それは一つのキセキ | ナノ

06


「久しぶりだねーこうやって帰るの」
「そうですね」
「中学時代は毎日一緒に帰っていたのにねー」

「それは葉月さんがいたときだけですよ」
「葉月がいなくなって、ちょっとしたら皆ばらばらになったもんね…」


私がいないうちにいろいろあったのだろう。二人はどこか遠くを見つめていた


「葉月さんがいた頃は本当に楽しかったです。よく寄り道して」
「アイスとか肉まんとか食べたよね」
「ゲーセンとか夏祭りとかも行ったよ」
「……本当に楽しかったです。」
「そうだね」


「何よりも毎日皆とバスケをすることが楽しかったです。ずっとそんな日々が続くと思っていました」


「でも、もう二度とそんなことはできないんですよね……」


てっちゃんはとても悲しいことを言う。
二度と……そんなことをあのてっちゃんに言わせるなんて…キャプテンに聞いていたよりも、もっとつらいものだったんだろう。


「そんなことないよ」


てっちゃんとさつきは私の方を見た


「キャプテンから皆の話を聞いていたし、この間皆とも話したよ。確かに私が知っている人達とは違っていた。でも、あんなに楽しかったんだよ。あの日々が楽しくなかったって思っている人は絶対にいないと思う。
今は少しずれているけど、また皆で一緒にバスケできるよ……絶対に
だから、二度となんて悲しいことは言わないで?」


「……そうですね。葉月さんがいれば何か変わるかもしれません」
「みんな葉月のこと大好きだもんね」


「あの日々は葉月さんを中心に回っていましたから」
「いきなり変なこと思いついたりしていたしね」
「なんだ、その迷惑そうな言い方」


二人は一緒に笑った





「それに最近、僕は今も楽しいです。こんな形ですがキセキと呼ばれた彼らと戦うえることがとても楽しいです」


てっちゃんは前に進んでいる
帝光中学校幻の6人目ではなく、誠凜高校11番黒子テツヤに。


「んじゃ、そんな皆を全員倒してまたバスケやろうか」


二人は笑顔で頷いた




「そういえば、今日紫原君と会いました」
「紫原君かー。」
「わたしあの子ちょっと苦手。何考えているかわかんないし…。まあテツ君もよくわからないけど…そこがミステリアスで好き!」
「…はぁ、そうですか」


てっちゃんはさつきの言葉を流すように言った
二人はどういうときにデレたり、照れたりするのか私にはよくわからない。






「何か珍しいね、そういえば。テツ君がボールいじりながら歩くの」


確かにてっちゃんがボールを持ちながら歩くところを私は今までみたことがなかった


「これですか?特訓です新しい技の。
そうだ、ちょっと寄り道していいですか?」
「え?」


てっちゃんはバスケットコートに立ち寄った


「新しい技をみせます。まだ未完成ですけど、青峰君と仲直りのキッカケにでもしてください」
「え!?でも…」
「いいんです。出し惜しみするつもりはないし、次あたる時まで隠し通せるものでもないですから。
葉月さん構えてもらってもいいですか?」
「ん、何すればいい?」
「見てて下さい」


そういって、てっちゃんはボールをついた…と思った時には既に私の後ろにいた

……てっちゃんがドライブをするなんて





「じゃあ行きましょうか」


何事もなかったかのようにてっちゃんは言った


「あ、でもすぐそこだから」
「だめです、女の子一人にはできません。」









私とてっちゃんが送り届けると去り際にさつきは私達の方へ向いた


「テツくーん!葉月ー!またいつかバスケやろーね!みんなで!」
「…はい」
「またねー!」







そのあと「葉月さんも送ります」と言っててっちゃんが私の家までついてきてくれることになった


「葉月さんはまた、前の家に住んでいるんでしか?」
「うん」
「………」


しばしの沈黙
てっちゃんが言い出したいことは多分皆と同じことだろう





「どうして、急にいなくなったりしたんですか?」


振り絞っての一言。
そんな真剣な眼差しのてっちゃんをどう誤魔化そうかと考えている私はひどいやつだなー


「うーん、家が借金で出て行かなきゃいかなくてー」
「冗談はいいです」


……前に皆に宣戦布告してきたときは結構うまくかわしきれたんだけどなー
昔からそうだけど私はてっちゃんには弱い。常に真剣でいる人を騙すことはさすがに心が痛む


「よし、わかった。てっちゃんが青峰君に勝ったら、今まで何をしていたのかきちんと話す」


私の提案にてっちゃんは一瞬悩んだようだがすぐに答えを出した。


「分かりました。これでまた一つ青峰君に勝たなければならない理由ができました。」
「うんうん、一緒に頑張ろうね」
「はい」


そうして、私とてっちゃんは約束を結んだ





「送っくれてありがとう。また明日」
「はい、また明日」


私はてっちゃんと別れた
















「葉月ーおせぇぞ」
「ごめんごめん」
「それで、誠凜に入るのでいいのか?」
「うん」





誠凜バスケ部ならきっと約束が果たせる

私は携帯を開き彼にメールを送る


(無事、誠凜に入れそうです)


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