03
「あれ?」
「起きたか?」


目を覚ますと翔が私の顔を覗き込んだ。


「あー、ごめん本当に寝ていたみたい」
「いいよ、別に」


なんでか知らないけど少しだけ翔がそっけなく思えた。


「私何かした?」
「別に、なんもしてねーよ!体調はもう大丈夫か?」
「おう、翔のおかげだな!」


そう言うと少し顔を赤くして翔は自分の帽子を深く被った。


「オチビちゃんの方じゃなくて俺のほうに寄りかかってくれてもよかったんだよ?」
「うるさい」
「本当に響ちゃんは、俺に冷たいね」


なんて、割と真剣な顔で言われるものだから、無意識に面倒臭く扱ってる部分とか私の正体がバレるかもしれないかな避けてるのとかを本気でレンは気にしているのかな、なんて心配になって、これからもう少し優しくしようって少しだけ決めた。



「あーそれは悪りいな。気をつける。別にレンのことが嫌いってわけじゃないから、あんま気にしないでくれ」


私が真面目に返すと思っていなかったのか「そういうとこズルイよね」なんて小さい声で言われた。何のことかはよくわからなかったけれど。


「そろそろ着くぞー」


もう着くのか、早いな。ということは、私はバスの中で過ごす時間の大半を寝て過ごしてしまったということだ。バスでの移動って結構楽しみにしていたんだけどなー。ミニゲームとかなんかそういうのしたかったなー。








島に着くと私達は各クラスごとに並べられた。


「この合宿は卒業オーディションのペアを決めるのが目的だ。作曲家コースとアイドルコースお互いの相手が適正かを見極めるチャンスでもある。」
「各自、交流をして、魅力的な創作をして、いい出会いをもとめてねー」


「まじで誰にするー」
「神宮寺さん」
「まじでー?」
「ヤバくない?レベル高すぎー」
「私ー聖川くん」


周りにいた女の子達にはどうやら、お目当ての人がいるみたいだ。


「響、とりあえず荷物持って行くか?」
「おう」


私が翔の後について、コテージに向かう途中、変な格好をした社長が突然現れた。



「音楽の神ミューズに愛された島へーようこそー。インスピレーションも、どんどんわいてくるぅー!!、それでは、レッツゴーエンジョーイ!シャイニーング」


意味の分からない言葉を並べたかと思うと社長はそのまま海の中に飛び込んでいった。


「なんだったんだ?今」
「ね」


今回の夏季合宿も社長や龍也達の計らいで一人部屋になっている。荷物を部屋に置き、少しゆっくりしようとベッドに転がると扉を叩く音がした。




「はい」


扉を開けると知らない女の子がいた。


「えっと、部屋間違えた?」
「あ、ううん、そうじゃないの。響くんだよね?」
「ん?ああ」
「卒業オーディション、よかったらペアくんでくれない?」


まさかのペアの誘いか!でもこんな子見たことないし、まずクラスも違うと思うんだけど、なんで私なんかに


「なんでまた俺なんか」
「響くんずっと1位だったから」


なるほどね。1位の人と組めりゃ楽だもんな。


「わりぃ、無理だ」
「ペアの相手いるの?」
「いねぇけど」
「じゃあ、私と「知らないやつとは組む気はねえ。」


「……あっそ。せっかく誘ってあげたのに」



そう言って私の部屋を訪ねた女は部屋から出て行った。誘うときはそれなりに笑顔だったのに断ってからというのも真顔で出て行かれた。
……なんだ、あの女!うっざ!本当にうっざ!!!性格わっる!ああいうの業界にもわんさかいるけど、そういう奴って大概仕事なくなるんだよなー。残念だな!!




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