それは一つのキセキ | ナノ

宣戦布告(黄瀬)


俺の夏が終わった。





青峰っちとの試合、俺は全力だった。絶対に優勝するために、俺は手を抜いたりなんかしなかった。
でも俺の力は青峰っちに及ばなかった。それに、青峰っちはまだ何かを隠している気がした。

















それでも俺は負けたんだ
























海常の皆と帰ろうとしたとき俺を待っていたかのように一人の女の子が出口付近に立っていた


「あ、黄瀬くん」


ただの女の子じゃ…ない


「おーい。無視してんの?」


俺が返事をしないからかこちらを伺ってきた。


「……葉月っち?」
「おー、正解正解。って何泣きそうな顔してんの?」




何を普通に話しているんだ。
君が消えて、俺達がどれだけ探したと思っているんだ。
何でここにいるんだ
何しにきたんだ
今までどこにいたんだ
何で俺の目の前にいるんだ

頭の中はぐちゃぐちゃしていてどれも言葉にならなかった


「すいません、黄瀬くん借りていっていいですか?」


葉月っちは先輩達の了解を得て俺の手をひいた。








「いやーにしても青峰くんとの試合すごかったよー。」
「ありがとうッス」


葉月っちは本当のことしか言わないから、その葉月っちに褒められたんだ。嬉しくないはずがない。


「黄瀬くんすごく強かったね」
「青峰っちと全然レベル違うッスけどね」
「うーん、涼太かなりすごかったんだけどなー」


あ、涼太呼びになった。


「第一、中学時代の大輝のまんまのびていたらあんなもんじゃないはずなのに大輝全然なんだもん。
それに比べたら涼太の伸びはすごいって!バスケ始めてちょっとしかたってないのにさー。予想よりも随分と強くなっていたし」


バスケの話を楽しそうにする葉月っちは一年前と何もかわっていなかった。バスケの話になると名前で呼ぶというところも相変わらずだ。


「葉月っち今まで何処にいたんスか」


単刀直入に俺は聞いた


「あははー。どこだろうねー」


昔からそうだ。葉月っちは自分のことを何も言おうとしない。


「…葉月っちがいなくなってからいろいろあったんスからね!」
「あー全中三連覇してたね、おめでとう」
「そうじゃなくて、青峰っちが荒れて練習しなくなったり、黒子っちが消えたり、皆いろいろ変わっ「うん。知ってるよ」え。」


彼女が言った一言に俺は戸惑いを隠せなかった
何で知っているんスか。
俺達の近くにいなかった葉月っちがなんで。


「そういえば皆、別の高校だよねー」
「そう、じゃなくて、何で知っているんスか」
「ま、いろいろね」


…葉月っちがこの顔をするときはキャプテンが絡んでいた


「キャプテン、スか」
「うん、まーね」


…俺達が探しても会いたくても会えなかったのに、キャプテンは知っていて話をしたりしていたんスね。ずっと


「私さ、誠凜高校のマネージャーしようと思っているんだー」
「何言ってるんスか」


…さっきから何なんだ頭をぐちゃぐちゃさせるようなことばかり言って


「いやさ、テッちゃんがキセキの世代の皆倒すって言うんだったら私も一緒にしたいなーなんて。」
「倒したいんスか?」
「なんか、楽しそうじゃない?涼太、真太郎、大輝、敦を倒せたら。
一緒に戦ってきた人達の相手コートに立つなんてなかなかの経験じゃん」


楽しそうに葉月っちは話していた。


「キャプテンは倒さないんスか?」


葉月っちのあげなかった名前を俺はわざわざ口にする


「キャプテンかー。倒せたらいいけど、あの人は負けないじゃん。」


葉月っちは先ほどまでの楽しそうな笑顔ではなく、苦しそうに泣きそうに笑った







「今日はね、皆に挨拶周りと宣戦布告しようと思って、黄瀬くんには一番最初に会いにきたんだからね!」


先ほどまでの顔は一瞬で消えまたいつもの笑顔で言った


「それは光栄スねー」
「うん。だから、次合うときは覚悟してね」


「葉月っち」
「ん?」
「海常とかどうスか?」
「あはは、神奈川は私には遠いや」
「そうスよね」


黒子っちにも振られて葉月っちにも振られて
一緒にまたバスケしたかったんスけどね…あの頃に戻って


「涼ー太」
「なんスか?」

葉月っちは俺の服の裾を下に引っ張り手で俺のことを招く
俺にしゃがめということなのだろうか…。


「今日、すごくかっこよかったよ」


耳元に聞こえた言葉の意味を理解するのに時間がかかった


「じゃーまたねー」


気づいた頃には葉月っちは遠くにいた


「はー…次は覚悟してくださいよ!!」






(「黄瀬さっきの誰だよ。というかなんか紅くねえか?」「そんなことないッスよ」)


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