距離感 兄+神 | ナノ










神崎兄ネタバレ

















「一、お前急にどうしたんだ」


インターホンが鳴ったので出ていくと、今年高校三年になったばかりの弟が無表情に立っていた。
問い掛けても答える気配は無く、扉が開くと同時に無言で無遠慮に部屋の中に入ってきた。
勝手知ったるなんとやらとはこのことで、リビングに入り辺りを見回したかと思うと彼女は今日居ないのかと、感情の無い声で聞いてきた。
別れたと答えると、その年で結婚もしないでふらふらしてと生意気なことを言いながらどかりとソファに座った。飲み物を出せと要求してきたのでコーヒーを出す。黙って受け取り口をつけたのを見計らってもう一度聞いた。


「こんな時間に。まだ学校じゃないのか」

「さぼり」

「お前な」


自分のコーヒーを持って一の向かいに腰を下ろすと、一はカップに口をつけたまま目線だけをこちらに向けてきた。
こうして目線だけを向けてくるのは、決まって兄である俺の様子を伺っている時にする一の癖で、小さく苦笑して首を振ってやった。


「別に怒ってはないけど。一、お前三年だろ」

「石矢魔だしな」


別に平気だろうとにやりと笑ってみせてカップを机に置いた。
自分が高校生だった時と比べると随分だらし無い気もするが、一がいいと言うのだから後はもう何も言わないことにする。
自分のカップも机に置いて、指を組んだ。


「来るのはいいが、こんな真昼間に来ても俺が居ないっていう考えは無かったのか?」

「あー」

「俺が休みでよかったな」


ベッドに寝そべった一が大きく欠伸をしだしたので、慌てて貰えていない返答を要求した。


「だから、一。何で来たんだ?学校で何かあったのか?」


寝そべる一の側に移動してしゃがみ込むと、一は何がおかしいのかくすくす笑って、兄貴がしゃがみ込んで座ると不良のようでおかしいと言った。


「こら、茶化すな。ちゃんと答えろ」

「ガキじゃあるめーし」


額を撫でようと手を伸ばしたが、それを邪険に払われて引っ込める。
十も離れているため、どうもいつまで経っても幼い子供という意識が離れず、どうしてもこうして甘やかそうとしてしまう。
一は半分クッションに顔を埋めてこちらを見つめたた。
邪険にされても尚、勝手に手が伸びて一の額から頭にかけてを撫であげた。一は心底嫌そうな顔をしてみせたが今度は黙ってしたいようにさせた。


「どうした。何があった」


こうして聞くと、まるで泣きべそをかく幼い頃の一を思い出すようで頬が綻びかけた。
一はそれをいち早く察知したのか眉を寄せて俺の頬を抓った。


「腹立つことがあったんだ。そんだけ」


抓った頬を引っ張って勢いよく離すと、一は起き上がって冷蔵庫を漁りに行った。
痛む頬を撫でつつそちらに目を向けると、冷蔵庫に入っていたヨーグルトをコップに入れずにパックのまま飲んでいた。
呆れつつ台所に入り、一を冷蔵庫の前から退かして中身を見る。


「腹が立ったんなら腹減っただろ。何か食べるか?昼飯まだだろ」

「チャーハン。味薄め」


そう言うと一はまたリビングに戻ってソファに寝そべり、テレビをつけた。
ご要望通り味薄めのチャーハンを作ってやることにする。











「ごちそうさん」

「お粗末さん」


綺麗に食べ終わった皿を洗っていると、一がソファ越しにじっとこちらを見つめてきた。
何事かと首を傾げて促すと、一は小さく呟いた。



「今日泊まっていいか」



いつもなら聞きもせず泊まると断言するのにこれは本当に一体何事か。
水を止めて手を拭きながらソファに近づくと、一はクッションに顔を埋めた。
再びしゃがみ込んで一の頭を撫でる。染めて痛んでいる筈なのに妙に柔らかくて、掴むようにして優しく撫でた。


「…どうした。大丈夫か」


クッションに埋めたまま顔をぐりぐりと押し付けながら聞こえた一の呟きはとても小さかったが、俺が聞くには十分なものだった。




「……ほんとは、あいつのとこ泊まる筈だった…」





あいつとは誰か。まさか彼女か。

弟の成長ににやりと吊り上がりかけた口端が、衝撃の事実を聞いて大きく開かれるまで、あと数分のことである。










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兄崎情報が凄すぎて勢いだけで書いた品。酷すぎる。無理矢理終わらせた感マックス。
家出てるとか…おいしすぎるだろ兄崎。
ここでは十歳差でお願いします年の差でかいほど禿げます!