「ランド様、お茶が入りました」
控え目なノックの音に頭をもたげる。入るように促すと、ポットとカップ、茶菓子が乗ったトレイを持ったヘンリーが静かにドアを開けた。
ふと時計に目をやると、昼の3時を回った所だった。息をついて身体を伸ばすと、ヘンリーは少し困ったように眉を寄せてみせた。
「少しは身体を休めてください。三時間も続けて机に向かわれるのは…」
「いや、楽しくてつい、な」
先日手に入れた古代遺跡の出土品についてあれこれと調べている内に、時間の感覚がすっかり抜け落ちてしまっていた。ヘンリーは未だ困った顔のまま、慣れた手つきで紅茶をカップに注いだ。それをぼんやりと見つめながら素直にうまそうだと呟くと、寄った眉がすっと離れ、ありがとうございますと柔らかく微笑んだ。綺麗だ。思わず目を細まったのが分かった。緩やかな動作でカップを持ち、ヘンリーは静かにこちらに近寄った。
「紅茶を飲み終わったら、一度外に出ていただけますか」
「一緒に買い物にでも行くか?」
「違いますよ、この部屋を片付けたいんです」
力尽きた。
ランヘン大好物です。