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 ◇土砂降り×彦星×雨男



◇土砂降り×彦星×雨男


「これじゃあ、織姫と彦星が会えないねぇ…ナルホドくん。」

一年ぶりに会えるのに毎年狙って土砂降りだよねぇこの日。これって神様の陰謀?

とめどなく流れていく雨粒を事務所の窓越しから見ていた真宵ちゃんが、帰り支度をしながらそう言っていた事を思い出す。



7月7日、花の金曜日、時刻は午後6時。


今朝から降り続く雨に早々に自転車通勤を諦めた僕は、真宵ちゃんを送り届けた後、帰宅の途につく為駅の停留所でぼんやりとバスを待っていた。
再び強くなっていく雨脚を屋根付きの停留所越しに眺め、流石にため息をつく。

ああもう…こんな天気じゃあスーツ乾きにくいのに…

正直それもあったのだが、もう一つ僕のため息を生み出した原因がある。


余りの悪天候で、一年ぶりにこちらに戻る恋人が乗るはずだった飛行機が欠航になってしまったのだ。


外国と日本、行ったり来たりしていた彼の長きにわたる研修がようやく今年、一つの区切りを迎えた。
今日はその記念すべき帰国日になるはずだったんだけど……この仕打ちは正直、ひどくなかろうか神様。
忙しい中合間をぬって育んできた愛にもう少しご褒美くれても良いと思うんだけど…。
そりゃぁ別に彼には暫く渡航予定は無いし、今日でなくてもどのみち会いに行ける機会も時間も増える訳だけど、


「…早く会いたいんだよ…僕は。」


ぶっちゃけた話、待ちきれない。

彼が…御剣が、帰ってくる。

電話だけじゃ話し足りない事だってある。
堪らなく触れたくなった瞬間はもう数え切れない程。
1分1秒が惜しい。会いたい。御剣の近くに、早く。


「だぁもう、焦らしプレイを趣味にした覚えはないぞ…ッ!」


そんな独り言をポツポツ漏らす僕を置き去りにするように、雨はまだ一向に止む気配はない。



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七夕に思いついた小話。






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