 我ながらナイス言い訳!と思いつつ、実際気になっていた事でもあったので思い切ってそう言ってみた。 『!そ、それはっ…///』 そして今度はななしが答えに詰まる番だった。そんな彼女を見て、レイヴンの中の期待は余計に膨らむ。 「ねぇ、ななしちゃん…」 『はいっ!?』 「もしかして…おっさんの事、好き?」 レイヴンの言葉を聞いて一瞬間を置いた後、ななしの顔はぼん!と音を立てて真っ赤に染まる。その反応に、レイヴンの期待は確信に変わった。 「(やばい、すんごい嬉しいどうしよ…///)」 『あ、あの、そのっ…!///』 レイヴンはだらしなく頬を緩めながら、あたふたするななしの肩に腕を回して抱き寄せた。 『レイヴンさっ…!?///』 「俺も、ななしちゃんが好き」 『えっ…?んっ…!///』 空いた方の手でななしの頬に触れ、レイヴンはそのまま口付ける。レイヴンがそっと目を開けると、緊張しているのか長い睫毛を震わせながら目を閉じて、真っ赤な顔をするななしが視界いっぱいに写った。その可愛らしさに大人気ないと感じつつも、我慢できず強引に深く口付ける。 『んんっ…!?///』 しばらくしてななしが苦しそうに胸を叩いてきたので、レイヴンはそっと唇を離した。するとななしはぐったりとレイヴンの胸に体を預けてくる。 『っ…///』 「ゴメン、ななしちゃん!苦しかった?」 『うぅぅ…ビックリしました…///』 「ゴメンゴメン!でもななしちゃんが悪いのよ?そんな可愛い反応するから…」 レイヴンの胸に顔を埋めたまま、ななしは息を整えている。そんな彼女の頭を優しく撫でてレイヴンはぎゅーっと抱きしめた。 「ななしちゃんは言ってくんないの?」 『え?』 「ななしちゃんから好き、って言葉…まだ聞いてないわよ?」 レイヴンが意地悪くそう言うと、ななしはごにょごにょと呟く。 『……き、です…///』 「聞こえな〜い」 『〜っ!す、好きですっ!!///』 ヤケになって叫ぶななしにレイヴンは笑いを堪えながら、「ありがと」と返した。 そして、買い物を終えてフィエルティア号に戻って来た二人は―。 「おう、ななし。おかえり」 「ななし!おかえり、買い出しご苦労様」 『ただいまです!』 待ってましたと言わんばかりのユーリとフレンに歓迎されるななし。レイヴンはムッとしながらもそれを見守っていた。 「おっさんに変な事されなかったか?」 「シュヴァーン隊長、彼女に手は出してませんよね?」 フレンに黒い笑顔を向けられて、どうしたもんかとレイヴンが悩んでいるとななしがそっと近寄ってきて、レイヴンの腰にぎゅっと抱きついた。 「ななしちゃんっ?///」 『レイヴンさんは私のです!私のレイヴンさんをいじめる人は許しませんっ!』 「「!!?」」 あまりのショックに下町コンビは硬直したまま動かない。 『えへへ…、ちょっと恥ずかしいですね///』 「ななしちゃん…///」 ピンク色のオーラを放つ二人に、ユーリとフレン以外のメンバーは祝福の言葉を贈って盛り上がっていた。 「何でおっさんなんだ…!」 「僕はまだ諦めませんよ…、シュヴァーン隊長…!」 そしてさらに闘志を燃やす若人達だった。 END 「シュヴァーン隊長!お手合わせ願います!」 「俺様シュヴァーンじゃないから〜」 「おっさん、ちょっと相手になってくれよ」 「おたくら俺様の事、殺す気満々でしょ?」 『…じゃあ、私がお相手します!』 「「「え?」」」 『レイヴンさんと戦いたければ、私を倒してからにして下さい!』 「クッ…シュヴァーン隊長、卑怯です!」 「俺様何も言ってないわよ!?っていうかななしちゃんもそんな危ない事しちゃダメっ!」 ----------------------- あとがき 下町→ヒロイン→おっさんの図。 おっさんの勝利でした(笑) <<[prev*] index; |