ボカロロロ!! | ナノ


▼ マトリョシカ



嗚呼、今日もこの街は狂ってゆく。

手に握っていた携帯が突如なった。
メールだ。
携帯を開き、メールを確認する。
沢山のURLとともに、英数字や言葉が混じったメール。


『あぁ、ダラーズか』


―ダラーズ
この池袋にいくつも存在するカラーギャングで最も規模の大きいと思われる無色透明の謎のカラーギャング。
それがダラーズ。


このメールはどうやら、頂点に君臨している創始者さんからのメールらしい。
まぁそれは、私の友達なんだけども...。


『帝人君、何がしたいんだろ?このメッセージ考えすぎでしょ。誰に届くわけでもないのに』


そうぼやいて、携帯をポケットにしまい歩きだす。

この街のいろんな人が誰に対して届かないメッセージを吐く。
まさに継ぎ接ぎ狂った街。

暫く歩いて、十字路にでた。
車などが来ないか左右を見て確認していると一人の少女が目に留まった。


―園原杏里


彼女もまた秘密を抱えている。
妖刀
――罪歌を身体に携えている。
毎日毎日彼女の愛の歌が、少女の頭の中に響く。
今日も明日も明後日も。
何かのパッケージが破裂し、溢れ出るように。


この街はいろんな事件が起きようと、街は変わらない。
何時まで経っても変わらない。
誰かが何かを教えてくれるすででもなく、この街は今日も非日常に吸い込まれている。
だから、この街は知れば知るほど面白い。




『......っ!!』


突然の頭痛。
いつもそうだ。
街の事を知るほど、頭が割れそうになるような頭痛が走る。


『いつもの...ことだっ..』


痛さに耐えられず、思わず電柱に手をつき寄りかかる。
痛くて痛くて仕方がない。
意識が飛びそうになる。

でも、それでも知りたい。
街の事。
この、池袋という街を深くまで。


「大丈夫かい?」


痛みと闘っていると、空が澄み渡る様な声が頭上で響き渡った。


『い...ざ、や?』

「ったく、何度同じこと繰り返せば気が済むわけ?君の体はそういった体質なんだからさ。いい加減その変な趣味やめなよ。」

『臨也にだけは言われたくないね。いいじゃん、楽しいし、何より面白い。そんな事よりもさ、もっと街の事教えてよ!』

「こりないねぇ...」


そう言いつつも、臨也は淡々と街の事を教えてくれた。
聞いていくにつれ頭痛も増していった。
それでも聞きたい。
折原臨也という名の情報屋を使ってでも。

こんな感情どうしようっか?
誰か知らないかな?
あははっ。

そんなことを考えていたら、自嘲的な笑みが零れた。

臨也曰く、今の街はダラーズと黄巾賊でピリピリしているらしい。


―面白いことになってきたじゃん。


『ふふっ...はは、ははははっはははっ!!』


感度良好っていうより、痛さ良好?
まぁ、そんなこと、どうだっていい。

全部全部笑っちゃおうよ。
街も人も。
ダラーズだろうが、黄巾賊だろうが妖刀だろうがさっさと、踊れよ。
池袋という名の舞台でさ。


その周りで、皆はてんで幼稚な手をたたいて囃し立てればいい。
ワザと街が狂うようにさ。

でも、私がこんなこと臨んだって、街にとって私はきっとどうでもいい存在なのだろう。
もっと街に溶け込みたい!
世界の温度が、地球温暖化の影響で解けていくみたいにさ!!


フッと嗤い、また街の中を散策する。
すると見つけた、少年。
黄色い布を身に着けた、少年。

―紀田正臣


あの様子だと、ダラーズについて探っているみたいだね。
んまぁ、私には関係ない、かな。

彼を見つめ、そう思っていると昔のことを思いだした。


彼にあった当初は、ナンパが出逢い。
同い年なのに、ナンパで誘ってくるとはねぇ、吃驚したよ。

貴女と俺で、ラブラブランデブーな!
なーんてことを言ってたのを今でもよく覚えてる。


『っふ、今は、ダラーズと黄巾賊でランデブーってね』


下卑た笑みを貼り付け、少年が去っていくのを見続けた。

彼もどこかしら歪んでいるよね。


何処までも歪んでいるこの街。
嗚呼、吐きそうだ。
私の全てをこの街に委ねようか。

そしたら、街は私の事を受け止めてくれるかな?
その、歪んだ空気で私を受け止めて。

私は、街に問う。


『あのね、ちょっと聞いてよ。大事なことだから。これから何が起こるのかなぁ。日常?非日常?まぁ、どっちだっていいや。もっと素敵なこと、起きないかなぁ?』


空を煽るように見上げ、街に問う。


―っ、


頭痛は収まらない。

痛いなんて泣かない。
泣いたら、全てが離れて何処かに行ってしまうような気がして。

だから、泣く前にもう少し待って。
たった一人になる前に、待って。
なんて言ってみたりして。


街の日常と非日常が混ざり、謳歌する。
いや、日常なんてないのかもしれない。
何処かに飛んで行ったのかも。

日常がなくなろうと、街の足取りは歪む歪む。

もう、全て街に酔って潰れて歌っていけばいい。
そうすれば、池袋は狂ってゆく。

そんな池袋をみんなみんな笑っちゃおうよ。

創始者も、将軍も、妖刀も、情報屋も、喧嘩人
形も、闇医者も首無もさ!!

池袋という名の舞台で踊りつくせばいい。


そう街に愛を叫び、私は街に溶け込んでいった。

End.


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