▼ リンネ
ある日、私の前に黒い服に身を包んだアイツがこう話しかけてきた。
「へぇ、君があの紀田正臣くんが好きな...苗字名前ちゃん、だっけ?」
その日を境に、私は池袋で関わってはならない折原臨也と関わりを持つようになっていった。
ソファーに座ってボーっと天井を眺めていると、いつの間に私の隣に来たのか、臨也が座っていた。
「それで...君はこれからどうするの? 正臣くんと沙k..おぉーっと、怖い怖い」
そこら辺にあったクッションを投げ、キィッと睨むといつものウザい調子で交わしやがった。
―うざ...つか、あからさまに楽しんでるだろ
あの日から今日まで、ずっと正臣の事を臨也に聞いていたような気がする。
黄巾賊の事。
1年前のブルースクウェアとの抗争の事。
そして、彼女の事。
それらの事を聞いても、正臣の事が好き...だった筈。
いや、確かに私は正臣が好きだ。
恋愛感情として。
でも、正臣には大切な人がいた。
それでも、私は正臣が好き...なのかな...?
このどうしようもない感情を携えて、私は1人どうしろというのか。
臨也の言葉を飲み込んで生きていくのかな。
そう思うと、なんだか突然臨也の声が聴きたくなった。
「臨也...」
つい、名前を呼んでしまった。
「ん?何?」
―あ、反応してくれた...
名前を呼ばれて反応しない人はあまりいないと思うのだけど、それでも私の言葉に反応してくれて何故だか嬉しかった。
そう思うと、どうしてもこの感情を聞いてほしかった。
「愛が欲しい...」
「...は?何、急に?」
普通なら、返答に困るのだが何故だか空いた口が塞がらず言い続けた。
「愛が欲しい。また、正臣を心から愛せるような愛がほしい...」
“彼女と正臣の事を許して認められる”
そんなような愛が欲しいのだと思った。
昔みたいに笑いあえるような日々が来るかはわからないけど、それでもいいから。
「臨也、教えて...どうしたらいいかな」
考えているうちに憂鬱な気分になってきて、体育座りのような体制をとり、ひざの間に顔を埋め、臨也に尋ねてみた。
でも、臨也には聞こえてなかったのか返事がない。
臨也の方をチラッと見ると、微笑んで頭を撫でてきた。
刹那――――
“大丈夫”
と声が聞こえたような気がした。
End.
※気分により、2番は書くかもしれません...。
状況次第、ってことですね