好きな夢を見る | ナノ


  会いたい人に


 十四歳の秋、私は恋をした。
 相手の名前はユーリ・ローウェル。テイルズオブヴェスペリアの主人公の彼は私の世界とは違う世界の存在だった。ゲームのキャラクター。会うことも触れることもできなくてもユーリを好きになってからそれはもう毎日が楽しかった。何度もゲームをしたし何度も会うことを夢に見た。その時に知った"トリップ"という言葉。今生きている世界で死んだら別の世界に移れるかもしれないと知った私は歓喜した。この世界で死んだら、私はテルカリュミレースに行ってユーリに会うんだ、と。

「だからさ、もし私が死んでも悲しまないで欲しいんだよね」
「……はあ、ハルカの話はいつもそれね」
「私は今を全力で楽しく。もしも死んだらユーリとラブラブ! だからね」
「はいはい。ユーリを好きになって十年だっけ?」
「そう。もういつの間にかユーリの歳も超えってしまった」
「会うなら何歳の時がいいの」
「え!?!? 何歳でもいいよ! 何歳でも会いたいし。でも、そうだな、ユーリが私よりも年上だったらいいなあ。出会った頃と同じ年齢差じゃなくてもいいけれど、ユーリが遠すぎず近すぎずの距離にいて、お兄さん的な存在でいてくれて、私を気にかけてくれたらいいなあぁ」
「願望多いね」
「へへ、欲張ってみたいじゃん。だから、私が死んでも」
「悲しまないで、ね。わかったわよ。葬式参列するときは、ああ今頃テルカでユーリと生きてるんだなって思うから」
「ありがと」
 特に楽しくもない平凡な毎日を過ごしていた私は、今日もまたいつもと変わらず妄言を友達に吐く。じゃあ、また明日。と手を振って別れた。今日は、友人とご飯に行くからと残してきた仕事がある。明日はちょっとだけはやく起きて仕事しようと思いながら歩いていたら、スピード違反をしている車とパトカーの追いかけっこに巻き込まれて私は死んだ。









「おはよう、ハルカちゃん」
「おはようございます、おばさん。きょうもはりきっていきましょ!」
「ふふ、助かるわ。開店準備お願い」
「はい!」
 帝都ザーフィアス。今、私は念願叶ってテルカリュミレースにいる。車に惹かれた瞬間自分が死ぬことは察知できた。だから、私は強い意志で「今ここで死ぬ? 死ぬのね? だとしたら絶対にテルカリュミレースの世界へ! あわよくば下町に! あわよくば幼馴染ポジションに! あわよくば年下で生まれたい!」と乗せられるだけ願望を込めた。ら、無事にテルカリュミレースの世界にトリップし、帝都ザーフィアスの下町にたどり着いた。現在年齢は十八歳。概ね願いを叶えてくれた神様に感謝しつつも、残念ながら下町にはユーリもフレンもいなかった。
 ある雨の夜、私は下町の噴水の前に倒れていた。そこをハンクスさんが拾ってくれて保護。宿屋で一晩眠ることになって「え!? ユーリにいきなりあっちゃう!?」なんて思ったがそんなことはなかった。身寄りのない私は、うまく説明できないながらも、ここにいたいこと働きたいことを説明した。おじさんもおばさんも「大変だったのね」と言ってぎゅっと抱きしめてくれた。どうせもうすでにユーリがいるし、気にしないで。と笑ってくれた。突然出た名前に心臓がギュンッとなったのは仕方ない。誰か他にいるんですか? とお伺いを立ててみると今は騎士団に入っていていないという。


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