そして、部活動決定まで残り一日となった。
あれから他の部活も見に行ったがどこもぱっとしなく、どうしたらいいか分からない私の足は勝手に体育館の方へと向かっていた。
体育館に足が向かっていることに気づいた私は来た道を戻ろうと後ろを振り返った
無意識っていうのは恐いな。



「あ、葉月ちゃん?」



振り返って歩みを進めたとき前からきた体育館へ向かう女の子に会った



「桃井さん……」



桃井さんはこの間会ったときの制服姿ではなく、ジャージを着ていた。そして、沢山の荷物を持っていた。多分マネージャーの仕事である。その量は女の子一人に任せるような量ではなかった。
腕にゼッケンの入った籠を両手に二つずつかけ、その手の上にはたくさんの量のタオルがのっていた


「この間は青峰君がひどいこと言ってごめんなさい」
「あ、いや、あれは私も悪くて、その荷物大丈夫ですか?」
「うん、なんとか」
「えっと、半分持つよ」
「あ、でも、悪いよ」
「ううん、気にしないで」


私は半ば強引に桃井さんの腕に乗っていたタオルを取った。ついでにゼッケンの籠も一つもらった。


「ありがとう」
「一人でこれだけの量を運ばないといけないくらい人数が足りないの?」
「うん。マネージャーの人数って増えることはないし、気づいたら減っちゃっていたから」
「そっか……」


私は、なんで、この荷物を持っているんだろう。
気にせずに帰ればよかったのに。そうじゃなかったらこんな音を聞かなくてよかったのに。



体育館の扉からもれるバスケットボールの音を聞くと、足が止まりそうになった。
大丈夫この荷物をおいたらすぐに引き返して帰ればいいだけだ。部活の名前は適当に茶道部とでも書いておけばいいんだ。よし、そうしよう。


体育館に入ると、世界が違った。
沢山のボールの音と人の声、バッシュの音。さまざまな音と、走り続ける人の姿。立ち止まっている人は一人もいなく、全員が大量の汗を流していた。


「葉月ちゃん、邪魔になっちゃうから、ついてきてくれる?」
「あ、うん」


桃井さんに名前を呼ばれ、現実世界に引き戻された。
私は桃井さんの後についていった。
体育館のステージの近くにタオルとゼッケンを置いた。


「ありがとう、葉月ちゃん」
「あ、うん気にしないで。それじゃあ、私帰るから」
「どうせなら、練習少し見ていったりしない?」
「え?」
「今日、部活見学最後でしょ?もう決めているかもしれないけど、最後に見ていってほしいなーって」
「……じゃあ、休憩時間まで」


練習中の人たちの間を横断することはさっきのでもういっぱいだ、練習が休憩になるまでここに居座ってもいいだろう。

このとき私がこう選択したのはもしかしたら赤司君にはお見通しだったのかもしれない。
少なからず興奮しているのだと思う。この空間に。目まぐるしく変化するこの世界に。懐かしいこの世界に。


私の目は一人の選手に集中した。水色の髪をした、あの男の子に。








「よし、じゃあ休憩だ」
「はい」

ミニゲームを終えた俺たちはやっと休憩時間になった。
先ほど、桃井と白川さんが荷物を持って体育館に来ていた。俺の作戦はうまくいったってことでいいんだと思う。ただ、もう帰ったかもしれないが。

俺にタオルを渡してくれた子はいつものマネージャーではなかった

「お疲れ様、赤司君」

そういって笑った白川葉月を見てどうしても手に入れたい。そう思ったこの感情は本当に勝利のためだけだったのだろうか。

「白川さん、来ていたのか」
「あ、うん。あのさ、あの水色の人なんて名前かな?話かけても大丈夫かな?」
「彼かい?彼は黒子テツヤだよ。黒子は一軍に上がったばかりで、あまり体力がないからあまり話せないかもしれないが」
「ありがとう」

そういって白川さんは黒子の方へ行った。


本当に面白い。


「赤司のいっていたやつ、体育館に足を踏み入れるなど思わなかったのだよ」
「そうかい?彼女はここに来る運命だったさ」
「赤ちん悪い顔してるー」
「あはは、そんなことはないよ」
「しかし、どこからどうみても普通の女子だと思うのだが、何を気に入っているのだ?」

緑間はそういって、黒子と会話している白川さんを見た

「普通の女の子が一番最初に話しかけたいという選手が黒子だなんてありえないだろ?」

俺がそういうと紫原も緑間も違和感に気づいたらしい

「なるほどねー……俺達、今でもちょっと気を使わなかったら黒ちんの存在なんて見えないのに」
「ここまで分かっていたのか?赤司」
「いや、これは予想外だよ」

まさか、黒子を最初から視界に入れているなんてね。黒子と話している白川さんを見る限り、彼女は選択してくれたと見ていいだろう。
この部活のマネージャーになるということを。





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