始業式


「帝光中学校……」

4月8日。
私は今日から帝光中学校に通うことになる。
私のわがままで東京にいる兄の家に引っ越してきたのが先週のこと。前に住んでいた土地は、居心地が悪くなり、父に頼んでここに引っ越してきた。
幼少期は私も何年かここに住んでいたことがある。物思いがつく前のことなので私は何も覚えていないが、父と兄はそう言っていた。
もともと私達、家族全員が住んでいた一軒家に兄が一人暮らしをしていた。兄の大学はここから通うのが1番楽だからだ。私が加わり現在は大きな一軒家に二人暮らしをしている。



私の家の周りには中学校が何校かある。兄は好きなところを選ぶといいと言った。この辺の中学校の評判なんて知らない私は、朝少しでも長く寝られるように家から一番近い帝光中学校を選択した。
兄の迅速な対応により、始業式までに帝光中学校の制服は揃った。始業式当日に制服が間に合わないと最初から浮いてしまうことになる。それだけは避けたかったので、間に合ってよかった。
都会の学校ともなると生徒数が多く、学年が上がると殆どの人が知らない人になる。4月から編入する私にはとても助かることだ。



新しい制服を着て鏡を見る。
物心ついたころから短かった髪は少し伸びていた。制服を纏った私は今までの私とは違った。





今日から、新しい生活が始まる。

















「人、多いなー」


昨日兄と一緒に来ていたので、学校まで迷うことはなかった。
昨日、部活動をしている生徒は何人かいたが、やはり春休みということあって生徒はあまり歩いていなかった。
そんな昨日と比べると新学期一日目。人の量は比べものにならないくらい多かった。


私のクラスは1組らしい。本当は今日掲示板でクラス発表らしいのだが、私は昨日先生に教えてもらった。一日早くてもそんなに変わらないだろうと先生は笑っていた。


クラスまでも迷うことはなかった。
教室の扉に張られた座席表を見て自分の席を確認し、その席に座った。


席につき荷物を掛け、教室を眺めた。
教室で話している人はごく一部だった。やはり学年があがったことで去年まで一緒に行動していた友達と同じクラスになった人は少ないみたいだ。



この学校は校則がそんなに厳しくないのでいろんな髪の人がいた。坊主の人もいるから、多分その人たちは野球部なのだろう。女の子も茶色の子がクラスの半分くらいを占めていた。

これは私の個人的な感覚なのだが、髪の毛を自由にしていいといわれたら普通茶色だろう。いや、そう限定するのも悪い。
ただ、赤色を選択することはまずいないだろう。

私は赤に目がいっていた。教室に入ってきた赤に。いろんな髪をした人間がいるものだと驚いた。そして、その赤に私は少しばかりか魅了されたらしい。赤い髪の男の子が教室に入ってきてからはずっと私はその人のことを見ていた。どこか周りとは違う雰囲気を放つ赤に。
綺麗な赤を見てどれくらい時間がたったからは分からないが、気づいたら先生が教室に入ってきていた。



「おはよう、じゃあ、みんな席につこうかー」



入ってきた先生は昨日私と話をした人だった。



「クラスのこともいろいろと決めたいんだが、その前に入学式だ。出席番号順に廊下に並んで」



生徒達は先生に言われたとおり並び体育館へ向かった。



この学校には体育館が複数あるらしい。体育館以外にも複数ある部屋がある。変わった名前の部屋もあったような気がする。
一週間くらいはこの学校で迷うつもりでいる。方向音痴ではないが、さすがに覚えるまでは時間がかかる。今は列について前の人についていっているだけだから迷うことはないが。



入学式というものはどこでも一緒だろう。新入生が体育館に入場し、校長先生の挨拶、生徒代表の言葉、校歌斉唱。
特に変わったことはなく、一連の流れが終わり、私達は教室に戻った。



「それじゃあ、まず配布物から」



先生はそう言っていろいろな書類を配っていった。



「よし、これで一応やらなければならないことは終わった。
じゃあ、自己紹介でもするかー。このクラスで知っている人間、皆少ないだろ?俺も皆のこと知りたいし、皆も周りのこと知ったら友達作りやすいだろう?
言うことは、名前と前のクラスと部活動と好きなことと一言だな。」


そして、自己紹介が始まった。
一人目の人は大変だな、と思う。最初に話せと言われたら私は無理だ。別に話すのが苦手だとか恥ずかしいだとかそういうことはそんなに気にしたことはないが、最初にやるということが問題だ。あとのひとは前に続けばいいが、前の人をその後を全て決めることになる。そういうのは苦手だ。



私が目で追っていた赤は二人目だった



「赤司征十郎です。前のクラスは5組、バスケ部副キャプテンをしています。好きなこと……バスケをしているときは楽しいですよ。一年間よろしくお願いします」



私が見つめていた赤は赤司という名前なのか。とても覚えやすい名前だと思う。赤司君、赤司君。よし、覚えた。
彼が喋っている間、周りの人が少しざわついていた。だから多分赤司君はこの学年では有名なんだと思う。
どんなに人数が多い場所でも目立つ人は目立つので、一方的に相手を知っるということは起きる。目立ち方は良いことだったり悪いことだったりするけれど。
赤司君はどちらなのだろうか。雰囲気的にはいい人そうに見える。



何人かの生徒の自己紹介が終わり、私の番が来た。



「白川葉月です。実は、今日からこの学校に編入してきました。部活動はまだ決めていません。ご飯を食べてるときは幸せです。まだ学校のことよく分からないのでよろしくお願いします」



私が編入してきたと言ったとき、少し周りがざわついた。一応転校生だからかな。






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