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▼ Dear



正臣が池袋を出て行って、何日も過ぎた。

彼の声が頭の中で聞こえる。
もう、正臣を好きにならないって決めたのに、これの声が今も私の心を揺さぶる。
何度も正臣の夢を見た。
記憶の中じゃ、正臣はいつでも優しく微笑んでくれる。

正臣と過ごした日々。
帰る途中、露西亜寿司に行ったり、遊んだり、笑ったり。
他愛もない話をしたりする毎日。
ずっとずっと、こんな日々が続くと思っていた。

でも、現実はそう甘くない。
あの事件以来、正臣がこの池袋を出て行った。
大切な人と共に。

別れ際に正臣が言った、


“ありがとう”


がずっと、私の頭の中で鳴り止まない。


―逢いたい。
 正臣に逢いたい。


溢れる想いは止まらない。


―正臣...逢いたいよ。まさおみ...


君の名前を呼び続ける。


知らぬ間に、目から涙が一筋頬を伝う。
この、むず痒い気持ちは...何?

悲しい。苦しい。
これから、独りでどうしろというのだ。


―気づかなかったけど...なんか独りって...“怖い”


何故だか突然怖くなり、街に広がる夜空を見上げて
君を探す。
正臣が、私の誕生日にくれたペンダントを握りしめて。
空を見る。
君を探す。


これを貰ったあの日から、私はずっと大切にしている。
このペンダントが2人を繋ぐ最後の絆だから。


―池袋を出て行った君は、今でも私の事を覚えていてくれているのかな?


いつか...
いつか私が正臣に伝えたいと思っていたこの気持ち。
それは、彼に伝えられることもなく、今も私の心の中に眠っているまま。
この広い世界の中、いままで色々な思い出を残してくれた君に...


―逢いたいな。
 でも、今は我慢しなくちゃ。
 正臣の為に。


『...っ!..っ!』


声にならない声で、君の名前を何度も呼び続ける。


“まさおみ”


と。

声にならないのが、悲しくて苦しい。


“置いて行かないで”

“また戻ってきてよ”


独りなんて嫌だ。怖い。

溢れる想いを留めることなく、声にしてみるが


―ならない。


悲しくなって、空を見上げる。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、
笑顔で笑ってやった。



泣くことなんてない。
この空の下、正臣とも繋がっているじゃないか。

大好きな君の事をいつでも思い出せる。
忘れることなどあり得ない。
かなりの月日が経って、街の景色が変わろうと。



最後の最後まで言えなかった、この言葉を今なら言える気がする。


―正臣

“愛しているよ”


End.


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